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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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19/24

19:君がいなくちゃ

「あ、そうそう。これ、どうぞ。お父さんが、いつもお世話になってるお礼に渡しなさいって」

 わたしは気を取り直して、百貨店の紙袋を天宮くんに差し出した。


「ああ……気を遣わなくていいって言ったのに」

 紙袋を受け取ったものの、天宮くんはあんまり嬉しそうじゃない。


「わたしも『天宮くんはお礼とか要らないって言ってたよ』って言ったんだけどね。『そんなわけにはいかない!! くれぐれも失礼のないようにしなさい!!』って、お父さんが言うんだもん」

 わたしは両目の目じりを人差し指で持ち上げ、怒った顔を作ってみせた。


「わたしのお父さんは天宮グループの下で働いてるからさ。わたしが天宮くんを怒らせたら、クビになるかもって心配してるんだよ」

「まさか。そんなわけないだろ」

「本当? わたしがなにか失礼なことしても、お父さんをクビにしたりしない?」

「しないって」

「じゃあ、約束! 指切りしよ!」

 わたしは右手の小指を立てて、天宮くんに近づけた。


「指切りって……幼稚園児かよ」

「いいからやるの!」

 ゴリ押しすると、天宮くんはしぶしぶ小指を絡ませた。


「ゆーびきーりげーんまーん……♪」

 歌いながら、絡ませた小指を上下に振る。


「歌うのか……」

 げんなりした顔をしながらも、天宮くんは歌い終わるまで辛抱強く待ってくれた。


「――ゆーびきったっ! これでもう、わたしがなにしてもお父さんはクビにならずに済むよね! 約束したからねっ!?」

「わかったって。しつこい」

 にらまれてしまった。


(やばい。空気を変えなきゃ)

 話題を求めて視線をさまよわせたわたしは、窓の外を指さして言った。


「あ、見て見て、天宮くん。月が綺麗だよ」

 夕焼けの残る空に、白い月がぽっかり浮かんでいる。


「本当だな。……爆発すればいいのに」

「なんで爆発っ!?」

 ビックリして、わたしは勢いよく天宮くんを見た。


「天宮くんの名前にも『月』が入ってるじゃない! それなのに、そんなこと言っちゃダメでしょ!」

「……《《だから》》だよ」

 天宮くんは長い睫毛を伏せて、唇を引き結んだ。


 ――そうか。

 天宮くんは、自分のことが嫌いなんだ。

 自分と同じ名前の月なんて、爆発しちゃえばいいって思うくらいに。


(それは、旭くんと比べられてきたから……?)


 ――月都くんにとっては、たまらなかったと思うよ。

 紗彩ちゃんの言葉を思い出して、ひどく胸が苦しい。


「……そんなこと言わないで」

 気づけば右手が伸びて、天宮くんの左手をつかんでいた。

 車内クーラーが効いているせいか、天宮くんの手は、ちょっとだけ冷たい。

 

「わたしは、月がなくなったらさびしいし、悲しいよ。お月見だってできなくなって、みんな困っちゃうよ」

「……いまの時代にお月見なんてするやついないだろ」

「なに言ってるの、たくさんいるよ! SNSで探してみなよ、すぐ見つかるから! お月見バーガーだって、お月見スイーツだって、みんな大好きに決まってるじゃん! わたし、毎年お月見バーガー食べるの楽しみにしてるんだから――って、違う! そうじゃない!」

「?」

 天宮くんは、わけがわからないという顔をしている。


「だから、わたしが言いたいのはお月見のことじゃなくって……。~~~~っ」

 言いたいことはあるけど、言いづらい。

 わたしはただのクラスメイト。ニセ彼女。

 それなのに、踏み込んだことを言ってしまっても、いいのかな?


(でもっ! わたしが言わなきゃ、だれが言うの!? わたしは暗い顔した天宮くんより、冷たい『氷の王子』なんかより! 笑顔の天宮くんのほうが、ずっとずっと好きだもん!!)


 たとえドン引きされたって、いい!

 だって、これが、わたしの正直な気持ちだから!!


「――だからっ! わたしは! 月都くんがいないといやなんだよ!!」


 燃え上がるほど、顔が熱い。

 でも、わたしは思い切って左手を伸ばし、天宮くんの手を両手で包み込むように握った。


「冗談でも、爆発しろとか言わないでよ! わたしは月都くんがいなくなったら泣くよ!? めちゃくちゃ泣いて、泣きまくって、地球を涙で沈めてやるんだからっ!!」

「…………」

 天宮くんは、キョトンとして。


「……あははっ。なんだそれ。地球を滅ぼす気かよ。他人にとっては、大迷惑だな」

 声を上げて笑い、わたしの手を握り返してきた。

 握り返してきたその手の感触が、ありがとう、と言っているような気がして。

 不覚にも、わたしの胸は、ドキドキ鳴りっぱなしだった。


「おれのこと、月都って呼んだな」

「えっ、うん。ごめん」

「謝らなくていい。小学校ではそう呼ばれてたし、そのまま月都って呼んでいいよ。ただし、おれも風花って呼ぶからな。前は拒否されたけど、お互いに下の名前で呼ぶなら公平だろ?」

 ――さあ、どうする?

 そんな顔で、天宮くんはわたしを見つめた。

 繋いだ手は、まだ離してくれそうにない。


「……え、えーと……じゃあ……月都くん」

 恥ずかしくて、蚊の鳴くような声で名前を呼ぶ。

 すると、月都くんは嬉しそうに笑った。

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