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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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第19話 スズメと常夏の島~クジラの背に乗って、ヒマワリ少女は何を想う~

「べ、別の意味でまずいぞ! おい、お前たち! 校庭を見ろ!」


 池中先生が割れた窓ガラスをそっと開け――。


「えっ、なにあれ……」


 校庭が――。


「エメラルドグリーンの海に珊瑚礁⁉ イルカが飛び跳ねてる⁉」


 校舎の脇にはヤシの木が生えていて、ココナッツがポロンポロン!


「わ~お! クジラの大ジャンプ~!」


 スズメも大興奮で拍手喝采だぁ!


 って、スズメ⁉


「いつの間に、水着姿に⁉」


 ヒマワリみたいな鮮やかな黄色のビキニ姿が――まぶし過ぎるっ!

 映画! 映画撮るぞー! えーと、タイトルは……。


「『スズメと常夏の島~クジラの背に乗って、ヒマワリ少女は何を想う~』に決まり!」


「マミ⁉ 急にカメラを回して……恥ずかしいよぉ♡」


 いいよいいよー。

 その恥じらいの表情、最高だよー!


 ああっ、そんなに寄せたら零れちゃう!


「おい、柊! そろそろその辺で抑えろ!」


 あ、ちょっと! 映画撮影中なので、おじいさん好きの一般人の先生は、入ってこないで……と思ったけどー。


「白衣にスクール水着は……教師としてアウトでは?」


 似合い過ぎて怖い……。


「ほっとけ! 着せたのはお前だ!」


「わたし?」


「全部お前の願望に合わせて、世界が捻じ曲がった結果だと言っている。お前の思う世界のイメージする私がこの姿だということだ……まったく」


 あ、先生のビーチサンダルかわいい。

 歩く度に「チュンチュン」って鳴いてるー!


「マミも水着にしなよ~。汗掻いてて暑そうだよ?」


「んー、確かに暑いー」


 けど……わたしだけ制服のままだわ。

 なんならまだ衣替え前だから冬服……。


「でもスズメみたいにスタイル良くないし……」


 わたしはこのままで大丈夫です……。


「ダ~メ~! 早く泳ぎに行きたいんだから、マミも水着になって!」


「そんなこと言われても、今水着持ってないし」


 スズメがクジラの背に乗っているところを撮影するという使命が! あ、そうだ。クジラに育てられた少女ってことにしよう! 環境保全も訴えつつ、カンヌ国際映画祭に出るぞー!


「せんせぇ! 予備の水着出してぇ~」


 予備の水着?


「仕方ないな。少し待ってろ」


 池中先生が薬品の棚を開けて、アルコールランプを取り出して……? あれ? アルコールランプじゃなくて、アルコールランプ型のボタン?


 先生がアルコールランプ型のボタンを押す――。


 一瞬の静寂の後、金属同士が擦れあう音が。


「理科準備室の薬品棚が……動いてる⁉」


 まさかの隠しギミック的な――ああっ! 薬品棚の後ろにドアが出現した!


「柊」


 池中先生から、低い声で呼びかけられる。


「えっ、あ、はい! 何ですか⁉」


「このドアを開けると、その先は、緊急時のために用意された、衣裳部屋になっている。良いな?」


「えっと……? 衣裳部屋……」


 なんで?


「急に水着が必要になっても良いように準備が施されているということだ。良いな?」


「はい……」


 なんでそんなに念を押すように確認してくるの?


「衣裳部屋を開ける! 衣裳部屋を開けるぞ~!」


 なんで2回言ったの。


 池中先生が扉に手を掛け――横にスライドさせた。


「す、すごい……」


 隠し部屋は、ウォークインクローゼットになっていた。

 しかも、奥行きが……どこまで続いているのってくらいの。


「すごいねぇ。これならマミにぴったりの水着もあるよね! 私が選ぶ~♡」


 スズメが衣裳部屋の中に飛び込んでいく。


 クローゼットの入口付近に見える服が……ちょっと怪しい。

 セーラー服とかナース服とか、若干コスプレっぽい印象がぬぐえないけど……。



* * *


 というわけで、わたしも無理やり水着姿に……。

 

「ちぇっ~。私とおそろいのビキニもあったのになぁ~」


「さすがにそれはちょっと……」


 ひょろ長いだけのわたしのスタイルで、アイドルみたいなビキニは荷が重すぎますって。胸元のボリュームのなさをヒマワリのリボンで隠したワンピースで許してくださいませ……。


「でもほら、色はお揃いだから!」


「ね~お揃いね~♡」


 スズメの笑顔がまぶしい!

 ヒマワリ少女だわー!


「お前たち、ちょっと待て。麦わら帽子と水分補給を忘れるな。熱中症になるぞ」


 先生から、お揃いの麦わら帽子と、水筒を手渡される。


「ありがとうございます」


「せんせぇ、かき氷食べたい! マミも食べたいよね⁉ ね⁉」


「え、うん」


 まあ、すっごい暑いし。

 太陽2倍パワーは部屋の中でも暑い……。


「そうか。……じゃあ、あそこに見える氷山を切り出して、かき氷を作るか」


 氷山?


 先生が指さすほうを見ると――。


「えっ、いつの間に氷山が⁉ こんなに暑いのに、どういうこと⁉」


 エメラルドグリーンの海から突き出しているのは、間違いなく氷山だわ。

 シロクマとペンギンが仲良さそうに昼寝してる。


「本来シロクマとペンギンは、別々の地域で暮らす生き物だから、共存することはないんだが……」


 へぇー、そうなんですか。

 動物園だと一緒の区画にいるような気がしてましたけど。


「か~わ~い~い~♡ ペンギン抱っこしたぁぁぁぁぁい!」


 スズメが窓のさんに足を掛けて――飛んだ⁉


「スズメ⁉ ここ3階!」


「お~い、マミ~! 海サイコ~♡」


 スズメが海の上に浮かんで手を振っていた。


「仕方ない。私たちも行くぞ」


「行くって……ここから⁉ ムリムリムリムリムリ!」


 心臓止まっちゃいますって!


