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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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12/24

12:ニセ彼女と一万ポイント

 教室、トイレ、廊下。

 どこも注意深く探したけど、指輪は見つからなかった。


(天宮くんたちが見つけていますように)

 祈りながら渡り廊下に戻ると、早乙女さんが立っていた。

 天宮くんは、まだ戻って来てないみたいだ。


「早乙女さん! ごめん、見つからなかった!」

 わたしは息を切らして、早乙女さんに駆け寄った。


「……それはそうでしょう。だって」

 気まずそうな顔で、早乙女さんは自分の左手を上げた。

 左手の中指には、しっかりと銀の指輪がはまっている。


「あっ!! 見つかったんだ!?」

「ええ。天宮くんの予想通りだったわ。ロッカーと壁のせまい隙間にあったの。奥のほうまで入り込んでたから、気づかなかった……はあ。あれだけ大騒ぎして、オチがこれって。全く、情けないったらないわ」

 早乙女さんはため息をついて、右手で指輪を包み込むように握った。


「でも、見つかって良かったわ。これは大事なお守りで……おばあちゃんの形見だから」

「えっ、形見だったの? それはなくしたら焦るね。本当に、見つかって良かった」

 心から笑うと、早乙女さんは口をへの字に曲げた。


「……あなた、怒ってないの? 指輪は更衣室にあったわけだから、探す必要なんてなかった。これこそ、『骨折り損のくたびれ儲け』じゃない」

「怖いこと言わないでよ。骨なんて折ってないよ」

「骨折り損のくたびれ儲けっていうのは、苦労がムダになったっていう意味だ」

 後ろから聞き慣れた声が聞こえて、わたしは振り返った。


「あっ、天宮くん。お帰り! 指輪は――」

「見ればわかる。見つかって良かったな」

 早乙女さんの左手に輝く指輪を見て、天宮くんはほほえんだ。


「……そうね。良かったわ」

 早乙女さんは天宮くんの笑顔を見て、嬉しそうな、悲しそうな……なんとも複雑な顔をした。


「どうしたんだ? 指輪に傷でもついてたのか?」

 天宮くんは不思議そう。


「ご心配なく。特に大きな傷はなかったから。その……天宮くん。倉地さん。一緒に指輪を探してくれて、ありがとう」

 早乙女さんは、ぺこっと頭を下げた。


「どういたしまして」

「もう落とさないように気をつけろよ」

「ええ、気をつける。――それはそれとして、天宮くん。あなたのファンクラブの会長として、聞きたいことがあるのだけれど」

 早乙女さんは真顔で天宮くんに詰め寄った。


「ごまかさず、正直に答えてちょうだい。あなたたち、付き合ってるんでしょう?」

「へっ!?」

 すっとんきょうな声を上げたわたしを、早乙女さんは厳しい目で見つめた。


「だって、昼休みも放課後も一緒にいるじゃない。あやしいわ。絶対、『ただのクラスメイト』なんかじゃないでしょう。うわさによれば、日曜日も駅前でデートしてたって聞いたわよ?」

「ちが――」

 ――違うの! ハッピーポイントを集めるために、一緒に人助けをしてただけ!!

 って、叫びたかったのに。


「もがっ」

 横から天宮くんの手が伸びてきて、わたしの口を素早く塞いでしまった。


「早乙女の言う通りだ。実はおれたち、付き合ってるんだ」

「●×▽■※っ!?」

 驚きすぎて、意味不明な奇声が口から飛び出した。


 ――つ、付き合ってるって……。

 大ウソじゃん!!

 いったい、なにを言い出すの、天宮くん!!


「いいから、そういうことにしておけ」

 天宮くんはわたしの耳元で囁いた。

 色々言いたいことはあるけど……天宮くんのことだから、きっとなにか考えがあるんだろう。

 わたしが黙ってうなずくと、天宮くんは安心したように手を離した。


「……そう。やっぱり、そうだったのね。正直に答えてくれてありがとう」

 早乙女さんはいっしゅんだけ、悲しそうに目を伏せた。

 でも、すぐに気持ちを切り替えたらしく、顔を上げて言った。


「決めたわ。ファンクラブは解散する。彼女がいる人を追いかけても、むなしいだけだもの。すぐには無理かもしれないけど……諦めて、新しい恋を探さないとね」

 早乙女さんは、少しだけ無理をしたような笑顔を浮かべた。


「倉地さん、これまで意地悪なこと言ってごめんなさいね。悔しいけど、あなたには負けたわ。天宮くんとお幸せに」

「……う、うん。ありがとう……?」

 お幸せにって言われても、返事に困ってしまう。

 本当は、わたしたち、付き合ってないんだけどなぁ。


「じゃあね。また明日」

 早乙女さんは足元に置いていたカバンを持って、颯爽と歩いて行った。

 ちょうどそのとき、下校時間を告げるアナウンスと、音楽が流れ始めた。


「おれたちも帰るか」

「うん」

 わたしと天宮くんは並んで歩き出した。


「ねえ、天宮くん。なんで早乙女さんに『付き合ってる』なんてウソ言ったの?」

「そのほうが都合がいいだろうが。倉地と一緒にいると、いちいち理由を聞かれて面倒くさいんだよ」

 天宮くんはウンザリしたような顔をしている。


「ああ、わかる。わたしも一緒」

 これまで色んな人に「なんで天宮くんと一緒にいるの?」「付き合ってるの?」って聞かれて、わたしも正直、ウンザリしてた。

 ただのクラスメイトだって言っても「ウソだ」って決めつけて、なかなか納得してくれない子もいたし。


「じゃあ、6月30日までは付き合ってるってことにしようか。その後は別れたってことにすればいいもんね」

「……そうだな」

 ん?

 なんかいま、変な間があったような――と、思った直後。


 ――パパパパーンッ♪

 わたしのスカートと天宮くんのズボンから、同時にファンファーレが鳴った。

 わたしと天宮くんはスマホを取り出して、固まった。


【10,000ポイント獲得しました】


「ウソだろ……」

「なんで!? 指輪を探しただけなのに!? ハク、間違えてない!?」

「なにも間違えてはおらんぞ」

 ぽんっという音がして、天宮くんの近くにいた光の玉が、白い狐になった。


「言ったじゃろう、相手が幸せになればなるほどハッピーポイントは増えると。今回多くのハッピーポイントが獲得できたのは、早乙女にとって、それだけ指輪が大事なものだったということじゃ」

「……そっか。おばあちゃんの形見だもんね。唯一無二の宝物だもんね……」

 わたしはスマホを握りしめて、天宮くんを見た。

 わたしが言いたいことは伝わったらしく、天宮くんは笑った。


「一回の人助けで一万ポイント稼げるなら、百万ポイントも夢じゃない。希望が見えてきたな」

「うんっ!!」

 嬉しくて、わたしはウサギみたいにぴょんぴょん飛び跳ねた。

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