中学生時代の同級生の愛と再会した私
次の日気がつくと私はベッドの中に居てグチャグチャになった制服を着ていた。
「しまったあのまま寝ちゃったんだ!?」
私は起こしてくれなかった母に文句を言う為に下に下りた。
「もーお母さんなんで昨日起こしてくれなかったの!?」
「何言ってるの!!散々起こしたのに心音ったらどっかいっちゃったじゃない」
「え?」
「急いで出て行くものだから何か緊急な事があったのかしらと思って心配してたらその後フラフラになって帰ってきて訳を聞いても何も言わずにそのまま寝ちゃうし・・・・あんた学校で何かあったの?」
母の顔が曇る。
「まさかイジメ!?昨日のは呼び出し!?」
「いや・・・うちの学校そんなバカなことする人居ないから・・・・」
「じゃあ何!?」
「いや、悪夢見ちゃって気が動転してたんだろうね・・・アハハ」
「えぇ?もしかしてうつ病とかじゃないの!?」
「いや、うつではないと思うけど・・・・」
「一回病院に行ったほうがいいかもしれないね昨日もおかしかったし・・・・」
母は完全に私のどこかに異常があるのだと勘違いしてしまったらしい。
「おはよう姉さん」
振り返ると衆太が居た。
「ああ・・・おはよう」
「・・・・昨日は大変だったね」
「え?」
「また忘れたんだね」
「何?」
「良いけど・・・またその時が来たら僕は遠慮なく姉さんの力を借りるから」
弟まで支離滅裂な事を言っている。
やはり私は本気でヤバイのだろうか?
「大丈夫、最初は誰でもそうなる。でも僕と合いだしたらズレもなくなる」
「????」
「いってらっしゃい」
衆太がぱちんと指を鳴らすと私はいつの間にか学校に着いてた。
このところ記憶がやけに飛ぶ。
私はいつの間に学校に着いたんだろう・・・・母と話していて・・・その後どうしたんだっけ?何も思い出せない。
誰かに何か忠告されたような気がするのに何も出てこない。
「あ〜〜〜」
私はグシャグシャと頭をかいた。
「おっすシオン!おはヨ」
ツインテールを揺らしながらうさこがポンッと私の肩を叩く。
甘いにおいがした。
「あんたまた何か食べながら歩いてきたでしょ?」
「え?わかった!?だって駅から歩くの結構遠くてさ、今日朝ごはん間に合わなかったからシュークリーム食べながら歩いてきたの」
「朝からよくそんなもん食べれるわね」
「何言ってんのブドウ糖は脳に良いんだから!シオンも甘いもの食べて頭を働かせなさい!」
そう言ってうさこは鞄からもう一つジャンボと書かれたシュークリームの袋を取り出してよこした。
ジャンボと言うだけあり軽く小柄なうさこの顔くらいの大きさがあった。
こいつは歩きながら10分程度でこれを丸ごとぺろりと行ったのだろうか?
化け物!!
と私は心の中で呟いた。
が、しかしそんな事を思っているとは微塵も顔に出さずに
「あ、ありがと・・・」と言って受け取った。
とても今食べられるような気分ではなかったので昼休みにでも頂こうと思い鞄にしまった。
8
「どっかにいい男いないかしら」
昼休みの窓際の席で壁にもたれながらうさこは苺牛乳のストローを口に咥えたままそんな事を呟いた。
校庭では男子が元気よく遊んでいる。
「またイケメンウォッチング?」
私はおべとうを突付きながらうさこを白い目で見た。
「だって潤いの無い高校生活のどこに楽しみがあるっていうのヨ!イケメンは心の癒しなの、オアシスなの!わかる?」
「はぁ・・・」
うさこの力説にドン引きしつつ私もチラッと外に目をやる。
確かにずば抜けて格好の良い男子と言うものは女子に比べ少ないような気がする。
女子のように外見を磨こうとしないからだろうか?
鏡の前で外見ばかり気にしている男子なんてそれはそれでナルシストみたいでキモイが。
「あ、あの子可愛い」
私が顎で指すとうさこは物凄い速さで身を乗り出した。
そこまで飢えているのか?
