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陽だまりの影

37



深夜ふと目が覚めて枕元の携帯の時間を見た。



「3時か・・・・・」



一度携帯を置き、枕に顔を埋める。



「・・・・・・」



何の気もなしにウェブに繋いだ。


そして陽だまりの影と入力する。



「・・・・・」



さらに単語を続けた。



「死にたい」



ヒット件数は1件。


クリックする。



するとパスワード画面に切り替わった。


私は目を見開き怖くなって携帯の電源を落した。




今の私には羞恥心など取るに足らない問題だった。


早くこのことを鈴木君に伝えなければと思い、特進コースの校舎に乗り込んだのだ。


クラスは3クラスこのうちのどこかに鈴木君は居るはずだ。


こうなるともう道場破りの気分だ。



頼もう〜〜〜と心から叫んでしまいたい。



とりあえず一番近いクラスのドアを開ける。


いっせいに視線が私に集まる。


道場破り?何それ?


先ほどまでの威勢はどこ吹く風、私は近くに居た人に鈴木君居ますか?と聞くのが精一杯でその生徒はかわいそうなものを見るような目で私を見て「鈴木は2人居るけど?」と冷たく言い放った。


もう穴があったら入りたい。



「だ、大之秦君・・・・」


「ああ、その人は一組」



ありがとう鈴木君!変わった名前で助かった。


一組に行き鈴木君を見つけ私は大きく手を振った。


鈴木君が何か口をパクパクさせて何か言っているが分からないので首を傾げると彼は立ち上がってこちらに来た。



38



「ちょっと宇野さん・・こっちこっち」


「え?」



デジャブ?


