第4話 銀髪の女騎士リリアーナは、どこか上の空
ラスト2話ですー
豪華絢爛な舞踏会だ。
磨き上げられた黒タイルの上を、優雅な音楽に合わせ、色とりどりのドレスがクルクルと回っている。
「こんなんでしたっけ、ここ。」
「全部作り直したんだよ。大変だったんだから。」
二年前の、王妃との最終決戦の舞台がここだった。
その傷を隠し、赤と金の幕が、その場を包む。
新たな王の誕生を祝い、その場には国内外の権力者が集まっていた。
リリアーナとエルネンは、壁にもたれ、それをボーッと眺めていた。
「アルビラのことは、聞いたかい。」
「逃げられたと聞きましたが。」
剣を突きつける兄たちから、母を守る為に、魔法で抵抗したという。
「ステラたちのところにいるよ。本当に、何も聞いてないんだね。」
大変だったんだから。エルネンはまたそう呟いた。
***
美しい舞踏場は、めちゃくちゃに壊されていった。
魔法陣が覆った場所は抉れ、跳ね返った武器たちが壁に突き刺さる。
最後は王宮の魔法使いとステラの魔法合戦で、他はそれを見守ることしかできなかった。
「お前ごと、斬り捨てることになるぞ。」
次期国王は、剣先を王女へ向けた。最愛の妹すら失う覚悟はできていたのだ。
それを庇ったのは、アリストラだった。
「アリストラ。いいのよ、もう。」
「いいえ、王女様。俺はここで本気を出してみたくなったのです。」
舞踏場は、大量の魔法陣で埋め尽くされた。
***
「結局、ステラに抑え込まれたんだけど。」
「情けないやつ。」
リリアーナは、クスクスと笑った。
「陛下は、手を貸してくれたステラの顔を立てて、僕たちを見逃してくれたんだよ。」
二人は玉座に視線を合わせた。
妃の座は、まだ空席だ。
王テオールは、華が群がるミツバチだ。不機嫌そうな顔を隠しもせず、着飾る女たちを手で払っている。
それを、クレマチスがニヤニヤと見ていた。
「兄上は、北部から帰ってこないのかと思ったよ。」
エルネンは、ホッと息をついている。
兄の首筋に刃を突きつけ、逃げられるよう交渉したことは語らない。
北部が落ち着くまでエルネンが王都を守ることも、テオールが出した条件の一つだった。
「そういえば、アリスは?」
「その時アルビラを連れていって、そのままだよ。」
ステラは、久々の戦闘に腰を痛めてしまった。引退を決意し、後継者を育てている。
「君たちは、自分の仕事が何だったのかを忘れてしまったようだね。こんなところに僕を二年も放っておいて。」
「こんなところって。これから行くのは戦争の終わらない、極寒の地ですよ。」
「どこでも良いと言っただろう。忘れてしまったのかい。」
「……なんのことですか。」
リリアーナは、咄嗟に覚えていないフリをした。舞踏場の飾り付けが、やけにキラキラ光って見えた。
辛い戦場の、心の支えだった。寒空の下、星を見る度なんども思い出した。
忘れるはずがなかった。
何度聞かれても、同じ返事を返すだろう。
君と一緒なら——
読んでくれた方、ありがとございます。最終話も、よければお願いいたしますー




