微妙なズレが生じ始めた
学校から家までは徒歩15分。
自転車ならその半分で済む。
一番近いと言う理由で私はここを受けたのだが、私の通う一学高校は県内でも1.2を争う難問校で当時の私の偏差値では届くはずもなかったが何とかギリギリのラインで合格したのである。
我が校が誇る国際コース、体育コース、特進コース、進学コースとある中で一番地味で目立たない普通コースだけれどそれでもやはり私にとっては難関で受験はかなり賭けに出た部分もある。
中学の先生なんかはもう最後の方は哀れなものを見るような目で私を見ていたのを思い出す。
友達のうさこは憧れの先輩を追って来たそうだけど、その先輩が卒業してしまってからはまた次のターゲットを見つけてキャーキャー言っていた。
結局誰かにキャーキャー言いたいだけのミーハーである。
それに引き換え私は全然男子に興味が持てない。
いや、今まで恋くらいはしたことはあるけれど夢中になれる人なんて居ない。
だから素直に誰かを好きになれるうさこが羨ましい。
「シオンは理想が高いんだヨ〜王子様みたいな人いるわけ無いじゃん」
うさこは肩まである二つに結んだ髪の毛を左右に揺らしながら、やれやれといった感じで肩をすくめて見せた。
ちなみに私の名前は心の音と書いてここねと読む。
うさこがシオンと私を呼ぶのはそう間違われる事が多いからである。
私が親だったら絶対子供には変な名前付けない!ふつ〜〜の名前にする。
もう少しで心愛になるところだったらしい・・・可愛いかもしれないが間違いなく名前負け決定である。
それに飲み物の方を連想してしまって暑苦しい感じがする。
私くらいならまだましだ、小学生の頃騎士と書いてナイトという子が居て勿論襟足は長かった。
親のセンスを疑ってしまう。
付ける方は良かれと思ってつけてるのだろうが付けられた本人としてはたまったものではない。
事あるごとにいちいち訂正しなくてはならないのだ。
例えばクラスで最初に先生に名前を呼ばれる時も顔を赤らめながら変わった名前を言わなければならない苦痛は本人にしかわからない。
名前に関してはそれくらいにしておこう、ただ名前が少しコンプレックスだという事を知っておいて頂きたい。
「そう言えばさ」
うさこが思い出したかのように手を叩いた。
私は机に頬杖をついたままうさこを見上げた。
「昨日家に帰ってから今日の時間割聞こうと思って電話したのにシオン居なかったね?」
「え・・・何時くらい?」
「えーっと7時過ぎかな?」
「・・・その時間なら家に居たよ?」
「うそーおばちゃんが出たけどまだ帰ってないって言うから心配したんだよ!?」
「うそ・・・だって昨日は7時くらいに家に着いて・・・・そしたら誰も居なくて・・・・」
私は頭を捻る。
私は確実にその時間には家に居たはずだし母も仕事で遅くなると聞いていたから確実に居なかった。
「ちょーやめてヨ〜〜〜〜〜」
うさこはブルブルと震えて腕をクロスさせた。
「おかしいなぁ・・・・よそにかけたんじゃないの?てかなんで携帯にかけてくれなかったのよ」
「だって圏外だったから・・・・」
「圏外?何でだろ・・・いつもそんなこと無いのに・・・・」
「えーなんか怖い、この話もう止めとこ!?」
うさこが怖がるもんだから私もなんだかとても怖くなった。
怖いというから不気味だ。
このズレは一体何なんだろう、そんな事私が知る由もなかった。




