銀の短剣
「……ねぇ、エレノア」
「お前には弟がいたわよね?」
「……言いたいこと、
分かるでしょう?」
ルシエラ様がそう仰った瞬間、
皆様の視線が一斉にこちらへ向けられました。
……まるで、
生きた心地が致しませんでした。
「そんな……
そんなこと、
私には出来ません……!」
「どうか……
どうかお考え直しください……!」
「ミスティリア様は、
忌み子でも怪物でもありません……!」
「あの方は、
ただ――」
「愛することを、
やめられないだけなのです……!!」
私の悲痛な叫びが、
この方々へ届くことはありませんでした。
ルシエラ様は、
まるで哀れなものを見るように微笑まれます。
「可哀想に」
「お前まで、
あの忌み子に魅了されてしまったのね」
「その呪いから逃れるためにも、
ミスティリアを殺しなさい」
そして、
ルシエラ様は静かに続けられたのです。
「もし失敗したら――」
「お前の命も、
弟一家の命も無いと思いなさい」
「……あぁ、
この前生まれた赤子も、
もちろん例外ではないわ」
……大好きな、
ミスティリア様。
どうか、
愚かな私をお許しください。
血の繋がった、
たった一人の家族を人質に取られ、
私は――
貴女様を、
お守りすることが出来なかった。
すると、
それまで静かに見守っていたセレスティア様が、
淡々と口を開かれました。
「次の月蝕」
「あの子の力が最も弱まる夜に、
この銀の短剣で胸を突き刺しなさい」
――差し出されたのは、
美しい装飾が施された銀の短剣でした。
……あぁ。
もう、
後戻りは出来ないのですね。