私は階段の踊り場に連れてこられた。



「困るよ、宇野さん目立つんだから・・・」


「な、鈴木君だって同じことしたでしょ!?」


「いや、俺は良いんだよ・・・」


「なんでよ、私だって恥ずかしかったんだから!!!」


「いや、俺と宇野さんじゃ違うんだって・・・・」



私はピンと来た。


思わずにやけてしまう。



「なるほど・・・」


「え?」


「彼女でしょ!?」


「あらぬ噂がたつと困るからでしょ?」


「彼女は居ないけど・・・・・」


「そうなの?モテそう」


「いや・・・俺ってちょっと抜けてるらしくて・・・・」



抜けてるのは認めるがそれ以上に彼は鈍い、女子の視線に気が付いていないだけだろう。



「だったら私と一緒じゃない困るのはお互い様でしょ?」


「・・・・俺は地味だから騒がれたりしないよ、でも宇野さんは美人だから・・・絶対後でからかわれる・・・」


「えっ・・・・」



この人本当に自分の魅力に気が付いて無いんだ。


まぁそこがいいのかもしれないけど。


微妙な空気が流れる。



「え、えっと今はこんな話してる場合じゃないの・・・・」


「あ、そうだね」


「昨日携帯いじってたら出てきたの」


「え?」


「ちょっと見て」



携帯を一緒に見る形になり、鈴木君と肩が触れ合った。


彼はあまり気にしていないようだったけど私はちょっとドキッとした。


男子とこんなに近くで話した事なんて今までなかった。




39


「もしかしてこれが美村の?」



鈴木君の声に我に返り「多分」と頷きパスワードを入力しようとしたが、手が震えてできなかった。


鈴木君は私の肩に手を置くと改めてまた放課後パソコンで見ようと言ってくれた。


私も少し安心して頷いたがその日彼は一時間遅れてきた。



「本当にすみませんでした・・・・」



謝る彼に怒る気にもならず気分を切り替え私はキーボードをゆっくりと打った。


鈴木君のように早くは打てない。



「陽だまりの影・・・・・



死にたい・・・・」



「死にたい・・・・」



鈴木君は眉間に皺を寄せた。



そしてパスワード画面が大きく開かれた。



私はまた躊躇してキーが押せなかった。


見かねた鈴木君が横から代わって打ってくれた。



次に画面に現れたのはブログサイトだった。



「陽だまりの影って・・・・・」


「美村のブログの名前だったのか・・・・」


「愛ちゃんの日記・・・・・」



陽だまりの影は中学2年生の頃から始まっていて、最初の頃のブログ名は陽だまりの光だった。


内容はその日の学校での出来事や、悩みなどが綴られていたけれどどれも愛ちゃんらしくて真面目な文章だった。


40



●月●日

今日委員会で遅くなってしまい外が真っ暗で怖かったけどS君が途中まで送ってくれて嬉しかった。

S君はかっこいいのにちょっとおっちょこちょいだから目が放せない。

ちょっと弟みたいな感じ(笑)

明日は早く帰れると良いな!さて今から宿題しますw



最初の頃は一般公開されていたようで読者のコメントなども載っていてほのぼのしている。


読んでいて顔が綻んでくるような内容だった。




●月●日

塾のクラスがAからBに下がった。

お母さんにはもう塾から連絡があったみたい・・・

今から家族会議(泣)

もう勉強ばっかりヤダな、文武両道って私には無理なのかな?

でも皆は私の事頭が良くて何でもできる子って思ってるみたい・・・

私もそれが嬉しくて無理してるところがあるからな・・・

見栄っ張りなのです



●月●日

もう辛い、でも泣き言はここでしか言いません!

皆さん応援してくれるしねw



●月●日

委員会のS君が今日もまたドジをやらかして一緒に残って仕事を片付けた。

「すみません」と何回も言ってておかしかったww



日記によく登場するS君は鈴木君の事だろう、彼は昔からドジだったらしい。

愛ちゃんはこの手のタイプがどうも放っておけないらしい。

日記はさらに続き、三年生にもなると受験に対する内容が増えてきた。



●月●日

内申書の為に生徒会に入ることを勧めたのはお母さん・・・・

私は何としても一学に行かないといけない!

一流の高校に入って一流の大学に行くんだ!!!

でも一学に行きたいのはそれだけじゃないんだ・・・

今はまだ内緒!追々話しますねw



●月●日

KがS君に告白したらしい。




その一行を見て私は鈴木君を見てニヤついた。


すると彼はちょっと照れて頬を掻いた。


やはりこのS君とは鈴木君のことらしい。




●月●日

S君はKの事は好きじゃなかったらしい、突然告白されたから困ったようだ。

彼は鈍いから多分今までKがアピールしてたのに気が付いてなかったんだと思う。

KのほかにもYやMも・・・




私は堪えきれず噴出してしまった。


すると鈴木君は手で顔を覆った。




41



「やっぱりモテるんだね鈴木君」


「いや、違うよ・・・・だって全然そんな素振りなかったし・・・」


「は〜やっぱもてる男は違うなぁ」


「もー良いから次!」




●月●日

風邪を引いてしまった。

こんな時期に風邪を引くなんて最悪。

薬は飲めないし・・・・なんか塾の先生が言うには受験の日に風邪引いたときに薬が効かないと困るからだって・・・・しょっちゅう飲むものじゃないけどそんなこと言われると怖いよ・・・・



●月●日

インフルエンザが流行って学級閉鎖になった。

あの人に会えないのは少し寂しい・・・

あの人って言うのは今はまだ秘密だけど実はその人も一学目指してるの!

だから私も絶対同じ学校に行きたい!!




