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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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7/24

07:絶望→希望

 一週間が経ち、制服も夏服に変わった。

 その間に、わたしはゴミ拾いをしたり、花壇に水をやったり、掃除当番を代わったり、お昼代を忘れた子を助けたり……とにかく、できることはなんでもやった。


【現在のポイント:5,503pt】

【目標まで残り:994,497pt】


「うーん……テスト勉強しながら、人助けも頑張ったんだけどなぁ」

 中間テストが終わった、月曜日の放課後。

 わたしと天宮くんは、校舎の二階にある空き教室で作戦会議をしていた。

 なんで教室で作戦会議をしないのかって?

 それは、早乙女さんたちの目が怖いからだよ。

 この前、天宮くんは「誰と一緒にいようがおれの勝手だ」って、早乙女さんたちに怒ってくれた。

 おかげで早乙女さんたちは何も言わなくなった。

 それでも、わたしたちが一緒にいると、目で文句を言ってくるんだもん。やっぱり怖い。


「ねえ、天宮くん。100万ポイントを49日で稼ぐなら、一週間で何ポイント必要なんだっけ?」

 わたしはハッピーポイントアプリの画面を消して、スマホを机に置いた。


「ざっと14万。正確には、もっと必要だ」

 向かいの席で、天宮くんがため息をついた。


「全っ然足りてないじゃんっ!! 桁が違うよーー!!」

「一週間前、倉地がプリントに穴を開けてなかったら、もう少しポイントが増えてたかもな」

 頭を抱えていると、天宮くんがボソッとつぶやいた。


「結局、佐藤先生からは80ポイントしかもらえなかったし……まあ、あれだけ自信満々に『先生を助けるために駆けつけた』とか『おれと倉地の二人だけでじゅうぶん』とか言っといて、大事なプリントに穴を開けたわけだからな。先生も失望するよな」

「ああああ!! その話はもう忘れて!! ごめんなさい!! 反省してるから!!」

 ネチネチ攻撃に耐えられなくなって、わたしは自分の顔を両手で覆った。

 あの後の、天宮くんの冷た~い眼差しは、夢に出たもん!!


「ねえ、ハク。もっと手っ取り早くポイントを稼ぐ方法はないの?」

 わたしは手を下ろし、天宮くんの机の上に座っているハクに顔を向けた。

 いまのハクは白い玉じゃなくて、白い狐の姿だ。


「安易に楽をしようとするでない。何事も、日々の積み重ねが大事なんじゃぞ。人は鏡じゃ。善意を向ければ善意が、悪意を向ければ悪意が返ってくる。おぬしに助けられた者は、いつかおぬしを助けてくれるじゃろう。わかったなら、焦らず周りの人の声に耳を傾け――」

「お説教なんて聞きたくない!! そんな悠長なことしてたら死んじゃうんだよ!!」

 ――バシンッ!!

 わたしはハクの言葉をさえぎって、強く机を叩いた。

 行儀が悪いかもしれないけど、こっちは命がかかってる。

 なりふりなんて、構っていられない!!


「ねえ、わたしが助かるためのヒントをちょうだい! 必死でゴミ拾いしたって、1個1ポイントにしかならないんだよ? これで100万なんて、絶対無理だよ! もしかして、最初から無理だってわかってたの? 困ってるわたしを見て、楽しんでるんじゃ――」

「――口を慎め、小娘」

 ハクは銀の体毛を逆立て、地の底から響くような声を出した。


「我を何と心得る。戯れで命を弄ぶほど、堕ちてはおらぬわ」


 周りの空気がズン……と重くなり、わたしは唾を飲み込んだ。


 ――こ、怖い。言い過ぎたかも……。

 でも、わたしは負けじと、ハクの金色の目を真正面から見返した。

 だって、このままじゃ本当に死んじゃうんだもん!!


「……ハク。お前だって、これまでの倉地の頑張りを見てきただろ。おれと二人で協力したって、このままじゃ絶対100万には届かない。この状況を覆す方法があるなら教えてくれ。頼む」

 ハクとにらみ合っていると、天宮くんがハクに頭を下げた。


 ――天宮くんが、頭を下げるなんて……。

 胸の奥が熱くなって、わたしは両手を握り締めた。


 ――そうだ、わたしは、天宮くんの『生存力』をもらって生き返ったんだ。

 わたしを助けてくれた天宮くんのためにも、生きることを諦めるわけにはいかない。


「……ハク。さっきはごめん。ハクだってわたしのことを助けてくれたのに、疑って、酷いこと言っちゃった。本当にごめんなさい」

 わたしは深く頭を下げた。


「でも……わたし、死にたくないの。助かる方法があるなら、教えて。どうか、お願い」


 教室が、静まり返った。


「……ふう」

 しばらくして、ハクがため息をついた。

 それと同時に、身体にかかっていた重い空気が、嘘みたいに軽くなった。


「仕方ないのう。大事なことを教えてやろう。ハッピーポイントは、助けた相手が幸せになればなるほど増える。そう、たとえば――相手の人生を救うほどの善行なら、たった一度で100万ポイントに届くことすらあるのじゃ」

「えっ!?」

「100万って……それでもう目標達成じゃないか」

 天宮くんも、呆然としている。


「本当はヒントなんて出さず、おぬし自身で見つけ出してほしかったんじゃが。特別に教えてやろう。救いを求める者は、案外おぬしの近くにおるのかもしれんぞ」

 ハクは太陽のような黄金の瞳で、わたしをまっすぐに見つめた。


「わたしの近く……? それって、家族? 友達? クラスメイト? それとも、もっと範囲が広い? 同じ学校の人や、家の近所に住んでる人でも『わたしの近く』に含まれるの?」

「そこまでは教えてやらん」

 ハクはプイっと顔を背けちゃった。


「意地が悪いな。そこまで言ったんなら、全部教えろよ」

 天宮くんが冷たい目を向けたけど、ハクは、つーんとそっぽ向いたまま。


「でもさ! とにかく、このまま地道に周りの人を助けてれば、わたしも助かるかも……ううん。『かもしれない』じゃなくて、本当に、助かるんだよね? 7月1日になっても、生きていられるんだよね?」

「……うむ。おぬしが真に救うべき相手を救ったなら、助かる。キヨミズノミコト様の御名に懸けて、我が保証しよう」

 泣きそうになっているわたしを見て、ハクは重々しくうなずいた。


「……っ、よっしゃーーー!!!」

 わたしは力いっぱい叫んで、ガッツポーズを決めた。

 びっくりしたらしく、天宮くんが身体を引いている。

 ハクも目を真ん丸にして、三角の耳をピンと立てていた。


「未来に希望が見えた!! やる気が出てきたよ!!」

 わたしはハイテンションで天宮くんのそばに行き、彼の手を掴んで激しく振った。


「さっきはわたしのためにハクに頼んでくれてありがとう! わたし、ちょー頑張って、絶対絶対生き延びてみせるから!! これからもよろしくね!!」

「……。ああ」

 天宮くんは小さく笑ってから、うつむいた。


「……倉地がいないと、つまらないしな」

「え? いま、なんて?」

 わたしはピタッと動きを止めた。

 天宮くんがなにか言ったみたいだけど、声が小さすぎて聞き取れなかったの。


「なんでもない。いつまで人の手を握ってるんだって言っただけ」

「あ、ごめん」

 わたしは慌てて、手を離した。

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