「えっえっ!?どこどこ!?」
「ほら、あそこに座ってる子」
「え?」
うさこはゆっくりとこちらに顔を向けると不審な目で私を見た。
「可愛いって・・・あれ女じゃん・・・」
「え?可愛くない?あのロングの子」
「いや・・・かわいいけど・・・・私女に興味ないし・・・・」
うさこが妙に低い声で言うものだから私は思わず口の中のものをぶちまけそうになった。
「まさかシオンがそっちの気があるとはねぇ・・・・私には惚れないでよ!?」
「任せて私が男になってもあんただけには惚れない」
「あーでも私はどっちかと言えば隣にいるボブの子がいいな〜」
「えー絶対ロングの子が可愛いよ〜」
他の人が聞いたら何を言ってるのかと思われそうだが女子から見ても魅力的な女子と言うものは多いと思う。
特に私なんかは普段はクールを装っているが、フリフリしたものなど可愛いものに目が無いので可愛い女の子が居るとつい食い入るように見てしまう。
「あ〜あの足いいねぇ」
「完璧おっさんね!」
うさこはよくそう言うけれど、いいものはいいのだ。
バカな会話を続けているうちに昼休みが終わり私は鞄に入れたうさこのシュークリームを思い出した。
結局食べ損なってしまったが家で食べればいいやとそのまま次の授業の準備をした。
9
「心音ちゃん?」
学校の帰りいつもの歩道橋で真の名を呼ばれ私は振り返る。
私を本名で呼ぶのは小学生までの友達だ。
中学生に入ってからはシオンと呼ばれる事が多かった。
「わー久しぶりだね!」
眼鏡をかけたいかにも勉強が出来そうな彼女は小学生の時の同級生だった愛ちゃんだ。
小学生の時から頭がよく私がよく居残りをさせられて半べそになっているときなどは一緒に残って勉強を教えてくれたものだ。
愛ちゃんだったら一学を受けるような気がしていたのだが、彼女は有名な私立学園の制服に身を包んでいた。
「愛ちゃん卒業以来だね!!愛ちゃん中学は私立に行っちゃったから別々だったし・・・・」
久しぶりに小学校の同級生と顔を合わせたので興奮していささかテンションが上がる私とは違い愛ちゃんは至って平常だった。
いや、少し唖然としている。
理由は直ぐに分かった。
私が自分に似つかわしくない制服を身にまとっているせいだろう。
「心音ちゃん・・・一学に入ったんだ、凄いね・・・」
「いや〜一番家から近くて・・・・私の偏差値じゃ行ける学校遠くて!だから中三になって猛勉強したの、元々カラッポの頭だったから詰め込みやすかったみたい!でも普通科に補欠合格だったんだけどねうちの学校の進学科は流石に無理だもん」
「・・・そうか、でも凄いよそんな短期間で偏差値上げちゃうなんて・・・」
「私一夜漬け型だからダラダラやるより集中的にやったほうが頭に入るんだ」
「そうなんだ・・・私なんか試験前は何週間も前から勉強して・・・そんなだから部活も入れなくて・・・塾と学校だけが私の場所みたいなものだよ・・・・」
愛ちゃんの表情が曇り始めたので私は話題を変えるべく色々と話をしたが愛ちゃんの表情は曇ったままだった。
能天気な私に呆れ果てたのだろうか?愛ちゃんはため息をつくと寂しそうに微笑んだ。
「愛ちゃん?」
「本当・・・・あなたみたいな人が羨ましい・・・・」
「え?はは・・・・」
愛ちゃんは腕時計を見ると塾があるからと言って私に手を振った。
「あ、うんじゃあね・・・・また・・・・」
私は暫く愛ちゃんの背中を見送ったが彼女の背中はとても小さく寂しそうに見えた。
夕日の差す教室で二人で居残りをした日々がとても遠く感じられた。
11
私は歩きながら自分の足元を見ていた。
自分の影がどこまでも着いてくる。
愛ちゃんの背中は重いものを背負っているようで、とても辛そうだった。
私とは違い愛ちゃんは頭も良くその分周囲の期待が大きいだろう、そのプレッシャーが彼女の方には重く圧し掛かっているのだろうか?
学校と塾だけの生活とは一体どんなものなのだろう。
私はこれと言って部活には入っていないけれど、それは放課後を友達と過ごしたり家に早く帰ってドラマの再放送を見たりしたい為。
小学生の頃はスポーツも出来て活発だった彼女は本当は運動もしたいはずだ。
でも彼女は文武両道を貫けるほど器用じゃないんだ。
きっと私が思っていたよりずっと彼女は努力をしていたんだろうと思うとなんだか私まで寂しい気持ちになった。
だから愛ちゃんは私みたいな人間を羨ましいと言ったんだろう。
周りからの重圧もなく、適当に生きてそれで満足している人間が愛ちゃんには器用に見えてそして疎ましく感じられたんだろう。
羨ましいなんて言葉は愛ちゃんの精一杯の皮肉だったのかもしれない。
―――はぁ・・・・私って本当に駄目だな
「そんなことないよ」
「!!!」
自分の心の声が漏れたのかと思った。
私が顔を上げると目の前に少年が立っていた。
また頭の中に記憶がインストールされる。
「衆太・・・・」
彼の名を呼ぶと衆太はにっこりと可愛い笑顔を浮かべた。
「姉さん、また借りに来たよ」
「な、なに!?またセクハラする気!?」
私は自分の胸を庇うように鞄を抱きかかえた。
「違うよ、姉さんの中の力を借りるんだ」




