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月蝕の花嫁  作者: 紫苑ユリ
愛されたかった王女
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月を継ぐ者。

精霊王達が、

ミスティリア様へ忠誠を誓った夜。


この出来事は、

帝国中――

いいえ、

やがて大陸中の王国で語り継がれることとなります。


――その夜。


ミスティリア様は、

再び『月影の塔』へ戻られておりました。


「……王になど、

なりたくありません」


「私はただ……

愛されたかっただけなのです」


その小さな声は、

月光に照らされた闇へ、

静かに溶けていったのです。


ミスティリア様は、

寡黙な方でした。


あの方の声は、

人を惑わせる。


そう恐れられていたからです。


ですから、

言葉を交わす相手といえば、

私――エレノアか、

使い魔達くらいのものでした。


ですが、

今夜の出来事があっては、

そうも言ってはいられないのでしょう。


この夜は、

ミスティリア様の運命が、

大きく動き始めた夜だったのです。

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