「いや、私は荷物もあるし、隣のウォータースライダーから行くぞ」


 大きなリュックサックを背負って、理科準備室から理科室へ。

 先生についていくと、理科室の窓には、特大のウォータースライダーが設置されていた。


「いつの間に……」


「これもすべて、お前の願いをかなえようとして世界が用意したものだ。なぜ? どうして? というのは考えても無駄だよ。ハハッ」


 乾いた笑いを……。

 なんか、わたしのせいで苦労を掛けているみたいですみません……。


「2人とも早く~~~!」


 スズメの催促する声が聞こえてくる。


「さあ、行こう。2人乗りの浮き輪だ。前に乗れ」


「……逆では?」


 身長的に、長身のわたしが後ろ担当でしょ。


「それは……ダメだ」


 先生は、真剣な表情で首を振った。


「なんでです?」


「恋人っぽく見える」


 ……はい?


「柊が後ろから私を抱きかかえたら、ほぼ恋人みたいなものだろう。それは……良くない」


「いやー、それはどうですかね……」


 考え過ぎでは?


「お前が前に乗れ。そうすればバランスが悪い。恋人っぽくはならない」


「……まあ、先生がそうしたいなら別にそれでも良いですけど」


 じゃあ、わたしが前に乗りますよ。


「この荷物を頼む。念のため、このゴーグルをつけておけ」


「はいはい」


 巨大なリュックサックを抱えて、水中メガネを装着してから、2人乗りの浮き輪の前の席へ。


「じゃあ、出発するぞ!」


 先生はそう言ってから、勢いよく浮き輪を蹴り出し、後部座席に飛び乗った。


「お、お、お、おおおおおおおお⁉」


 勢いが!

 

 目が回る!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 背後から尋常ならざる叫び声が⁉


「先生⁉」


 首を捻って後ろを見ると――。


「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 スク水姿の幼女が、宙に浮いている!

 ギリギリ片手で浮き輪に捕まっているけれど、完全に体が宙に浮いている!


 アイデンティティーの白衣はすでにどこかに飛ばされて――もう理科の先生の面影はなし!


「大丈夫ですか⁉ 手! 掴まって!」


「わ、私は大丈夫だ! かまわず先に行け!」


「先に⁉」


 浮き輪、繋がってるんですけどどうやって⁉


「も、もう限界だ! さらばだぁぁぁぁぁぁ」


「せ、せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 取っ手を掴む手が離れ――先生の体は糸の切れた凧のように空へと舞いあがっていく。


「せんせぇぇぇぇぇぇぇ!」


 見る見るうちに上昇していく先生の体。


 もう豆粒みたいに――あ、パラシュートが開いた。


「マミ!」


「えっ?」


 至近距離からスズメの声が――。


 直後、水の中に放り出されるわたし。


「あばばばばばばばば!」


 しばらくもがいていてから我に返る。

 

 眼前に広がって見えるのは――サンゴ礁の海。


 き、きれい……。


 ちょうど通りかかったカメの背に乗せてもらって、海面に浮上する。


「マミ~、大丈夫~?」


 イルカに跨ったスズメと目が合った。


「なんとかね……」


 先生のことばっかり気にしていて、ウォータースライダーの終点を確認してなかったよ。


「お~、柊は無事か~!」


 と、空から女の子が――じゃなくて、パラシュート幼女が。


「先生も無事でしたか」


「こんなこともあろうかと、白衣型のパラシュートを身につけておいて助かった」


 いや、どんな事態に備えているんですか……。そういえば、白衣はどっかに飛んでちゃってましたけど、白衣型のパラシュートはどこから?



* * *


 わたしたちは、しばらくの間、常夏の海を堪能した。

 クジラに乗ってジャンプしたり、ペンギンと一緒に散歩したり、シロクマとかき氷を食べたりして、それはそれはもう、堪能した!


 いつの間にか、太陽2倍キャンペーンが終わりを迎えていたようで、薄暗くなったサンセットビーチで、打ち上げ花火をして楽しんでから、スズメと手を繋いで家に帰った。


 先生は「明日もちゃんと登校するんだぞ~」と言いながら、エイの背に乗って、沖のほうに行ってしまった。



「マミ~♡」


「なぁに?」


 スズメが繋いだ手をブラブラと揺らしてくる。


「ず~っと一緒だからね♡」


「ありがと」


 怖いことと楽しいことと、一気に起こったなあ。


「ガマンが一番体に良くないからね?」


「うん、まあ……それはなんとなくわかったよ」


 わたしが変にガマンしようとすると、世界が滅亡する可能性がある。


 いや、怖いよ!


「マミのことをわかってあげられるのは、生まれた時からず~っと一緒にいる私だけ! 良い⁉」


「うん」


 なんかこう、いろいろあったけど……。

 スズメが一緒にいてくれるなら、大丈夫なのかなーって。


「スズメがいれば大丈夫だね」


「そうだよぉ~! また泳ごうね!」


「たまにはこういうのも良いね」


 明日になったら、海、消えてるのかな?

 それはそれで淋しい気もするけど、夢のような時間を過ごしたって、思うようにしたら良いんだよね、きっと。


 明日はまた明日。

 いつもの明日が来ますように。

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