日記を読んでいくにつれ愛ちゃんの物事の考え方だとか、中学生が見栄を張って書いている部分などが見受けられた。


文章と言うものは不思議だ、その人の人柄までも伝わってくるような気がする。


そして私は最初からあることに気が付いていた。


日記の登場人物は身近な人が殆どだがその中でもS君、すなわち鈴木君の登場回数は日を追おう毎に増えている。


恐らく一学を目指している愛ちゃんの想い人は鈴木君の事だろう。


うさこが好きだった人を追って一学を目指したように愛ちゃんも純粋な動機で一学を目指していたんだ。


うさこも決して頭の良い方じゃなかったらしいけれど、恋の力というものは時として物凄い威力を発揮するらしい。



日記を読みふけっているうちに随分時間が経ってしまったらしい、下校を促すアナウンスが流れ始める。



「・・・今日はここまでにしようか」


「うん、何か目が痛くなっちゃった」


「随分読んだからね・・・美村さんがこんな日記をつけてたなんてね・・・少し意外だったな・・・こんな文章書くんだなって・・・もっと真面目な感じがしてたから」


「そうかな?小学生の頃の愛ちゃんは優等生だったけど凄く可愛らしいこだったよ、私はこれ見てああ、愛ちゃんだなって思った」


「・・・そうか、仲よかったんだ」


「う、うん・・・でも卒業してからは全然連絡も取らなくなって・・・私立の中学なんてなんか別世界だもん・・・」



パソコンの電源を落とし帰り支度をしながら私達は話した。


会話を途切らせるのがなぜか怖かった。


沈黙が来れば私は確実に昔の思い出に呑まれて落ちてしまう。


鈴木君は多分何も気が付いていなかったんだろうけど懸命に話す私の会話に合わせてくれていた。




42



何故愛ちゃんは私にブログを残したのだろう?


答えは見つからない。



たまたま偶然に会ったから私を選んだのだろうか?


誰でも良かったのだろうか?




私だったら自分の遺品のようなものであるブログを誰に託すだろう?


長年かけて築いたものを易々と人に渡すなんてマネはできない気がする。


多分何の証拠も残らないように削除する。



愛ちゃんは私に何を伝えたかったの?



ベッドの中で私は何度も寝返りを打ち、やがて夢の中へと落ちて行った。





愛ちゃんのブログを見つけてからは放課後鈴木君と過ごす時間が増えた。


まぁ彼の7限がある日は大抵私が待たされるのだがそれももう慣れてしまっていた。


待っている間に私は愛ちゃんの日記を読むようなマネはしなかった。


二人で見たほうがよい気がしていたからだ。


私一人で受け入れるには重過ぎる。



その日鈴木君と落ち合ってから私はこのブログの存在を愛ちゃんの親に話すべきかどうか相談した。


彼も困った顔をして首を捻った。



「もしかしたら親には見せたくないものかもしれないよ?わざわざパスまでかけてるんだし・・・」


「そうかなぁ・・・でもやっぱりおばさんたちは嬉しいと思うんだけど・・・・」


「とりあえず俺たちでこれを読んでからどうするか決めよう・・・これは美村から君に託されたものなんだから・・・」


「うん・・・・」




ふと視線を感じて顔を上げると隅の方に同じクラスの女子が座っていた。


私と目が合うと口元にわずかに微笑を浮かべそして前に向きなおした。



「知り合い?」



鈴木君に言われ私は頷いた。



「同じクラスの子・・・あんまりしゃべった事無いけど・・・・」



センターパーツで耳元まで伸びた髪の毛が時折唇に触れるのを見るたびに、同性ながら私はこの人にドキッとする事が時折あった。


クラスでもかなり特異な人、それが青山さん。


同じ年とは思えないほどの色気と大人びた物腰。


普通科と言えども優等生の多い中、彼女はとても目立っていた。


皆きっちりと制服を着こなしているのに対し青山さんはブラウスのボタンを第二ボタンまで外し、ゆるくネクタイを締めて制服をルーズに着こなしている。


別に悪ぶってるわけでもない。


その服装は浮いていたが彼女には似合っていた。


私も大人っぽいなんて言われてるけれど彼女の大人っぽさはまた違うのだ。


私は外見だけ大人で中身は伴っていない。


でも青山さんは外見と中身が一致しているように見える。


だからあの色気が自然と出てくるんだろうと思う。


私は同性として青山さんに憧れのようなものを抱いていた。



しかし彼女はこんな所で何をしているのだろう?


特に誰とつるむ訳でもなくいつも一人で居る青山さん。


パソコンが彼女にはとても不釣合いに見える。



―――なんか調べものかな?




「声かける?」



鈴木君の問いに私は首を振った。



「あんまりしゃべった事無いって言ったじゃん!」


「そう・・・なんか冷たそうな人だね・・・・」


「え?そう?」



意外だった。


鈴木君なら「凄い美人だね〜」なんて言って鼻息を荒くするかと思っていたのに。


クラスの男子も青山さんのことを遠くからしか見ていない。


恐らく高嶺の花過ぎるのだろう。


17かそこらの男では青山さんには吊り合わないだろう。


もっと年上の・・・・





43


「宇野さん」


「え?」


「ぼーっとしてるけど大丈夫?ここ最近パソコンで目が疲れてるんじゃない?あんまりパソコンいじったりしないんでしょ?」


「ああ、違うの平気!!パソコンも慣れると面白いし」


「だったらいいけど・・・あんまり無理しないで」


「大丈夫だって!!」



そう言ってもう指が覚えた愛ちゃんのブログへログインする。




私は少しだけ慣れた手つきでキーボードを叩いて愛ちゃんのブログへログインした。


今日は3年の夏辺りからだ。




●月●日

いよいよ夏期講習が始まった。

でもはっきり言って学校に来る時間が勿体無い。

こんなことなら塾で勉強した方がマシな気がする。

今度塾のクラス替えのテストがあるので今度こそAクラスに返り咲きたい!

絶対負けない!!!



●月●日

私たち3年が勉強している中下級生達は部活に勤しんでる。

校庭から野球部の掛け声が聞こえてきてイライラした。

集中しなきゃ・・・・・




この辺りからはあまりコメントする人も無くなっていた。


内容も以前のように可愛らしいことは何もかかれず淡々とした文章が綴られているのみだった。


あまり読者を意識しなくなったような気がする。


自分の事で精一杯だったんだろう。


でも日記は辞めなかった、愛ちゃんにとってはもう生活の一部となっていたに違いない。




44


今日は日直なので早めに家を出た。


人通りも無くなんだか心細いが通学路が近くなると私のように日直なのかまばらに生徒が歩いているのが見えてきて、私は少しほっとする。


靴箱から上靴を取り出していると「おはよう」と声をかけられた。


振り返ると青山さんが居た。


思わずドキッとして、キョドってしまった。


動揺している私を見て青山さんはフッと笑うと自分の靴箱を開けた。


日直でもないのに彼女はこんな時間に学校に何しに来ているのだろう?


上靴を履いて先に行ってしまう青山さんを少し追いかけるようにして歩いた。



「あの、青山さん」


「何?」


「いつも早いの?」


「ええ」


「そうなんだ」



あまり会話が続かない。


ひょっとして嫌われているんだろうか?


いいや、嫌っていたらおはようなんて声かけてくれるわけ無い。


言葉を選んでいると青山さんがこちらを振り返った。



「君、鈴木君と付き合ってるんだって?」


「はえ!?」



行き成り話題を振られたので変な声が出てしまい、私は慌てて言い直す。



「なっ・・・違います!!ただのお友達です」


「そんなに断言しなくても良いんだけど」


「いや、そう言うのははっきりさせとか無いと!」


「そうなの・・・そうなんだ」



青山さんからそんなことを聞かれるなんて意外だった。


そう言えば青山さんはパソコン室に居たっけ。





「青山さんはよくPCルームに来るの?」


「・・・・時々ね」


「そうなんだ・・・」



青山さんがピタッと歩みを止めた。



「私教室のカギ取ってくるから先に行っていて」


「え!?いいよ私日直だし」


「いいの、私の日課みたいなもんだから」


「ええ???でも日誌とかあるし」


「先生の机の上にあるからついでに持ってくるわ」


「でも・・・」


「いいから、じゃあね」


「あ・・・・」



有無を言わさず青山さんは行ってしまった。



実は真面目なのかな?



