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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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11/24

11:早乙女さんの指輪探し

「ハク、困ってる人ってどこにいるの?」

「体育館の近くじゃ」

 ハクは白い光の玉になって、天宮くんの左肩の上に乗った。


「じゃあ、一階に下りなきゃ。天宮くん、行こっ!」

「ああ。あと二十分で最終下校時間だ。急ごう」

 わたしと天宮くんはそれぞれカバンを持って、廊下に飛び出した。

 そのまま勢いよく階段を下りていると、わたしの隣で、天宮くんの身体がガクンと揺れた。


 ――落ちるっ!?


 わたしはとっさに、右手に持っていたカバンを放り投げた。

 空いた右手で天宮くんの腕を掴み、左手を彼の腰に回して支える。


「あ、あぶなー……落ちなくて良かったー……」

 天宮くんに密着したまま、わたしは大きく息を吐いた。


「……そろそろ離してくれないか」

 天宮くんの顔はトマトみたいに赤い。

 そこでようやく、気づいた。


 ――わたし、天宮くんに抱きついちゃってるよ!!


「ご、ごめん!!」

 顔が熱くなるのを感じながら手を離し、身体を引く。


「いや……助かった、ありがとう。それにしても、なんでここだけ濡れてるんだ。いくら外が雨だからって、ここだけ濡れてるのはおかしいだろ」

 天宮くんは不満そうに言って、自分の足元を見た。

 他の場所は濡れてないのに、天宮くんの足元だけ、ピンポイントで濡れている。

 そこを見事に踏んづけちゃったのは、ものすご~く悪くなった運のせいなんだろうな。


「雨じゃなくて、誰かが水を零したのかもしれないね」

 わたしは階段を下りて、自分のカバンを拾い上げた。

 汚れていたから、パンパンと叩いてホコリを落とす。


「いい迷惑だ」

 わたしの隣にやってきた天宮くんの耳は、まだ少し赤かった。




 校舎から体育館に続く、一階の渡り廊下。

 そこにいたのは、同じクラスの早乙女さんだった。


「……どこなのよ、もう!」

 早乙女さんは半泣き状態で身を屈め、なにかを探していた。

 渡り廊下の屋根と壁の隙間から、雨が吹き込んでいる。

 早乙女さんの頭や肩は濡れていたけど、本人は気づいてすらいないようだった。


「なにしてるんだ、早乙女」

 天宮くんが声をかけると、早乙女さんはパッと顔を輝かせて立ち上がった。


「天宮くん! もしかして、わたしを助けに……」

 早乙女さんは天宮くんの斜め後ろにいるわたしに気づいて、顔をしかめた。


「……なんだ。倉地さんもいるのね。わたしになにか用?」

「なにか探してるみたいだったから。探し物があるなら、手伝うよ?」

 わたしは一歩、早乙女さんに近づいた。


「あなたには関係ないわ。もうすぐ下校時間でしょう。ヒマなら、さっさと帰りなさいよ」

 早乙女さんは濡れた髪を手で払って、わたしをにらんだ。


 ――う……。

 射抜くような強い目に、わたしはたじろいだ。


(早乙女さんはわたしのことが大嫌いみたいだし。無理に助けたって、ポイントもらえないかも。でも……)

 早乙女さんの目に浮かぶ涙を見たら、放っておけなかった。


「でも、泣いてるじゃない。大切なものなんじゃ――」

「行こう、倉地。本人が帰れって言ってるんだ。放っとけばいい」

 天宮くんはわたしの手をつかんで、来た道を引き返した。


「えっ。でも――」

「いいから来い。あんな無礼なやつを助ける必要なんてない。倉地は人が良すぎる」

「そ、そうかなぁ……」

 困惑するわたしの手を引っ張り、天宮くんはずんずん歩いていく。


「……っ、待って!」

 五秒も経たないうちに、背後で早乙女さんが叫んだ。

 振り返ると、早乙女さんは悔しそうにうつむいて、唇を噛んだ。


「……やっぱり、助けてちょうだい。大事な指輪を、落としてしまったの」

「助けてほしいなら、倉地に言うべきことがあるだろ」

 天宮くんはわたしの手をつかんだまま、早乙女さんをにらみつけた。


「……その……さっきは、失礼なことを言ってしまって、ごめんなさい。わたしが悪かったわ。だから……わたしと一緒に、指輪を探して……ください」

 早乙女さんは途切れ途切れに言って、頭を下げた。


「……どうする?」

 天宮くんは手を離して、わたしを見た。


「謝ってくれたし、もういいよ。わたしは早乙女さんを助けたい。天宮くんも協力してほしい」

「いいよ。というか、元々そのつもりで来たんだし。最初から早乙女が素直に頭を下げて頼んできたら、それで済んだ話だったんだ」

 天宮くんが歩き出す。

 わたしは天宮くんに続いて、早乙女さんの前に戻った。


「最後に指輪があったのはいつだ?」

 もう怒ってないらしく、天宮くんは冷静に質問した。


「五時間目の授業が終わったときは、確かにあったわ。この中に、ちゃんと入ってた」

 早乙女さんは制服のスカートのポケットから、小さなきんちゃく袋を取り出した。


「その後、どこを歩いた。できるだけ具体的に思い出せ」

「ええと……その後は、トイレに行ったわ」

「トイレっていうのは、一組に一番近い、三階西のトイレだな?」

「ええ。わざわざ遠いところに行かないわよ。トイレを出た後は、近くの階段を下りて、特別校舎に行った」

「なんで?」

 不思議に思って、わたしは聞いた。


「先生に頼まれて、理科準備室に資料を取りに行ったのよ」

 言いながら、早乙女さんはきんちゃく袋をポケットに戻した。


「トイレから理科準備室までは、最短ルートを通ったのか?」

「ええ、最短ルートよ。帰りも、寄り道せず教室に戻ったわ。そのまま授業を受けて、放課後になったら、トモコと一緒に体育館に行った。それで、部活が終わって、更衣室で着替えたときに……指輪がないことに気づいたの」

 早乙女さんは長い髪を垂らすようにして、うなだれた。


「わかった。時間もないし、おれが各自の担当を決める。倉地はトイレと教室を探して、終わったら戻って来い。戻ってくるときも、指輪を探しながらな」

「わかった」

 わたしはうなずいた。


「おれは理科準備室と、教室までのルートを探す。早乙女は更衣室を隅々まで探せ。指輪は小さいから、ロッカーの後ろや、予想外の隙間に入り込んだのかもしれない」

「わかったわ。更衣室はさっきも探したけど、今度はもっと、気をつけて見てみる」

「決まりだな。じゃあ、十五分後にここに集合で」

 そう言って、天宮くんは走り去った。

 時間がないし、わたしも急いで教室に行こうと思ったんだけど……。


「……な、なに? 早乙女さん」

 早乙女さんが鬼みたいな顔でにらんでくるから、動けない。


「天宮くんと一緒にいたから怒ってるの? でも、本当に、天宮くんとわたしはただのクラスメイトで――」

「はっ。この期に及んで、しらじらしい。さっきの天宮くんの態度を見れば、いやでもわかるわよ。とぼけたってムダよ」

「ムダ? なにが?」

 本当にわからなくて、わたしは首を傾げた。


「……呆れた。あなた、本当に気づいてないのね。でも、教えてあげないわ。指輪、ちゃんと探してよねっ!」

 早乙女さんはプイっと顔を背けて、体育館のほうへ走っていった。


「……えーと……よくわかんないけど、行こう」

 わけがわからないまま、わたしは教室に向かって駆け出した。

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