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月蝕の花嫁  作者: 紫苑ユリ
愛されたかった王女
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預言の夜

ヴァルディオス様は、

会場中を見渡しながら静かに口を開かれました。


「皆の者、

落ち着いて聞いて欲しい」


「精霊王達が、

この王城へ向かっている」


「我が紫月騎士団が、

皆の安全は保証しよう」


その一言で、

会場は一瞬にして騒然となりました。


精霊王。


それは建国以前より伝承に語られる、

属性を統べる王達。


人の理を超えた存在です。


そして誰かが、

震える声でこう呟いたのです。


「……あの忌み子の災厄だ」


その言葉を皮切りに、

人々は次々と恐怖を口にしました。


「ミスティリア様が呼び寄せた悪魔だ」


「災厄が起こる……」


「帝国が終わるぞ……!」


誰もが怯え、

誰もがミスティリア様を恐れておりました。


――その時でした。


突如、

大広間が眩い光に包まれたのです。


闇。

光。

炎。

水。

氷。

雷。


六つの属性光が、

夜空のように広間を染め上げました。


そして、

ミスティリア様の御前へ現れたのです。


六人の精霊王達が。


会場にいた誰もが、

息を呑みました。


ですが次の瞬間、

更なる衝撃が広がります。


精霊王達が、

一斉に跪いたのです。


そして、

まるで長年探し求めていた存在へ向けるように、

静かにこう告げました。


「――やっと見つけました」


「月を継ぐ者よ」


その瞬間、

会場から悲鳴が上がりました。


精霊王達は、

ミスティリア様へ忠誠を示したのです。


ですが――


私は、

少しだけ嬉しく思ってしまいました。


この会場で唯一、

ミスティリア様のデビュタントを祝福するために訪れたのが、

精霊王達だったのですから。


……いいえ。


私がミスティリア様へお仕えして以来、

あの方が誰かに祝福されたのは、

初めてだったのかもしれません。


ミスティリア様。


どうか、

どうか。


渦巻く闇へ飲まれず、

幸せになってくださいませ。


私――エレノアは、

貴女様が生まれたその日から、

ずっとそう願っております。


――六精霊王が跪く時、

世界は新たな月を迎える。


それは、

建国以前より語り継がれる、

古き預言の一節でした。

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