王家の晩餐
国民に王家の不仲を悟られぬよう、
王室では週に一度、
ミスティリア様を除いた皆様で晩餐会が開かれておりました。
そんな日には、
私も給仕として駆り出されるのでございます。
「お母様。
あの忌み子は、なぜまだ生かしておくのです?」
そう口にしたのは、
第一王女ルシエラ様でした。
「公の場にも出ていないのでしょう?
……殺してしまっても構わないのでは?」
あまりにも冷たい言葉に、
私は思わず俯きました。
ですが、
ヴァルディオス様は静かに首を横へ振られたのです。
「それは出来ない」
「忌み子が生まれた瞬間、
空から光が消えた。
建国の初代女王が遺した文献通りだ」
「既に国民達の間でも、
“先祖返り”の噂が広がっている。
……何より、
あの魔力では誰にも手出し出来ん」
セレスティア妃の連れ子であるルシエラ様は、
ミスティリア様を深く憎まれておりました。
ミスティリア様さえ存在しなければ、
幻影帝国の王となるのは、
本来ルシエラ様だったのですから。
一方、
ヴァルディオス様がお連れになった双子の王子――
アレス様は警戒を、
レイン様は蛇のような静かな視線を、
常にミスティリア様へ向けておられました。
そうして月日は流れ、
ミスティリア様はデビュタントの年齢を迎えます。
政略結婚の末に生まれたミスティリア様は、
お二人にとって、
愛した者との別れを思い出させる存在でした。
だからこそ、
月影の塔へ閉じ込められてから十四年間――
国王夫妻があの方へ会いに来ることは
1度たりともなかったのです。




