第2話 銀髪の女騎士リリアーナは、当て馬の意味を知らない
ラスト4話ですー
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アリストラが読んだ小説というのは、イリヤ・エリオールが生き返ってから物語が始まるらしい。
死に戻りだ。
「ヒロインだけが時が巻き戻ったことを知っていて、恩を返すためにその王子様を支えるんだ。」
そのヒロインに、一目会いたいのだと言う。
「二人は結ばれて、ハッピーエンドなの?」
「隻眼の王子は、途中で死んでしまうんだ。主君を死なせてしまったヒロインと、親友を失った兄王子が、二人でその傷を乗り越えて、成長するんだよ。」
この見習い魔法使いは、前回も今回も女に囲まれて育ち、ラブロマンスが好きなのだった。
「隻眼の王子様が、可哀想じゃない?」
「当て馬だからなあ。」
「馬……?」
***
「……当て馬って、なんだ。」
——ブルルルッ
黒毛の軍馬、メリーさんは地面に滑ったのを誤魔化すように鼻を鳴らした。
もう、二年の付き合いになる。労いを込めて、たてがみを撫でた。
「やっと休めるよ。」
リリアーナは、剣を収めて右目を擦った。
たしかアリストラの話では、隻眼の王子は見えない死角からの攻撃を受け、死んでしまうはずだ。
イリヤ・エリオールめ。
「私なら、きっとそんなヘマはしないのに。」
日が差して、妙に暖かい日だった。雪は溶け始め、地面は水たまりだらけでドロドロだ。
白旗は、攻め入る寸前に上げられた。
敵地城門の前で、泥だらけの第二騎士団たちは、それを考え深げに眺めていた。
「これで、長く続いた戦争も終わりですね。」
「どうかな。」
「まだ、争い足りないのですか。」
早々に冑を外し、やれやれとこちらに引き返してきたのは、テオールと、クレマチスだった。
リリアーナは、ホッと声をかけた。
「戦勝に、間に合って良かったですね。」
クレマチスの怪我は、今日の戦いぶりからして治ったようだ。そして、無事終戦。
「これで、愛する妻のもとに帰れる。」
テオールは、幸せそうな友人に眉を顰めた。
「俺と戦場に立つより大切なことか。」
「それはもちろん。」
第一王子は、意地悪な義理母たちのせいで女嫌いなのだ。
「俺も、王都に戻ろうかな。」
「もちろんですよ。戻らないわけにいかないでしょうが。だいたい……」
第一王子は汗を拭って、小言を無視している。
強くて爽やかな、この国の英雄。
ふと、疑問に思った。
もし、隻眼の王子が死ななければ、この王子は誰と結ばれるのだろうか。
「——殿下。」
考え事はしていたが、気が緩んでいたわけではなかった。それはやはり、死角で起きた出来事だから、反応が遅れたのだ。
地面に転がっていた敵の兵士が、テオールに槍を突き上げるのに気がついた。
咄嗟に王子の体を引き寄せ、自分の体を盾にした。
「——リリア!」
ボタタっと、地面に赤い水溜まりが出来た。
銀髪の騎士は、バシャっとその上に倒れ込んだ。
読んでいただきありがとうございました。残りもう少しなので、よければ続きもお願いいたしますー




