13. 襲撃
そろそろ、話を動かします。
初めての実戦から数日がたったが、琢郎があの川原に行ったのはその1度きりだった。
実戦にしろ、火や水属性の魔法の練習にしろ、有用な場所ではあった。だが、もう1度あそこへ行こうという気にはならなかった。
またあの場所に行けば、水汲みに行ったまま戻らなかった仲間を見つけた他のゴブリンからの報復を受けるかもしれない。
敵を殺す覚悟はしたつもりだが、自分から敵のところへ行く気にはなれなかったし、仮にまた実戦をするにしても、もう少し落ち着いて戦えるような少ない数の相手がよかった。
もし報復のためにゴブリンが待ち伏せているなら、前回以上の戦力があるのは必然だろう。
そう考えて別の場所を探してはいたのだが、なかなか他にいい場所を見つけられないまま日は過ぎていた。
「ウオオオォォォォ……!」
そしてこの日、琢郎がいつものように魔法の練習ついでに取った食料を持ち帰ってしばらくすると、巣の中が騒がしくなった。
先輩オークの件の後、どうせいつかは群れを抜けるつもりもあったために他のオークと親しくなるようなことはしていなかった。今朝も早い時間に起きて、1人新しい練習場所を探しに出たため気づかなかったが、どうやらメス狩りが行われていたらしい。
山を下りて近くの街道に出たオークたちが、2人の女性を連れ帰ったところのようだった。
「ブフォッ、ブヒャハハ……」
新しくメスが増えることを喜ぶオークに囲まれて琢郎からはよく見えなかったが、輪の中心で上機嫌に笑う声が聞こえてくる。
どうやら、かなりの上玉を捕まえてきたようだ。
最初の味見はボスオークがすることになるが、その後はそのメスを捕らえたオークに優先権がある。今からお楽しみの時間が待ち遠しいのだろう。
ようやく隙間から栗色の髪の少女を小脇に抱える姿が見えたが、その股間はこの後のお楽しみを期待してか、すでに雄雄しく盛り上がっていた。
その後ろには金髪の女性を抱える別のオークがいて、こちらも下半身を大きくしているばかりか、すでに先端から涎を滴らせている。
女性2人は意識を失っているのか、オークたちに抱えられたままぐったりとしていて動かない。
まあ、起きたところでこれからその身に降りかかることを考えると、悪夢の中にいるも等しい状態なわけだが。
「おお! それか、今日の獲物は!」
新しいメスのことを聞きつけたのか、一際大きい体格をしたボスオークが巣の奥から姿を見せる。やはり、顔には下卑た笑みが満面に浮かんでいる。
ステータスを確認してみると、HPは300弱と琢郎の倍近いが、やはりMPは0。どうやら、普通のオークが魔法を使えないというのはほぼ確定と思っていいようだ。
「……どれ、ではさっそく味見といこうか」
力なく項垂れたままの栗色の髪の少女が、ボスオークの手に渡される。
騒ぎに釣られてつい見てしまっていたが、ここからは今の琢郎にはあまり気分の良くない光景が続きそうだった。
とはいえ、琢郎にはボスを止めるつもりもない。
せめて、踵を返して見ないでおこうと思ったのだが、その直後、後ろでザシュッ! と肉が貫かれる音がした。
いくらボスオークの股間が体格同様に大きいとしても、そんな音がするはずはない。
振り返った琢郎の目に映ったのは、想像もしない光景だった。
「ガ……ゥガァ……!」
地面から突き出した太い錐が、ボスオークの尻から腹を貫いていた。
長大な股間のものは、哀れその錐によって根元からちぎれ落ちてしまっている。いくらオークの生命力が優れているといっても、もはや助かりようもない致命傷だ。
「ア、<地槍>……?」
それはまさに、琢郎の知る地属性の攻撃魔法によるものだった。
使ったのは、さっきまで意識を失っていたはずの栗色の髪の少女。力を失いつつあるボスオークの腕を振り払いながら、してやったりと不敵な笑みを浮かべていた。
「プギャアアァァァ!」
続けて、新たな悲鳴が上がる。同じく抱きかかえられたまま動いていなかったもう1人の金髪の女性が、どこに隠していたのか短刀をオークの腕に突き立ててその身の自由を取り戻していた。
さらには、そのオークの悲鳴を合図としたかのように、巣の入り口の方から武装した数人の男女が姿を見せたのだった。
次回に続く。
前後編のイベントの予定ですが、ひょっとするとまた長引いて3分割になるかも?




