18:おめかしデート?
次の日、午後六時半。
わたしはハンドバッグと百貨店の紙袋を持って、自宅近くの通りに立っていた。
フリルのついた赤いワンピースに、白い靴。
セミロングの髪は後ろで緩くまとめて、大きなリボンを結んでいる。
なんでこんなにおめかししてるのかって?
それは、たまたま早く帰ってきたお父さんに「天宮くんとデートするなら、めいっぱいおしゃれしなさい!」って言われたからだよ。
(デートじゃなくて、大久保食堂にご飯を食べに行くだけなんだけどなあ。やっぱり、天宮くんと付き合ってるって言っちゃったのは間違いだったかな。お母さんは固まっちゃったし。お父さんなんて、泡を吹いて倒れちゃったし)
つま先に花の飾りがついた靴を見下ろして、わたしはため息をついた。
(こんなことになるなら、ただのクラスメイトで押し通すべきだったのかな。でも、「なんで毎日のように天宮くんと出かけるの?」ってしつこく聞かれるんだもん)
そのとき、黒塗りの高級車が、わたしの目の前でとまった。
運転席の扉が開き、スーツを着た運転手さんが歩いてくる。
「お待たせいたしました、倉地様。どうぞ、お乗りくださいませ」
運転手さんはうやうやしく頭を下げて、わたしのためにドアを開けてくれた。
(ひゃーっ! 大人に頭を下げられて、倉地様とか言われると、お嬢様になった気分!)
ハッピーポイントを集め始めてから、天宮くんの家の車に乗せてもらうのはこれで十回目だ。
でも、大人にお嬢様扱いされると、やっぱりテンション上がっちゃう!
「ありがとうございます。お邪魔します」
運転手さんにペコリと頭を下げてから、後部座席に乗り込む。
後部座席の奥には、私服姿の天宮くんが座っていた。
フード付きのパーカーに、爽やかな水色のシャツ。
紺色のズボンと、ブランドのマークが入った靴。
やっぱり天宮くんって、センスがいいなぁ。
まあ、イケメンはなにを着ても似合うんだけどね!
「こんばんは、天宮くん。学校ぶりだね……って、どうしたの?」
天宮くんはわたしを見て、目を大きくしている。
「……いや。ずいぶん気合入った格好してるから、驚いただけ」
「ああ、これ。天宮くんと出かけるならおしゃれしなさいって、お父さんに言われたの。やっぱり変、かな?」
シートベルトを締めながら、わたしは不安になって聞いた。
「そんなことない。その……よく似合ってる……と思う」
天宮くんは窓の外を見て、小声で言った。
「えっ」
顔がポッと熱くなる。
「月都様。せんえつながら、そこは『可愛い』とはっきりおっしゃるべきかと」
運転席で、運転手さんがすました顔で言った。
「うるさいぞ、冴島。ムダ口を叩くひまがあったら、とっとと発進させろ」
天宮くんは運転手さん――冴島さんを、ジロリとにらんだ。
ひえっ。天宮くんってば、大人相手に、えらそう!
「失礼いたしました。それでは発車いたします」
冴島さんがアクセルを踏んで、静かに車が走り出す。
「やっぱり、ハクはいないんだね」
見回しても、天宮くんの近くに白い光の玉は浮かんでない。
「ああ。あれから一度も帰ってない」
「そっか。なにしてるんだろうね。早く帰ってこないかな。前みたいに困ってる人、教えてほしいんだけどな……」
ハクがいなくなってからも、ハッピーポイント獲得の通知は来るし、アプリのポイント数もきちんと変動してる。
でも、ハクからのメッセージはぱったりこなくなっちゃったの。
おかげで、困ってる人は自力で探し出さなきゃいけなくなった。




