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ハッピーポイント集めます〜わたしの余命は49日!?〜  作者: 天咲リンネ


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10/24

10:一番の笑顔

「『最近、抜け毛が多くて困ってる』んだって!」

「………………そうか」

 なんで天宮くんは、深いため息をついたんだろう?

 ハクもがっくりして、耳を垂らしてるし。


「ネットで評価の高かった『育毛シャンプー』と『育毛剤』のセットをプレゼントしたら、めちゃくちゃ喜んでくれて。なんとびっくり、300ポイントももらえたんだ! この前、エレベーターのない駅でベビーカーを運んだときより高いんだよ!? すごくない!?」

「……まあ、確かにすごいな。倉地のお父さんは結構、真剣に悩んでたんだろうな……」

「お母さんは家事を手伝うことで、一日に30ポイントくらいくれるかな。多いときは50ポイントくらい――」

「いや、話さなくていい。倉地の家族が『本気で困ってる人』じゃないってことがわかれば、それでいいんだ」

 なぜか疲れたような顔で、天宮くんは手を振った。


「そう? そういえば、天宮くんはどうなの? お父さんやお母さんから、ポイントもらってる?」

 なにげなく質問した、その瞬間。

 ふっ――と。

 ろうそくの火を吹き消すように、天宮くんの顔から、全ての感情が消えた。


「…………」

 ぞわ、と、全身に鳥肌が立った。

 それくらい、天宮くんの変化は急で……怖かったんだ。


「……いや。もらってない」

 冷たくて、固い声。


「いまは親と一緒に住んでないから」


(……え? なんで?)

 中学生が親と一緒に住んでないなんて、おかしくない?

 わたしが知らないだけで、お金持ちの家では、それが普通だったりするの?


(いや、でも。紗彩ちゃんのお父さんは、おもちゃ会社の社長さんだって言ってたよ? 紗彩ちゃんは、両親とお姉ちゃんと一緒に住んでるよ?)


 じゃあ、どうして天宮くんは親と離れて暮らしてるの?

 双子のお兄ちゃんは、いまどこにいるの?……


 聞きたいことが多すぎて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 でも……とても、聞けるような空気じゃない。


「……そっか。うん。わかった」

 わたしはたくさんの疑問を飲み込んで、うなずいた。

 すると、天宮くんは、ふっと笑った。


「……倉地は『なんで?』って、聞かないんだな。おれがおばあちゃんと暮らしてるって知ったやつは、みんな質問攻めにしてきたのに」

 天宮くんは笑ってるけど……その笑顔は、どこか悲しそう。


(天宮くんは、おばあちゃんと暮らしてるんだ)

 わたしは忘れないように、心の中でメモした。


「うん。本当は聞きたいけど……聞かないよ。だって、聞いてほしくないんでしょ?」

「……ああ。少なくとも、いまは……話したくない」

 天宮くんは暗い顔で、うつむいた。


(なんでそんな顔するの)

 胸の中がモヤモヤする。

 辛いことや悩みごとがあるなら、話してほしい。


(天宮くんは、これまで何度もわたしを助けてくれた。わたしに何ができるかわからないけど……わたしだって、天宮くんを助けたいよ)


「……いまはだめでも。いつかは話してもらえるって……期待してもいい?」

 わたしはぎゅっと手をにぎり、勇気を出してたずねた。

 天宮くんは少し考えるように黙ってから、うなずいた。


「……倉地になら、話してもいいけど。おれの事情を聞いたって、楽しくもなんともないぞ。むしろ――」

「楽しくなくてもいいよ。わたしはただ、天宮くんのことが知りたいの」

 わたしは天宮くんの目を見つめて、キッパリ言った。


「…………」

 天宮くんは、驚いたように目を大きくして。


「……ははっ。なんでおれなんかのことを知りたがるんだよ。倉地って、本当に変なやつ」


 そう言って、声を上げて笑った。


(笑った!)

 天宮くんの笑顔は、これまで何度か見てきた。

 でも、声を上げて笑うのを見たのは初めてだ。


「ふふっ」

 嬉しくて、わたしも思わず笑っちゃった。


「――ふむ。ようやく一歩、といったところじゃな」

 天宮くんと笑い合っていると、机の上でハクがなにかつぶやいた。


「ハク、いまなにか言った?」

「いや、少し考えておっただけじゃ。校内で誰かが困っておるようでな」

「えっ、早く言ってよ! もちろん助けに行くよ!!」

 わたしは慌てて立ち上がった。

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