夢か現実かわからない
その日は放課後ちょっと寄り道をしてからうさこと別れ、いつも通る歩道橋に向かって歩き出したが、なぜか足が止まってしまった。
―――イッテハイケナイ
私の中の何かがそう忠告しているような気がして私はその日いつもより大回りをして家に帰った。
玄関のドアノブを回すとカギが開いていた。
「ただいま」
中に入ると母が出迎えてくれた。
「遅かったのね」
「そう?」
「また寄り道したの?昨日だって遅かったじゃないうさこちゃんから電話あったって言ってるのに上の空で・・・」
「はあ?しらないよそんなの!教えてくれなかったじゃん」
母はぽかんと口をあけて私を見ている。
どうしてだお互いの話は矛盾している。
私は昨日家に帰ってどうしていたっけ?
思い出せない。
誰か先に帰っていたような気がするのに母と私以外今はこの家に誰も居ないはずだ。
兄は就職して家を出ているし父は海外赴任中だ。
なのにどうして私は誰かいたような気がしたんだろう。
ブルッと身震いする。
「何か疲れてるみたい・・・・寝るわ・・・後で起こして」
「大丈夫なの??」
「うん、ちょっと疲れてるだけだから」
私は制服のリボンを取りそのまま部屋のベッドに倒れこんだ。
思い出せない。
昨日私に何が起きたんだろう、何かが少しずれている。
家に帰ってから誰かと確実に会話をした覚えがある、それが誰だったのか思い出せないし昨日母と顔を合わせた覚えは無い。
母の話によると私は遅く帰ってきて母が声をかけるのもまるで聞こえてないようだったらしくソファーに身を投げると何か独り言を呟きながらそのまま寝てしまったらしい。
「う〜ん相当疲れてるな・・・・何をしたってわけでもないのになぁ・・・・・」
私は考えるのも面倒になり制服のまま眠ってしまった。
眠りに落ちる瞬間「ああ、制服グチャグチャになるなぁ〜」なんて考えていた。
何時間か経った頃ギシギシと二階に人が上がってくる音が聞こえた。
ぼんやりとした意識の中で母が起こしに着てくれたんだと思った。
トントンっとノックする音がして私は小さく唸った。
寝起きは良い方ではない。
「姉さん・・・起きて」
「ん〜もう少し・・・・」
ゴロンと寝返りを打ち声に背を向ける。
「だめだよ・・・起きてくれないと」
「ん〜ご飯何?」
「・・・・だよ」
「え?」
振り返るとそこに居たのは衆太だった。
「姉さん、時間だよ」
「わかったって・・・」
私は眠いたい眼を擦った。
目の前に立っている弟の衆太は・・・えーっと何年生だっけ?
思い出せない。
「今行くから・・・・」
集太にそう言うと弟はにやっと笑った。
「・・・・・・」
「先に行っていいよ?」
「ねぇ本当に弟なんて居た?」
「は?」
「僕は本当に姉さんの弟かな?」
「何言ってんの?大丈夫?」
私は衆太の額に手を当てた。
「僕は大丈夫だけど姉さんは大丈夫じゃなさそうだね」
「大丈夫、もう目が覚めたから」
「いや、まだ姉さんは夢の中だよ」
「え?」
私はよく辺りを見渡してみた。
確かに電気のついてない部屋は薄暗く夢と言われればそんな気もしなくはない。
「夢なの?」
そう尋ねると衆太はにやっと笑った。
この顔にどこかで見覚えがある、あれは誰だっただろう・・・いつどこで・・・・
頭の中にスーッと失われていた破片が飛び込んでくるようなそんな衝撃が私を襲う。
「うっ」
思わず頭を抱え前のめりになる。
なんだろう今のは?
私は衆太を見上げた。
衆太の口元はうっすらと笑みをたたえている。
「あんたは・・・・・・」
頭の中に歩道橋が浮かび上がる。
思い出した。
変態だ。
衆太はあの変態男に似ている。
10年後の衆太はあんな感じになるかもしれない。
「何で?私は衆太なんて知らないのに何で???」
どうして今までこいつが弟だと思っていたのだろう?
「あんた誰なの?」
「衆太だよ・・・・・」
「分けわかんない・・・・なんなのよ」
頭の中がゴチャゴチャする。
「姉さんの力が僕には必要なんだよね・・・・・」
「・・・・・」
衆太は私に向かって手を伸ばしてきた。
デジャブ?
変態男と一緒だ。
私は慌てて部屋から逃げ出した。
「お母さんおかーさーん!!!!!」
リビングに居るはずの母を呼ぶが母の気配は無い。
裸足のまま私は外へ駆け出していた。
昨日のように周りの空気が止まっている感じだ。
―――なんなのよーーーー




