表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/21

第13話 スズメは何を隠している?

 スズメと池中先生に連れていかれたのは、理科準備室。

 ほんのり何かの薬品――たぶん消毒液のニオイがする狭い部屋だ。


「そこに座ると良い」


 池中先生は窓際のパイプ椅子を指さした。

 わたしが指定された椅子に腰かけると、先生は水道のところに立てかけてあったビーカーを手にした。


「柊はコーヒーで良いか?」


「あ、はい!」


 こ、これはまさか!

 アルコールランプを使って、ビーカーでお湯を沸騰させてインスタントコーヒーが出てくるパターン⁉ マンガで見たやつだぁ!


 と思ったら、普通にビーカーを戸棚に片づけた……。


 おもむろに、何かの機械のスイッチを――。


 えっ、豆挽く音、うるさ!


 うわっ、良い香り……。

 普通にコーヒーメーカー使ってきた……。理科の先生なのに、おしゃれなカップ使わないで……。しかもそれ、ティーカップだし。


「砂糖はいるか?」


 と、差し出してきたのは、金平糖の入った小瓶。


「かわいい……」


 金平糖をお砂糖代わりに使うの、かわいくない?

 っていうか、やっぱりこれなら紅茶が良かった……。コーヒーだと色が濃すぎて金平糖いなくなっちゃう……。


「南野はマスカットティーだったな」


「はい」


 ええ……。

 わたしもそっちが良かった。


 先生もマスカットティー飲むの⁉

 えっ、じゃあなんでわたしにだけコーヒーを⁉




 池中先生が、わたしの正面に腰を下ろした。


「今日は……なんだな。……あれだ。いろいろ……大変だったな」


 視線はティーカップに。ティースプーンでカップの中の金平糖を転がしている。

 ちなみに、スズメは入口に近いところ――テーブルの端っこに椅子を置いて、ちょこんと座っていた。


「えっと、はい……」


 んー。

 何この空気?

 スズメも黙ったままだし。


 沈黙に耐えられず、ポケットから少しだけスマホを取り出して画面を見る。

 未だ電波は来ていない。

 時刻も9:45。ぜんぜん合っていなさそうだった。


 顔を上げると、池中先生と目が合ってしまった。


「えーと、電波障害……なんですよね。どの辺のエリアが対象なのかなあ。家のほうまで帰ったらネット繋がると良いんですけどー」


 わたしは何を言っているんだろう。

 完全にデカい独り言になってるし……。


「お前は――」


 池中先生の手が止まる。

 ティーカップからゆっくりと手を離し、テーブルに両肘をついてから、顔の前で手を組んだ。


「どこまで気づいているんだ?」


「どこ、まで……?」


 質問というより、尋問のように感じられた。

 探るというより、咎められている。

 

 池中先生の隣、はす向かいに座るスズメの顔を見る。


 目が合わない。

 スズメはティーカップを見つめたまま、微動だにしなかった。


 2人はきっと、わたしが知らない何かを隠している――。

 

 ホントのホントに、何かの事件に巻き込まれたのかもしれない。

 冗談ではなくて。


「最近、身の回りでおかしなことが起こっている。そんな引っ掛かりがあったりしないか?」


 ――きた。


 やっぱり、先生は何か知っているんだ。


「えっと……。気になることはいろいろあって……たとえば――」


「ダメッ!」


 スズメが突然、テーブルを叩くと、大声を上げながら立ち上がった。

 うつむいたまま。

 前髪が影になっていて、その表情は窺えない。


「南野」


 池中先生が小さく首を振る。

 

「南野、柊はもう」


「ダメなの~~~~っ!」


 絶叫。

 もはや悲鳴に近い。


「マミは知らなくて良いのっ!」


 わたし……?


「マミは何も知らなくて……知らないままが良いの!」


 スズメの顔から、雫がぽたりぽたりとテーブルに落ち始めた。


「マミには……知らずに笑っていてほしいの……」


「スズメ……」


 2人はわたしに何かを隠している。

 わたしが知ったら、笑っていられないような何かを。


 スズメは、わたしがそれを知らなければ笑っていられると思っている。


 でも。


「スズメが泣いてるのに、笑えないよ……」


「私は良いの」


「良くないよ」


「マミが無事ならそれで良いの」


「わたしが良くないよ……」


 だって。


「わたしの好きな人(大切な人)が泣いていて、わたしだけ知らんぷりして笑えるわけないじゃない」


 その時だった。

 理科準備室の薬品棚が、カタカタと音を立て始めた。


 ……地震?


「まずいな」


「マミ!」


 スズメが慌てたようにわたしのほうに走ってくる。


「気持ち、抑えて」


 薬品棚の揺れがさらに激しく――。

 天井に取り付けられた蛍光灯が、明滅を繰り返す。


「なに……これ……」


 ビシッという音とともに、窓ガラスに亀裂が入った。


「マミ。大丈夫だから!」


 スズメが、わたしの頭を抱きしめてきた。


 スズメの腕の隙間から、空が見えた――。


「どう、して……」


 夕日が。


 太陽が――。


 空を茜色に染めて、ゆっくりと沈みかけていた太陽が――。


 再び、空高く昇っていく。


 まるで、逆再生映像のように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