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微笑み
会いたい。
……彼女に。
白夜王国は、
一度幻影帝国へ攻め込んだ。
月蝕の王となった彼女の力なら、
この国を滅ぼすことなど容易いだろう。
国民達は今も、
幻影帝国の脅威に怯えている。
……それでも。
会いたかった。
一目でいい。
彼女に。
俺は父――
アルセリオンへ頭を下げた。
「どうか、
彼女へ会いに行く許可をいただけないでしょうか」
「国へ戻った後は、
父上の命令を全て聞きます」
父はしばらく黙っていたが、
やがて静かに口を開いた。
「……敵情視察だ」
――そうして再び、
俺は幻影帝国へ足を踏み入れることとなった。
帝国は、
表向きは快く俺を迎え入れた。
だが、
俺の心は落ち着かなかった。
彼女を探し、
王城の貴賓室を抜け出し、
当てもなく城内を彷徨う。
……そして。
白薔薇の君は、
初めて言葉を交わしたあの場所にいた。
だが、
かつての彼女ではなかった。
濡鴉のような黒髪も。
紫水晶のような瞳も。
もう存在しない。
月光と星屑を散りばめたような銀髪。
儚い光を宿す黄金の瞳。
彼女は、
もう“少女”ではなくなっていた。
周囲に漂う、
精霊王達の気配。
抑えきれぬほど溢れ出す、
強大な魔力。
俺は理解した。
――これが、
“月蝕の王”
なのだと。
それでも。
口から零れたのは、
王への敬称ではなかった。
「……ミスティリア」
振り返った彼女は、
あの時と同じように微笑んだ