教室の前で青山さんが来るのを待っていると彼女は私にカギを見せながら歩いてきた。


思わず微笑みを返す。


教室のカギを開けると青山さんはなれた手つきで教室中の窓を開けた。


自分の席につくと大きく息を吐いて落ち着いたようだ。


私も自分の席に荷物を置きチラッと青山さんの方を盗み見た。


バチッと目が合ったかと思うと青山さんは「はい」っと言ってこちらに向かって何か投げてきた。



「ええ!?」



私は取りこぼさないようにそれをキャッチした。



「ナイスキャッチ」



青山さんはそう言うと紙パックのグレープフルーツジュースにストローを突き刺した。


私に投げたのは苺牛乳だった。



「いつも飲んでるでしょ?君の相方が」


「え、うん・・・」


「それは君に差し入れ」


「え?でも・・・・」


「いつも飲みたそうにしてるじゃない」



ドキッとした。


苺牛乳なんて可愛らしい飲み物私のキャラじゃないといつも恥ずかしくて飲めないで居たのは事実だ。


それを青山さんが察していたなんてビックリした。


クラスメイトに興味なんて全然なさそうに見えたから。



「心音って可愛い名前よね」


「え・・・」


「前からそう思ってた」


「あ、ありがとう・・・・・」



今までろくに話した事も無かったのにこんな風に話せるなんて、なんだか夢のようだ。


緊張のせいか苺牛乳の味が私には良く分からなかったが心臓の鼓動だけは妙に早く感じた。



45



「おはよー」


時間が経つにつれ、生徒達が教室に入ってくると段々と活気付いてきた。


さっきまで近付いていた青山さんとの距離がまた開いてしまったような気がした。


チラッと青山さんを見ると青山さんはいつもの大人びた顔をして足を組み頬杖を付きながらジッとクラスメイトが教室に入ってくるのを見ていた。



「シオンおはヨ!!」



うさこが朝から元気な笑顔をこちらに向けて来た。


一瞬青山さんの視線を感じたが、私は振り返らずにうさこに微笑み返した。





「鈴木君とはどうなってるの?」



エクレアにかぶりつきながらうさこは苺牛乳を片手に持っていた。



「朝からそんなもん食べて大丈夫なの?」


「大丈夫だヨ!糖は頭に良いんだから!受験の時は甘いものばっかり食べてたヨ・・・っじゃなくて鈴木君は?」


「は?」


「付き合ってんでしょー」


「いや・・・全然」


「はぁ〜?なんで?」


「なんでって・・・彼とはそう言うのじゃないの・・・・」


「も〜別にいいじゃん付き合っちゃえば!付き合ってれば好きになるって」


「てかなんでそう言う方向に持って行きたいわけ?」


「だって色恋話が無いなんて女子高生失格じゃない?勿体無いでしょ!今恋しないでいつするの!!!」


「だったらうさこだって付き合えば良いじゃない、何だっけ?体育コースの人」


「ダメなのヨ!私は一人に絞れないから!!!」



結局うさこはキャーキャー騒いでいるのが楽しいのであって実際はまだ付き合ったりしたいとは思っても踏み出す勇気が無いんだと思う。




「鈴木君とシオンだったらお似合いなのにな〜」


「確かにかっこいいけど付き合うかとなると違うと思うな」


「ふーん私だったら鈴木君とか近くに居たら直ぐ好きになっちゃうと思うヨ」


「あんたは顔が良ければいいんでしょ」


「アハハ、それもあるけどあの人性格も良さそうじゃない?」


「うん・・・性格は良いよ・・・・抜けてるけど・・・」


「ドジッ子かぁ〜萌えるなぁ」



私は何となく鈴木君とうさこが付き合ってるのを想像して噴出してしまった。



「ちょ、何!?何人の顔見て笑ってんの!?」


「い、いや・・・ちが・・・・プププ・・・・」


「も〜〜何ヨーーー!」




二人が付き合ったら絶対うさこがドジな鈴木君を引っ張っていく形になるんだろうな。


そしてうさこにぺこぺこ頭を下げる鈴木君が頭に浮かんだ。


そんな鈴木君にうさこは今みたいにプリプリ怒るに違いない。


結構二人はお似合いかもしれない。



「うさこ可愛いよ」


「え!?」



うさこは私の言葉に固まってしまった。



「可愛いようさこ〜絶対直ぐ彼氏出来るって」


「ちょ、やめてよ・・・・」



うさこは眉間に皺を寄せた。


普段言わないような事を私が言ったので気持ち悪がっているのだ。


それがまた面白い。



「ねぇうさこ」


「何?」


「うんん・・なんでもない」


「何ヨ変なの」




―――ずっと友達で居てね




46


●月●日

塾の試験の判定はBだった。

もうちょっと頑張れば何とか一学に行けそう!!

毎日朝方まで勉強した甲斐がありましたw

絶対あの人と同じ学校に行くんだ!

今はまだ告白とか無理だけど少しでも近くに居たい。




愛ちゃんの気持ちは私にはよく分からない。


好きな人と同じ高校に行くのは何の為?


もしそこでその人に彼女ができたりしたら辛いだけなのに、それでも近くに居て見ていられれば良いんだろうか?


うさこなら愛ちゃんの気持ちがわかるだろうか?



●月●日

今日Uに相談された。

S君のことが好きになったからどうしようって・・・・

私に聞いてどうするつもりなんだろう、いつものように相談に乗ってあげた。

本当は早く帰って勉強したかったのに・・・無駄な時間を過ごした。



●月●日

中間試験が終わった。

生徒会室に行ったらS君が一人で居て二人っきりで色々話せて楽しかった。

最近お父さんが忙しいらしくなかなか家に帰って来ないらしいからお母さんの機嫌が悪くて大変だと言っていた。

S君のお父さんは一流大学の教授だって言ってたっけ、S君もお父さんに似て頭がいいんだねw




「ねぇ鈴木君」


「ん?」


「愛ちゃんが好きな人って・・・さずがにもう気が付いてるよね?」




私が聞くと鈴木君は少し間を置いてから「うん」と答えた。


茶化す気にはなれず私は「そう・・・」っとだけ言ってまたブログを読み進めていった。


いよいよ試験が終わり結果発表の日の日記は最後まで読めなかった。


こんなのは愛ちゃんが書く日記じゃない。


コメント欄は荒れて暫くブログは放置されていた。


文章は人柄を表す。


この文章を何かに例えるとするなら・・・・


そうだ私はこれが何か知ってる・・・


夢で見たあの怪物のようにドロドロしていてとても醜い。




ブログの名前が陽だまりの影に変わったのは高校生になってからだった。


コメント欄も外され恐らく公開をやめてプライベートなものに切り替えたようだった。



文章はとても暗い。


恨み辛みが長い文章で書き連ねてある。


とても愛ちゃんが書いたものだとは思えなかった。


私が知ってる愛ちゃんは・・・・



私は耐え切れず頭を抱えた。



「宇野さん大丈夫?」


「・・・・もう嫌・・・こんなの・・・・」



弱音を吐く私を鈴木君は励ますわけでもなく黙って見ていた。



「もう・・・止めようか?」


「え?」


「辛いなら無理する事無い・・・」



そんな風に言われると素直に頷く事は出来ない。



「うんん・・・・愛ちゃんは私に知って欲しかったんだと思うから・・・・」


「でも頑張りすぎなんじゃないかな?」


「・・・・鈴木君こそ付き合ってくれて・・・・」


「良いんだ・・・一人で居ると考え込んでしまうから・・・」


「うん・・・・」


「今日はこの辺で終わりにしよう・・・・時間はまだあるんだしそろそろ試験も近くなるし勉強しないといけないでしょ?」


「ああ・・・うん・・・・」



試験の事など頭になかった。


少し焦ってしまう。



「今日は早めに切上げよう」


「そうだね」




鈴木君と別れてから家に向かう途中のファーストフード店でうさこがクラスメイト達と居るのが見えた。


うさこは誰とでも馴染めて誰からも好かれるタイプだ。


正直私なんかと一緒に居るのが不思議な気がする。


私と居るよりもクラスのグループに混じっている方がうさこにはあっているような気がする。


クラスメイト達と楽しそうにしているうさこがとても遠く感じられた。



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