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探求者  作者: あきみらい
最終章 選びとるもの
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選びとるもの24


 カウントダウンをし始めると、長いと思っていた日々はあっという間に過ぎていった。

その間に私たちは様々な準備をした。


 二の聖騎士セシルと、戻ってきた四の聖騎士ヴィンスは政治的な問題を片付けるべく、貴族や商人などを相手に説得や交渉を繰り返した。彼らは私には一切その内容をこぼしてこなかったが、おそらくこれ以上聖騎士が英雄として祭り上げられることを……つまり女王の陣営が力を持つことを、好ましく思っていない者が、一定数いるのだろう。セシルはおろかヴィンスすら、だんまりを決め込んでいる様子になんとなく察する。きっと新職人街の襲撃事件の時と同じだ。彼らは私が最大限に動ける場を作るために、わざと私に何も聞かせないのだ。

 一度、私も出向くかと鎌をかけるように問うてみたが、セシルからはきっぱり拒否された。曰く「これは俺とヴィンスの領分だ」。夜戻ってくると目付きがきつくなっている彼の姿に心配ではあったが、そんな時はただ背中から抱きしめた。彼は二の聖騎士。一の聖騎士である私の背中を守る者だ。そんな彼が自分たちの領分だと言ったのだ。私はその言葉を信じることにした。


 三の聖騎士ガルドは、私と共に兵装の確認と戦闘要員たちへの訓練を受け持った。

 対人戦と対魔物戦では随分と勝手が違う。人相手であれば戦力差や人数差がない限りポーションを使う前に勝敗は決する。対獣戦だってよほどのことがなければせいぜい飲んでも一、二本だ。だが対魔物戦は違う。獣をベースにした魔物でも生存本能さえ削ぎ落され、普通ではありえない動きをする。本来なら動けないはずの状態でも牙を剥く。対魔物戦は同サイズの獣を倒すのより何倍も時間がかかり気が抜けないものなのだ。それこそポーション一本が命の境目となりかねないほどに。なので、私たちがまず最初に行ったのは、戦闘に参加する者たちの装備の確認だ。全員が最低でも数本ずつは必要なポーションを持てるよう手配を行った。

 その上で対魔物戦のレクチャーを開始した。これには魔導師のクリスやその弟子のセティ、それに調査任務から戻ってきた司祭のゲイルも教官側として参加してくれた。他の調査隊メンバーも訓練として参加している。今回の戦場はモーゲンだ。あの村は聖女グレンダの結界に守られている上、主戦場になるのは湖畔だ。知っている者は少ないがあの湖の底は、聖女の置き土産である聖杯が眠っている。湖の水全てがその聖杯に浄化された聖水なのだ。それ故にあの湖には魚などの生物はいない。清らか過ぎて棲めないのだ。……つまり、あの場所が戦場である以上、現れるのは獣などをベースとした魔物ではない。神樹が具現化した時と同じ、葉の魔物かそれに類する無形の魔物なのだ。無形の魔物は獣などが魔物化したものよりタチが悪い。急所という概念がないものも多く、たった一体でも仕留めるのに苦労することがほとんどだ。

 また、単なる物理攻撃ではダメージを与えられず、剣などで戦う者は必ず何かしらの付与が必要になる。聖騎士である私たちは持っている光の祝福で剣に光の属性を付け戦う。騎士たちの何割かは身体強化などの祝福のみで、自身は属性を持たない。そういう者は魔導士たちから自分の武器に属性を付与してもらう必要がある。

 私とガルドは訓練の参加者にそれらを説明し、実際に剣に属性を付与した状態での打ち合いなどの訓練を行った。慣れていない者は気を抜くと属性が剥がれるのよね。実戦時にそれでは話にならないので、維持したまま戦闘できるようになるまで、ひたすら鍛え上げた。




 

 その日は、珍しく聖騎士四人揃った状態で昼食となった。訓練の休憩時間で食事にきたところに、ちょうどセシルたちもやってきたのだ。自然と同席することになり、聖騎士四名に、こちらと一緒にいたクリスとセティも合わせた合計六名で、王城でも騎士団側にある食堂で一つのテーブルを囲むこととなった。


「全員揃うのはなんだか、久しぶりな気がするわね」

「そうだな」


 きっちり騎士服を着こんでいるセシルとヴィンスに対し、私とガルドはラフな訓練着姿だ。髪を高い位置で結んでいた私は、パタパタと手で顔の前を仰ぐ。さっきまで体を動かしていたこともあり、まだ体が火照っているような気がする。料理と一緒に持ってきたコップの水を、本能のままに飲み干していた。体が欲していたようで、喉を滑り落ちていく水分がじんわり染み入って体の内から潤うような感じがした。

 こん、と、音を立ててコップを置くと、隣に座っていたセシルが何も言わずに私のコップとまだ口を付けていない自分のものを取り換えた。私は彼の方を一度見てからコップに手を伸ばす。今度は一気に飲み干さずに一口ずつゆっくり飲む。その様子をヴィンスが苦笑して見ていて、ガルドは食堂付きのメイドを呼んで水差しを頼んでいた。


「……なんだか、聖騎士の皆さんは兄弟みたいですね」

「そう?」


 斜め向かいの席にいたセティに言われて、私は瞬く。クリスも同じ意見のようで笑っている。


「確かに、みんな一緒に育ったようなものだからね」

「ヴィンスと俺らは年齢差があるから候補生時代が被ってないが、聖騎士は卒業後も養成校によく顔を出すしな」


 セシルが言葉を足せば、魔導士少年がなるほどと納得した顔になる。


「そうねぇ、それで言ったら私が一番上よね。一の聖騎士だし。……三人とも私のことを姉さんって呼んでもいいのよ?」

「いや、違うだろ」

「違うな」

「寝言は寝て言え」

「なんでっ!!」


 思いついたそのままに言えば、三方向から即座に否定された。思わず噛み付くように言い返せば、どうやら聞いていたらしい周りの人たちからもくすくす笑いが聞こえた。


「……お前はどう考えても末っ子だろ。それも相当手のかかる」


 ぼそりと言ったセシルの言葉にヴィンスとガルドが頷いている。

私はとりあえず届く位置にいたセシルの足を、ぎゅむりと踏んだ。




リドが長男で、セシルが次男、ガルドが三男、ヴィンスが四男と続いて、リチェが末っ子の位置付けな気がします。

なんとなくセシルは長男じゃなくて次男のポジションなのよね。

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