第1話 銀髪の女騎士リリアーナは、あの日に思いを馳せる
最終章、ラスト5話です。
——ハァ。
吐いたため息は白く凍り、夜空に消えた。
王子は、すぐそこにある湖を目指して、ザクザクと雪を踏みつけた。
「リリア。またそんなところに一人でいるのか。」
「今日は寒くて天気が良いので、星が綺麗に見えるのですよ。」
ここは、彼女のお気に入りの場所だった。
湖の中心は凍らず、星が映るのだ。
夜に光る砂漠が空から足元まで撒き散らされ、女は、ほとりにポツンと座っていた。
晴れた夜は、必ず一人で星を眺めていた。
「やっと帰れますね、テオール王子殿下。」
あのあと、反逆の王女はすぐには北部の党首とは認められず、周りの国々と戦うことになった。
リリアーナは、王女の兵と第二騎士団とでこの国境を守った。
北部を動けず、その年から数えて、三度目の冬を迎えることになった。
「もう、王子ではないさ。」
「では、なんとお呼びすればいいのですか。」
何度このやり取りをさせるんですかと、リリアーナは雪玉を湖に放った。
ハイラル王国での王子対王妃の戦いは、王子たちが勝利した。
王妃と、王妃側の勢力を全て粛清した後、テオールは戴冠式もせず北部に舞い戻り、戦場に立ちつづけていた。
「……もしかして、帰りたくないのですか。」
北部の国々とは、あらかた戦った。次が最後だと、皆は意気込んでいた。
「俺には戦場が合っているんだよ。ここは、完全には静かにはならない。そういう場所なんだ。」
王としての役割は、今は第二王子エルネンが全て引き受けている。
「……王位をエルネン様に譲り、北部を守るためにここに残るということですか。」
リリアーナは、凍りついたまつ毛を持ち上げ、目を丸くしていた。
雪原で剣を振る銀髪の騎士は、自由で、強く、冬の精霊のようだと言われていた。
「力を貸してくれるのは、三年だけだと聞いた。そのあとは、ステラの下に帰るのか?」
「いえ、それはエルネン様の護衛として……。」
そういえば、もうすぐ三年になるのですねと呟いた。
月は低くて、小さな星たちが空を占拠する夜だった。
「殿下と過ごした時間の方が、長くなってしまいましたね。」
リリアーナは、怪我で戦線を離脱したクレマチスの代わりに、テオールの隣で戦った。
テオールは、リリアーナの死角を守る様に、いつも右側に立った。
息の合った二人だった。
満天の星だ。キラッと一つが流れた。
「リリア。俺と一緒に、ここに残ってくれないか。」
「あ、今の見ましたか?流れ星。」
「聞いてたか、今のは。」
彼女は、自分の両手にフーッと息を吹き込んだ。いつからいたのだろう、耳と鼻は赤く染まっていた。
晴れた夜は、必ず星を眺めていた。
「はぁ、会いたいなあ。」
もうちょいで完結です。読んでくれた方、いらっしゃるのでしょうか。続きもよければお願いいたします。




