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月影の塔の姫
幼少期を『月影の塔』で過ごしたミスティリア様は、
それはそれは美しく成長されました。
濡鴉のような艶やかな黒髪。
憂いを帯びた紫水晶色の瞳。
透けてしまいそうなほど白い肌。
美しくも怪しげで、
どこか儚いその御姿に、
人々は魅了され、
同時に恐れたのです。
いつしか塔へ近づく者は、
乳母である私一人となっておりました。
身の回りのお世話から、
勉学、
礼儀作法に至るまで。
私は自分の知る全てを、
ミスティリア様へお教えいたしました。
両親にも、
姉君や王子達にも疎まれ、
“忌み子”として恐れられるあの方へ、
私はいつしか、
母のような感情を抱いていたのかもしれません。
我が幻影帝国では、
魔力こそが全て。
強大な魔力を持つミスティリア様が、
王位継承権第一位となるまで、
そう時間はかかりませんでした。
――王家の均衡が崩れ始めたのは、
これが始まりだったのです。




