花に触れる王
契約を結んだ我らは、
魂で繋がった。
……だが。
ミスティリアは、
“王”ではなく、
ただのミスティリアとして扱われることを望んだ。
「契約をしたのだから、
私達は対等でしょう……?」
「堅苦しく話すのは、
やめてほしいの」
――そう言って、
困ったように笑うのだ。
あの白い王子が、
ミスティリアへこう尋ねた時もそうだ。
「大陸中が、
貴女の話をしています」
「疎まれ続けた月蝕の王は、
人間へ刃を向けるのではと……」
……思わず、
姿を現そうかと思った。
魂で繋がっているから分かる。
ミスティリアから怒りは感じない。
あったのは、
深い悲しみだけだった。
あの白い王子が帰る時、
セラフィナの奴が何かしていたようだが、
俺には関係ない。
俺はただ、
ミスティリアの影で見守るのみ。
ミスティリアは今日も、
花へ水をやっていた。
「そんなチマチマしなくとも、
ネレイアに任せれば一瞬だろう」
魂へ直接問いかける。
するとミスティリアは、
小さく笑って答えた。
「私が直接触れ合いたいの」
「花も、
生きているから」
……どうしようもない。
だから乳母に殺されかけ、
自ら死ぬことになるのだ。
……だが。
だからこそ、
目が離せない。
「人間界に疲れたら、
我らのいる星幽界へ来ればいい」
「皆、
ミスティリアを受け入れる」
すると彼女は、
少し寂しそうに微笑んだ。
「ありがとう、ノクティス」
「本当に居場所が無くなってしまったら、
連れて行ってとお願いするかもね……」
「……でも」
「今行ってしまったら、
きっと戻れない気がするの」
……何故だ。
あれほど人間達に傷付けられながら、
何故まだ人間であろうとする。
その気になれば、
報いなど容易く与えられるというのに。
……だが。
だからこそ、
こいつは美しい。
欲しい。
欲しい。
俺の魂が、
渇望しているのが分かる。
……闇へ閉じ込めてしまえば。
こいつは、
俺だけのものになるのか――




