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月蝕の花嫁  作者: 紫苑ユリ
愛されたかった王女
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二つの月

今日は、

月蝕。


ミスティリア様が、

最も嫌われる夜です。


私は知っています。


貴女様の中に、

光と闇、

二つの人格が存在していることを。


光の貴女は、

人々を癒す聖女。


闇の貴女は、

国すら滅ぼしかねない災厄。


月蝕の夜は、

魔力を大きく増幅させます。


それ故に、

強大な魔力を持つ者ほど、

その苦しみは大きいのでしょう。


ミスティリア様の中で、

光と闇が激しくぶつかり合うのです。


月蝕の夜になると、

ミスティリア様はいつも静かに仰います。


「……エレノア。

私はもう眠ります」


「大丈夫だから、

貴女は下がりなさい」


そのお顔は、

今にも壊れてしまいそうなほど苦しげなのに。


それでも、

私へ心配をかけまいと笑ってくださるのです。


……助けて差し上げたい。


ですが、

私には何も出来ません。


その無力さにもどかしさを覚えながら、

今夜も私は祈るのです。


どうか、

ミスティリア様へ、

穏やかな夜が訪れますようにと。

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