表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探求者  作者: あきみらい
最終章 選びとるもの
202/217

選びとるもの23


 調査隊本部の自席のそばには、残り日数を大きく書いたボードを置いた。

ザザと聖騎士、それに文官以外は遠征で出払っているおかげで、部屋はがらんとしている。残っている私たちも朝晩に報告を受けるために寄るぐらいで、それ以外は出てしまっていることが多い。戻るタイミングもまちまちなので、私が立ち寄る時は大抵、お留守番役の文官一人しかいない。


「……」


 人気のない事務所を見て、ふと気が付く。

 行方不明者たちが帰ってきて、復興支援が騎士団の方に引き継がれれば、この調査隊も解散だ。この半年ぐらいずっと一緒にいた調査隊のメンバーもばらばらになる。あんなに賑やかで気心知れた仲間たちと一緒にいる時間もあと僅かなのだ。それぞれ元の所属に戻るだけだから、この先もみんな王城やその近隣にはいる。騎士団の廊下などですれ違うことも多いだろう。だから今生の別れというわけでない。そうと分かっていても、寂しいと思っている自分がいた。


「終わったら、打ち上げでもやるかな」


 姉たちに負担をかけてしまうことになるけれど、皆にモーゲンに来てもらって村の料理を食べてもらうのも良いかもしれない。まだ詳細を詰めていないが、調査隊メンバーの大半は私たち聖騎士と一緒にモーゲンの『何か』が出現する一番近くに配置になる。戦い終わった後の状況次第では、そのまま宴会に突入してもいいだろう。もし直後は無理だとしても、きっと機会は作れる。

 気が付けばこぼれていた独り言に、留守居の文官がこちらを見て笑っていた。彼女も調査隊の大事なメンバーだ。その時はあなたも来てね、と言えば、嬉しそうな顔をしてくれた。


 私は机の書類を確認する。あちこちから上がってきている報告書や、計画書に一つずつ確認済みのサインを入れていく。

 女王エレノアから全軍を預けられたが、実際に私が全指揮を執るわけではない。私自身は『何か』を開くために現地で儀式を行わねばならないので、指揮をしていられる状態ではないのだ。四十年前と同じ規模にはならないとしても、魔物の数次第では戦場も広範囲になる。モーゲンの村の中心部はデュアンに頼むことになるし、それ以外のところは騎士団長ダリオンだ。現地に関しては聖騎士四名は各自判断、調査隊メンバーはザザの指揮下になるだろう。結局のところ私は、自分がこう戦うことになるだろうから、フォローお願いとあちこちに頼んでいる状態だ。それでも、あの場でエレノアが私を名指ししたのは、少しでも私を動きやすくしてくれるためだ。


「よし、騎士団の方に行ってくるわ。今日はこれで戻らないからよろしく」

「わかりました。お疲れ様です」


 立ち上がったついでに、ボードの残り日数の数字を一度消し、一つ減らして書き直す。調査隊の事務室を出て行こうとしたそのタイミングで、ぬっと大柄な者が現れた。ぼふっとその胸毛に突っ込みかけて、慌てて止まる。


「ガルド!」

「戻るのが遅くなった。すまない」

「ううん。おかえり」


 三の聖騎士ガルドの姿に、思わず声が弾む。考えてみるとガルドと会うのは生誕祭ぶりだ。騎士団に行きかけた私だが、そのままガルドと一緒に事務室に逆戻りする。戻ってきちゃったと笑えば文官から「おかえりなさい」と笑われた。


「リストにあった場所はこれで全部確認が終わった。今日はもう遅いから宿に行かせたがイリアスとウルガも戻ってきている」


 三人で全部回り終えたという狼系獣人に、おぉ、と私は歓声を上げる。ガルドたちがやっていたのは、師匠リドルフィが残していった、過去に魔素溜まりが発見された場所の再確認だ。クリスの推測と、トゥーレからの手紙の内容から、新たな『欠片』は出てきていないだろうとは踏んでいたが、念のためリストを片っ端から確認してくれていたのだ。相当な数書かれていたのを三人で手分けして確認してくれたらしい。


「あー、イリーからは少し話が訊きたいから後で会いに行ってくるよ。……それでどうだった?」

「綺麗なもんだ。『欠片』は一つもなかったし、魔素が集まっている傾向もなかった」

「そう、良かった」


 揺れる尻尾について行く形で事務所の奥に戻ると、ガルドが彼の席の前に立ったのに合わせ、近くの椅子を引き寄せて座る。どさりと荷物を下ろしその中から、確認に使っていた地図とメモを差し出した毛深い手から、それを受け取り、私は確認する。リストにされた地名には全てチェックが入っていた。一応一つずつ確認したが、一つも漏れはない。地図の方も確認を行ったところにはバツ印がつけられていた。


「……こうやってみると、本当に王国内でも北側に偏っていたのね」

「あぁ。……今思えばバレーラの件はそこで違うと気付けたらもう少し違ったかもしれないな」

「そうねぇ。確かにこうやって地図で見るとかなり外れた場所だったのね」


 今でこそ、あれこれパズルのピースが揃ったからそう思えるが、あの時は分からないことが多過ぎた。少し思い返してみたが、やはりあの時点で場所から模倣犯だと判断するのは無理だっただろう。


「それより、詳細を教えてくれ」

「そうだったわね。手紙には碌に何も書けていなかったものね」


 あぁと頷いたガルドに、私も頷く。


「お仕事の時間よ、ガルド。私たち聖騎士の本来の」


 続く言葉を待つ三の聖騎士に、私は微笑む。

そう、私たち聖騎士は、本来、対魔物に特化した騎士なのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