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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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第21話 スズメと離れても自分一人で感情のコントロールができるようになる実験~難易度を下げたver

 放課後。

 理科準備室にて。


 パイプ椅子に座らされ、ティーカップに注がれたコーヒーを前にして――。


「というわけで、今日こそは……頼むぞ」


 池中先生に、2回肩を叩かれた。


「……はい」


 目を逸らしー。

 

 何を頼まれたかというと、わたしがスズメと離れても自分一人で感情のコントロールができるようになる実験、ですね。


 はっきり言って、自信なしですよ……。

 初回は3分持たなかったですし。


 って!


「昨日のあれは、先生が悪いと思います!」


 実験が始まる前から、わたしに揺さぶりを掛けてきたせいです!


「それでもコントロールできるようになってもらわないと困るんだよ……。こっちの身が持たん」


 それはそうですけどー。

 初回からハードル高すぎると思います!


「マミならやれるよ! 私、信じてるっ!」


 スズメが、うしろから圧し掛かる様にして抱き着いてきた。

 背中の全神経を研ぎすまして、スズメ分を吸収……このエネルギーをちょっとずつ消費しながら、今日の放課後を乗り切るのだ!


「先生、それで今日の実験内容は?」


「そうだな……。前回の反省を踏まえて、だ……。最初からあまり難しいことを要求するのはやめようと思う」


 それはそうしてもらえると助かります。


「昨日は怪獣のせいで、街が火の海になっちゃったもんね~」


 まあ、火の海って言っても、物が燃えたりするような物理的な炎じゃなくて、プロジェクションマッピングの映像みたいなので助かったよー。


「消すのに一晩かかったからな……。20歳超えてからの徹夜は……」


 あ、もしかして、池中先生のトークに若干キレが感じられないのは、事後対応で徹夜したせいだったりしますか?


「もうちょっと早く対応できるように、隣の理科室で待機してるね~。じゃ、がんばって!」


 スズメはわたしの首筋にそっとキスをすると、理科準備室から出ていってしまった。


 キスされた箇所にそっと触れてみる。

 

 よし……。

 今日はいける。


「ま、あれですよね。心を乱されなければ良い」


「そうだな。変に感情を抑えるのは良くないが、自然体ならそれで何も問題はないからな」


 今日は池中先生もコーヒーにしたらしい。

 溶け残った金平糖を口に入れ、ガリガリとかじっていた。


「自然体自然体……」


 スズメがいない時は、わたしって普段何をしているっけ。

 

 家では……ご飯食べたり、お風呂に入ったり、テレビ見たり、勉強したり?

 こっそり深夜ラジオを聴きながら勉強をするのがちょっとしたマイブームになりつつあるけどー。


 なあんだ。

 別に普通に過ごせてるじゃない。


「ね、スズメ。わたし、1人でも大丈夫そう……あれ……」


 通話の繋がっていないスマホに話しかけて――。


「実験中は通話禁止だぞ」


「そんな……」


 お風呂に入ったり、テレビ見たり、勉強したりしている時……ずっとスズメと通話繋いでた……。何なら食事中以外は、だいたいビデオ通話してた……。


「1人で何をすれば……」


「暇なら勉強でもしたらどうだ? 学生の本分は勉強だろう」


 急に先生みたいなこと言ってきた!


「いやー、勉強って言われても……スズメに教える以外、とくにすることもないので……」


「柊は、授業だけですべて把握できるタイプか……」


 試験前に軽く復習くらいはしますけどね。

 普段は、スズメに教えることで、自分も学習している、みたいなところがありますし。


「スズメがいないと勉強する意味ないですね」


「なるほどな」


 暇だー。


「では雑談をしよう」


 お、助かります。


「柊は、文系と理系、どちらに進むか考えているのか?」


「雑談……。担任の先生の進路指導では……」


 騙されたわー。


「そう言うな。こういう話は、早めに考えておいて損はないからな」


「まあそうですけどー」


 あんまり考えたことなかったなー。

 うちの学園って付属だし、高校も大学も、内部受験でいけるし。


「中等部には普通科しかないが、高等部に上がれば、いろいろな学科がある。どういった方向に進みたいか、将来自分が何をしたいのかは常に考えて行動しておいたほうが良いぞ」


 いろいろな学科かあ。

 

「専門学科もあるんですよね。医療系とか、芸能系とか?」


「私は教育科の出身だが、友人には芸能科を卒業した者も多いぞ。実は現役のアイドルもいる」


「アイドル! そんな身近に!」


「うちの学園は私立だし、要求される学力や学費こそ高いが、確実にその道のトップに繋がる学習が可能だからな。専門学科を目指す者にとっては、1分1秒が大切な時間なのだよ」


「なるほどー。あ、先生はスズメが何学科を志望しているか聞いてますか?」


 急に気になってきた。


「お前たちは、普段そういう話はしないのか?」


「将来のことですか? ぜんぜんですねえ」


 いっつも、今の話しかしませんからね。

 おもしろ動画、ドラマやマンガやアニメの話、それに週末どこに行くか、とか。


「そうか。だったら、本人が話していないことを、担任の口から語るべきではないな」


「え……」


 じゃあ、先生は……スズメが将来どういう道に進みたいか、相談されているってことだ……。わたしじゃなくて先生に。

 いや、先生だから相談先としては合ってるんだけど……わたしに話す前に先生に。昔は一緒に「お花屋さんをやろう」とか、「トルコアイスの移動販売をしよう」とか、いろいろ話をしていたのに……。


「難しく考え過ぎるなよ。身内には言いにくい話もあるだろう。その点、教師はそういう役割の職業であるからして、親兄弟にもできずにいる将来の相談をする相手としては最適とも言える」


 それはそうなんですけどね……。


「まだ迷っている段階で話すより、もう少し気持ちが固まってからにしないと、昨日語った将来の夢が、今日になれば変わっている、なんて混乱を招くこともないだろうからな。配慮だよ配慮。な!」


 その迷っている時の話をしてほしいな……。

 なんでも話をしてほしい。


 誰よりも先に。


「おい! 柊! 難しく考え過ぎるなと言っているだろう!」


 難しくは考えていないんですけどね。

 シンプルに、どんな場合でも、スズメのファーストチョイスでありたいだけで――。


「実験中止! すぐに対処に当たる!」


「……え?」


 先生?


「外を見ろ! バカモノ!」


 先生は捨て台詞でわたしを罵倒すると、走って廊下に出ていってしまった。


 外。


「あ……」


「南野スズメ、バビュ~ンと参上!」


 先生と入れ替わるようにして、スズメが駆け込んできた。


「スズメぇ……」


「はい、ヨシヨシ♡ 私が来たからもう大丈夫~♡」


 これ……ホントに大丈夫?


 なんか……。


「空からいろいろ降ってきてるんだけど……。花やアイスやケーキやパン……」


「大丈夫だよ~♡ 昨日手懐けた怪獣に食べてもらうね♡」


 なんと⁉

 うわー! 怪獣再びだー!


 火を吐かずに、降ってきたケーキやパンをおいしそうに食べてる!


 あ、伸びるアイスに絡まってコケた⁉

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