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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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13/24

13:『おまけ』

 6月17日、今日の天気は雨。


「行ってらっしゃい。気をつけてね」

「はーい。行ってきまーす」

 玄関まで見送ってくれたお母さんに手を振って、わたしは傘を差した。

 歩き出して、すぐに。


 ――パパパパーンッ♪

 右肩に下げていたカバンから、ファンファーレが聞こえた。


(えっ。天宮くん、こんな朝早くから人助けしてるの?)

 わたしは驚いて、道のはしで立ち止まった。

 左手に持っていた傘を肩に引っ掛け、カバンからスマホを取り出す。


【100ポイント獲得しました】


「……100ポイントか」

 わたしは通知を閉じて、ハッピーポイントアプリを開いた。


【現在のポイント:141,178pt】

【目標まで残り:858,822 pt】

 

「……はあ」

 思わず、ため息が口からもれる。


 わたしの命のタイムリミットまで、あと二週間を切った。

 それなのに、目標まで全然足りてない。

 早乙女さんの指輪を見つけたときは1万ポイントももらえて、これならいけるって思った。

 でも、その後は最高でも五千ポイント止まりだ。


「……わたし、死んじゃうのかな……って、ダメダメ。ネガティブ禁止!」

 わたしはブンブン首を振って、不安と恐怖を追い出した。


「大丈夫、絶対助かるっ! ハクは『本当に困ってる人』はわたしの近くにいるって言った! とにかく周りの人を助けてたら、その人を見つけられるはずだもん! 朝から頑張ってくれてる天宮くんのためにも、絶対絶対、諦めたりしないんだからっ!」

 気合を入れ直し、わたしはスマホをカバンに入れて歩き出した。

 住宅街を抜けて、大通りに入る。

 学校が遠くに見えてきたところで、前を歩いている女子二人組の声が耳に飛び込んできた。


「――天宮くんってさあ。雰囲気変わったよね」


 ――天宮くん?

 その単語に引っ張られて、わたしの意識のアンテナは自然と彼女たちに向かった。

 わたしの前にいるのは、それぞれ赤と青の傘を差した二人の女の子。

 クラスは違うけど、同じ学年の子だ。


「うん。知ってる? 昨日の放課後は天宮くんが先生役になって、勉強会を開いたらしいよ」

「勉強会ぃ? あの『氷の王子』がぁ?」

 よっぽど意外だったらしく、赤い傘を差した女の子の声は裏返っていた。


「そうそう。ユミに聞いたんだけどさ。この前の土曜日は彼女の倉地さんと、ボランティア団体の人と一緒に、公園に捨てられたウサギを捕まえてたんだって」


 ――すぐ後ろに、その『ニセ彼女の倉地さん』がいるんだけど……。

 どうやら傘のせいで、後ろが全く見えてないらしい。


「ウサギを追いかけてる途中で、天宮くん、派手に転んじゃったらしいよ。金曜日は雨が降ったでしょ? 運悪く残ってた水たまりにダイブしちゃって、泥だらけになってたって」

「やだー、ダサーい! イメージちがーう!」

「だよねえ。誰とも群れない、孤高の一匹狼! って感じが最高にクールで格好良かったのにさあ。いまじゃ彼女もできて、すっかりフツーの男子になっちゃって、残念すぎ。ファンやめて正解だったわ」

「わたしもー」


 ――好き勝手なこと言ってるなぁ……。

 ここに天宮くんがいなくて良かった。

 だって、こんなの聞いたら、嫌な思いをするに決まってるもん。


「ちょっと――」

 さすがに怒って、二人組の女子に声をかけようとしたとき。


「――ふふっ。まだそんなこと言ってる人がいたんだ」

 近くにいた、黒い傘を差した女子が、クスクス笑った。


「な、なによ。あんた誰?」

「あ、ごめん。あたし、月都くんと同じ小学校だったから。月都くんが『氷の王子』って言われるたびに、つい笑っちゃうの。おかしくって」

「なんでよ?」

「なにがおかしいの?」

 二人組の女子は、けげんそうな顔をしている。


「いいよ、教えてあげる。本物の『王子様』は月都くんじゃない。月都くんのお兄ちゃんの、旭くんのほうなんだよ」

 黒い傘を差した女子は、とっておきの秘密を打ち明けるみたいに、フフンと笑った。


「運動も勉強もできる旭くんは、みんなの憧れだった。性格も優しくて、本当に王子様みたいだったの。でも、月都くんはまるで逆。ネクラでひねくれ者で、ぜ〜んぜん格好良くなんてなかった。言っちゃ悪いけどさ、完全に旭くんの『おまけ』って感じ――」


 ――『おまけ』?

 頭の中でなにかがブチッと切れて、目の前が真っ赤に染まった。


「――ひどいこと言わないでよ!!」

 気がついたら、わたしはお腹の底から叫んでいた。


「失礼にもほどがあるでしょ!! 旭くんがどれだけすごかったか知らないけど、そんなの関係ない!! 天宮くんのこと、なにも知らないくせに!! 勝手なこと言わないで!!」

 三人の女子たちはビクッと震えて、わたしを見た。


 二人組の女子は『ヤバい』という顔をして、黙り込んだ。

 でも、黒い傘を差した女子は開き直ったらしく、わたしをにらみつけてきた。


「……だって、本当のことだもん。みんなから王子様って言われてたのは、旭くんのほう! ウソだって思うなら、同じクラスの新田さんに聞いてみなよっ!」

 捨て台詞のように叫んで、その子は水たまりをパシャパシャ蹴散らしながら逃げた。

 足には自信がある。

 追いかけて捕まえようと思えばできた。

 でも……ショックが大きすぎて、とても、そんな気になれなかった。

 二人組の女子も早足で逃げていったけど、どうだっていい。


「……『おまけ』って、なにそれ。あんまりだよ。そんなこと言うなんて、最低だよ……」

 降りしきる雨の中で、わたしは傘の柄を握り締めた。

 強く握りすぎて、手が痛い。

 でも、手よりも心のほうが、ずっとずっと痛かった。

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