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月蝕の花嫁  作者: 紫苑ユリ
愛されたかった王女
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優しい怪物

――愛してくれて、

ありがとう。


あの夜の出来事以来、

精霊王達からの言伝もあり、

ミスティリア様は少しずつ公の場へ姿を現されるようになりました。


と言っても、

政へ参加されたり、

週に一度の晩餐会へ出席されるわけではありません。


ミスティリア様は、

よく城下町へ足を運ばれるのです。


ある時は迷子の子供を助け、

またある時は、

居なくなった猫を探し回る。


あの方は、

誰にも知られぬ場所で、

静かに人々を助け続けておられました。


最初、

国民達は皆ミスティリア様を恐れていました。


ですが、

その御姿を見た人々は、

少しずつ気付き始めたのです。


ミスティリア様は、

決して恐ろしい方ではないのだと。


今では、

あの方を慕う国民も少なくありません。


ミスティリア様は、

月影の塔へ閉じ込められた十四年間、

家族からも、

国民からも、

“忌み子”として疎まれ続けてきました。


それでも――


あの方は、

人々を愛することをやめなかったのです。


……愛されたことなど、

一度もなかったというのに。

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