表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/24

03:氷の王子様が転んだ!

 次の日の朝。

 天宮くんと話がしたくて、わたしはいつもより早く水葉学園の校門をくぐった。

 右の頬には大きなガーゼ、左足は包帯でグルグル巻き。

 そんなわたしを見て、登校中の生徒たちがヒソヒソしてる。


 あの後、わたしは救急車に乗せられて病院に運ばれた。

 幸いなことに、全身打撲と擦り傷だけで、大きな怪我はなかった。

 いや、大きな怪我がなかっただけで、あちこち痛いんだけどね。


 でも、生きてるだけでじゅうぶん!


「あっ、天宮くんだ!」

 後方から、女子たちの黄色い歓声が聞こえてきた。

 振り返ると、校門の前に黒塗りの高級車が止まっていた。

 車から降りてきたのは、通学カバンを持った天宮くんだ。


「キャー! 天宮くーん!」

「こっち向いてー!」

 どれだけ呼びかけられても、天宮くんは無反応。

 アイロンのきいた制服をピシッと着こなし、まっすぐに凛と前を向いて歩いている。


「ああ、今日も最高にクールだわ。見て、あの『うるせえな』といわんばかりの冷たい視線。さすがは『氷の王子様』」

「うんうん。孤高の一匹狼って感じで、素敵だよねー」

 女子たちは大盛り上がりだ。


 天宮くんの左肩の上には光の玉が浮かんでいるけど、誰も気づいてない。

 ハクが見えるのはわたしと天宮くんだけなんだろうな、なんて思っていると。

 天宮くんが突然、何もないところで転んだ。


 ――ビターンッ!!


 潰れたカエルみたいに、天宮くんはうつ伏せに倒れた。


「………………」

 シーン……と、辺りが静まり返る。

 少し遅れて、彼の手からすっぽ抜けたカバンが、地面に落ちた。


「え……天宮くんが、転んだ……?」

「氷の王子が、あんなマンガみたいに……?」

 生徒たちがざわめく中、天宮くんは倒れたまま、動かない。


「おい、月都、大丈夫か? 返事をせい!」

 天宮くんの近くで、光の玉が焦ったように飛び回っている。


(ま、まさか、わたしのせい……!?)

 昨日のハクの言葉を思い出す。

『ものすご~く運が悪くなる』……いや、これ絶対、わたしのせいだ!

 わたしを助けたせいで、『氷の王子様』のイメージが台無しだよ!!


「天宮くん! 大丈夫!?」

 わたしは身体中の痛みを無視して全速力で走り、天宮くんの腕を掴んで引き起こした。

「あの子誰?」って、天宮くんのファンの子たちがわたしに注目してるけど、気にしてる場合じゃない!


「……。……離せ」

 天宮くんの顔は、ほんのり赤い。

 クールに振る舞ってるけど、みんなの前で転んで相当恥ずかしいみたいだ。

 彼の顎には擦り傷ができていて、血が滲んでいる。


「でも、すごい音したよ!? 顎も怪我して――」

「いいから、構うな。大丈夫だ」

 天宮くんはわたしの手を振り払って立ち上がり、自分のカバンを拾った。

 でも、立ち上がるときに痛そうに顔をしかめたのを、わたしは見逃さなかった。

 顎以外にも、どこか怪我してるんだ!


「保健室行こう!!」

 わたしは天宮くんの左手首を掴んだ。


「大丈夫だって――」

「いいから来るの!! 言うこと聞かないなら、お姫様抱っこしてでも連れてくよ!?」

「おれより怪我してるやつが何言ってるんだよ……わかった、行く。だからそんな目でにらむな」

 天宮くんはため息をついた。


「わかってくれて嬉しいよ! さ、行こ!」

 わたしはそのまま彼を引っ張って歩き出した。




「これで、お互い怪我人だな」

 保健室を出て、天宮くんが言った。


 天宮くんの顎には大きな絆創膏。

 さらに、彼の左膝には包帯が巻かれている(いまはズボンの下に隠れて見えないけど)。


「うん……でも、わたしの怪我は、わたしの不注意のせいだけどさ。天宮くんの怪我は、わたしのせいだよね。ものすごく運が悪くなったから、何もないところで転んじゃったんだよね。ごめんね」

 二人きりの廊下で、わたしはうつむいた。


「いいよ。こうなるとわかってて、それでも助けるって決めたのはおれだし。むしろ、これくらいで済んで良かったと思うべきだろ。ハクには『道を歩いているだけで車が突っ込んでくるかもしれない』なんて脅されたし」

 天宮くんは、自分の左肩の上にいる光の玉をチラッと見た。


「うう……。わたし、これからできるだけ、天宮くんのそばにいるよ! 昨日はうっかりペットボトルを踏んじゃったけど、これでも運動神経は良いほうなんだから! もし上から植木鉢が降ってきても、ちゃんと受け止めてみせるから!」

 胸の前で両手を握ると、天宮くんは驚いたように目を大きくして。

 それから、こらえきれないように、少しだけ笑った。


「じゃあ、車が突っ込んできても、受け止めてくれるわけ?」

「うっ……!? そ、それはさすがに無理だけど! でも、そのときは轢かれる前に、天宮くんを抱えて逃げる!!」

「お前はどこのヒーローだよ」

 天宮くんはおかしそうに笑ってる。

 天宮くんの笑顔が見られるなんて、ラッキーかも。

 教室で笑ってるところなんて、見たことないし。


「あ、あのさ。お前って呼ぶより、名前で呼んでほしいな」

 天宮くんの機嫌が良さそうなので、わたしは思い切って言った。


「わかった。これからは風花って呼ぶ」

「ひえっ!?」

 さらっと言われて、心臓が大きく跳ねた。

 だって、同い年の男の子から下の名前で呼ばれたことなんてないんだもん!

 しかも、こんな超イケメンに!!


「いや、そうじゃなくて! 他の男子みたいに、苗字で呼んでほしいんですけどっ!」

 わたしは焦りながら手を振った。


「ああ、そうか。ごめん。じゃあ、倉地。ハッピーポイントについて説明したいから、ついてきて」

「うん」

 まだドキドキしている胸を押さえてから、わたしは天宮くんの後を小走りに追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