14. 冒険者
「無事かッ! オークどもに変なことをされていないな?」
先頭を駆ける若い男が、近くにいたオークを一刀で斬り捨てながら叫ぶ。
巣の入り口の方からやって来たその剣士風の男は、燃えるような赤い髪を逆立たせ、同じ色の瞳をしていた。
新たに現れたのは、全部で4人。1人がこの赤髪の若い剣士。
続いてその両隣に並んだのが、その格好で山の中を歩いて来たのかと言いたくなるような金属製の全身鎧を着た大柄な戦士と、大きな弓を携えた狩人あるいは猟師と思しき髭面の男。
そして戦士の鎧の陰に半ば隠れているのが、それとは対照的に革製の防具を最小限のみ着けた、スピード重視の姿をした小柄な少女。ただし、その頭には黒い髪から突き出た同じ色の獣の耳が。『特殊表示』によると、『猫獣人』のようだ。
「へーきへーき。オークの巣を突き止めるために自分から囮を言い出したんだから、そんなヘマしないわよ」
剣士の呼びかけに、栗色の髪の少女は笑って応じる。
こちらも猫獣人の少女を除いた3人と同じく『人間』としか見えていないが、攻撃魔法の一撃でボスオークを殺した辺り、強力な魔法使いのはずだ。
「……まぁ、捕まったふりして抱えられていた間、気持ち悪かったのはたしかだけど。 <地槍>!」
剣士に向けた笑みを消し、自分を運んできたオークを睨む。ボスオークを貫いたのと同じ魔法を再び唱え、こちらも同じく串刺しにした。
一方、金髪の女性――抱えられていた間は髪に隠れて見えなかったが、その耳は長く尖っており、こちらは『ハーフエルフ』らしい――のオークの腕を刺したのとは逆の手にも、どこからか取り出したナイフが握られていた。
2本のナイフが交差するような軌道を描き、オークの喉が十字に掻き切られて血が噴き出す。
その返り血を浴びるより速く、ハーフエルフの少女は大きく跳んで栗色の髪の少女の横に立った。魔法使いの少女を護るように、2本のナイフを前にかざして翠の瞳で周囲のオークを睨みつける。
「ようやく巣を突き止めたのよ。無駄口叩いてないで、さっさと皆殺しにしましょ。こいつら、種それ自体が女の敵なんだから」
ハーフエルフの少女の言葉を合図としたかのように、侵入者たちは一斉に動き出す。
それは、戦闘というより一方的な殲滅だった。
魔法でボスオークを殺されたオークたちは、突然の状況を理解できないままに攻撃を受けた。加えて、巣の中でなるため一部を除いて武装もしておらず、ボスが死んだことで統率もない。
わけがわからないまま、バラバラにあるいは奥に逃げ、あるいは侵入者に立ち向かおうとしたが、剣が振るわれ、矢やナイフが飛び、石の錐が貫いた。
「おい、冗談だろぉ……」
次々に殺されていくオークたちの姿に呻く琢郎も、現状が全て把握できているわけではない。
彼らの話から、どうやら彼らがオークを殲滅しようといういわゆる冒険者であること。メスを集めに行ったオークたちが彼らの囮に騙されて巣までつけられたらしいことはわかった。
が、それだけだ。『特殊表示』は相変わらず種族名しか表示せず、敵の能力値は見ることができない。
もっとも、具体的な数字はわからずとも、百発百中の狩人の矢や、猫獣人の投げナイフ。一撃で急所を貫いたり、2,3回でHPが0になるほどのダメージを与える剣士の剣や、斬るというより叩き潰すかの如き戦士の大剣。いずれも彼らの高い実力を示している。
それでも、せめて相手が1人か2人ならば対処のしようもあった。
オークが魔法を使うことなど想定もしていないだろうし、対ゴブリン戦と同じように不意打ちで魔法を連発すればなんとかなるかもしれなかった。
だが、この人数相手では全滅させる前に接近を許して一撃で殺されるか、飛び道具の餌食になる可能性が高い。
「……よし」
当初の予定とは違うが、この冒険者たちの襲撃を受けて、琢郎は1つの決意を固めた。
やっぱりまた「つづく」になってしまいました。




