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月蝕の花嫁  作者: 紫苑ユリ
月の女神
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月の女神は朝に還る

あのまま、

結局朝まで眠ってしまったらしい。


膝の上で眠っていたはずなのに、

気付けば私は、

ベッドの中でレオニス様の腕に包まれていた。


……結局、

今日も子うさぎのままなのね。


一一


朝食を終えた後。


私は今、

アルセリオン国王の執務室にいた。


……なぜか、

膝の上に乗せられたまま。


アルセリオン国王は、

何事もないような顔で執務を続けている。


だが。


「……ふぅむ」


考え込むたび、

私の頭を撫でてくるのだ。


……レオニス様も同じ。


血は争えないのね。


アルセリオン国王は、

長い間ずっと書類と睨めっこをしていた。


そして――


「父上、

失礼します」


鍛錬を終えたのだろう。


レオニス様が、

執務の相談のため部屋へ入ってきた。


だが。


「っ、父上!?

何をされているのですか!」


レオニス様は、

私を膝へ乗せたままの国王を見て目を見開いた。


「……あまりに愛らしくてな」


真顔で答えるアルセリオン国王。


「子うさぎでも、

俺の婚約者です」


「返していただきます」


そう言って、

レオニス様は半ば強引に私を抱き上げた。


「可愛すぎるのも罪だな」


困ったように笑うレオニス様。


そして、

少しだけ嬉しそうに続けた。


「君が来てから、

皆が変わった」


「白夜王国は“氷の国家”と呼ばれていた」


「感情を表に出さない者ばかりだったのに、

君が来てから皆感情豊かになったんだ」


「国外では、

“白夜王国の氷が溶けた”とまで言われているらしい」


「……全部、

ミスティリアのおかげだ」


いいえ。


変わったのは、

私の方なの。


悲しみと孤独しか知らなかった私へ。


嬉しいこと。


楽しいこと。


幸せなこと。


全部教えてくださったのは、

貴方たちなのだから。


その想いを込めて、

私はレオニス様の胸元へそっと鼻を擦りつけた。


一一


夕食の後、

少し眠ってしまっていた私は、

レオニス様を探して辺りを見回した。


すると。


ソファで書類を広げているレオニス様を見つける。


……こんな遅くまで、

お仕事をされているのね。


疲れた目で書類を見つめるレオニス様。


ソファへ登れない私は、

その足元へ擦り寄った。


「……っ、

起きたのか?」


そう言って抱き上げてくださる。


そして時計を見ると、

小さく息を吐いた。


「もうこんな時間か」


「……ベッドへ行こう」


そうしてレオニス様は仕事を切り上げ、

私を抱いたまま寝室へ向かったのだった。


一一


その夜も、

私はレオニス様の胸元へ寄り添って眠った。


そして――


朝日で目を覚ます。


「……んっ」


……声が出た?


そう思って手を見ると、

私は人間の姿へ戻っていた。


……やった、

戻ったわ!


そう安堵した、

次の瞬間だった。


……何も着ていない。


一糸纏わぬ姿の自分に気付き、

私は慌ててレオニス様から離れた。


近くにあった布を必死に引き寄せ、

身体を隠しながら彼を揺する。


「レオニス様!

起きてください!」


「……ん、

ミスティリア?おはよう」


「どうしたんだ、

そんなに慌て――」


そこまで言って、

レオニス様の動きが止まった。


「っ……

姿が戻ったのか!?」


「目を開けないでください!」


そう叫ぶが、

もう遅かった。


「っ、すまない!」


レオニス様は慌てて顔を逸らす。


「そうか……

うさぎの時は服を着ていなかったんだな……」


そう呟くと、

自分の服を持ってきてくださった。


一一


「ごめんなさい、

驚かせてしまって……」


そう謝ると、

レオニス様はほっとしたように微笑んだ。


「……姿が戻って良かった」


「やっぱり、

こっちの方がいい」


そう言って。


レオニス様は、

私の髪へ優しく口付けを落としたのだった。

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