王座の密談
「お初にお目にかかります」
「幻影帝国第二王女、
ミスティリア・ノクスと申します」
ミスティリアが姿を現した瞬間。
玉座の間にいた者達が、
一斉に息を呑む音が聞こえた。
……噂で聞いていた。
“忌み子”
“怪物”
だが。
目の前にいる少女は、
そんな言葉とはあまりにもかけ離れていた。
月光のような銀髪。
儚く光を宿す黄金の瞳。
神話から現れた存在のような、
神々しさ。
その場にいた誰もが、
噂が事実無根であると悟ったかのようだった。
「……顔をお上げください、
ミスティリア王女」
父――アルセリオン国王が、
静かに口を開く。
「驚きました」
「噂とは、
これほど違うものなのですね」
「何にせよ、
遠路はるばるよくいらっしゃいました」
「長旅でお疲れでしょう。
本日は私室にてお休みください」
ミスティリアは、
優雅に一礼した。
「歓迎のお言葉、
感謝いたします」
「では、
お言葉に甘えさせていただきます」
そうして彼女が退室した後――
俺は再び、
玉座の間へ戻っていた。
ここは、
玉座の間奥に存在する“王座の間”。
国王が政務や儀式を行う際に使う、
王家の中心とも言える大広間だ。
今ここにいるのは、
アルセリオン国王。
王妃フローリア。
セルフィーナ。
そして俺の四人のみ。
「……十四年間、
塔へ閉じ込められていた“月影の姫君”」
セルフィーナが、
小さく呟いた。
フローリア妃は、
どこか考え込むように目を細める。
「……あの子から、
確かに闇の力を感じたわ」
「でも、
禍々しいものではない」
「静かに全てを覆うような……
深く、
穏やかな闇」
俺は強く拳を握り締めた。
「彼女は怪物でも、
忌み子でもありません」
「俺は……
彼女ほど清らかな人を、
見たことなどない」
その瞬間だった。
「――人の子よ」
「面白そうな話をしているな」
空気が、
凍り付く。
影が蠢いた。
そして次の瞬間、
漆黒の闇の中から一人の男が姿を現したのだ。
紫色の瞳。
漆黒の衣。
圧倒的な魔力。
「っ……!?」
「なぜここに……!
どこから現れた!?」
白銀聖騎士団が剣へ手を掛ける。
だが男は、
気だるげに笑った。
「精霊は、
見えないだけでどこにでもいる」
「普段はミスティリアから離れることなど無いが……」
「眠っている間に、
危険が無いか見て回っていたのだ」
その場にいた全員が悟る。
……この存在は、
人間ではない。
「まさか……
精霊王……!?」
「あぁ」
「我ら精霊王は、
本来人前へ姿を現さない」
「――ミスティリアを除いてな」
ノクティスは、
紫色の瞳で俺達を見下ろした。
「なぜ精霊王達がミスティリアに執着するか」
「なぜミスティリアが、
“忌み子”と呼ばれ、
疎まれ続けたのか」
「……知りたいのだろう?」




