忌み子のデビュタント
ついに、
その日がやってまいりました。
ミスティリア様の
デビュタントの日でございます。
王城は解放され、
国内外の貴族達を招いた盛大な舞踏会が開かれました。
開催へ反対する勢力も少なくありませんでした。
ですが、
十四年間一度も公の場へ姿を現さなかった
王位継承権第一位――
ミスティリア様へ、
不信感を抱く者もまた多かったのです。
……ずっとあの方を見てきた私には分かります。
ミスティリア様が、
今にも震えてしまいそうなほど不安を抱えていることも。
そして、
人々が恐れるような方ではないことも。
大広間へ現れた瞬間、
会場中の視線がミスティリア様へ注がれました。
誰もが、
その御姿に目を奪われたのです。
ですが――
それを快く思わない方々もおりました。
セレスティア妃、
そして第一王女ルシエラ様です。
国王夫妻にとって、
ミスティリア様は決別の証。
ルシエラ様にとっては、
自らの王位を奪った因縁の相手。
快く受け入れられぬのも、
無理はないのかもしれません。
「あらあら。
忌み子のご登場ですこと」
ルシエラ様は、
慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら仰いました。
「皆様が呪い殺されなければ良いのですけれど……」
まるで、
民を案じる聖女のように。
――その時でした。
突如、
王城の窓を激しく叩く羽音が響いたのです。
黒い羽を散らしながら飛び込んできたのは、
ヴァルディオス様の使い魔――カロン。
普段は冷静沈着なあの使い魔が、
まるで何かに追われるように激しく鳴いておりました。
そして、
カロンから届けられた報せを聞いた瞬間――
ヴァルディオス様の顔色が変わったのです。
「……なんだと?」




