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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
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第13話 魔法使いアリストラは、赤髪が好き

読んでいただきありがとうございます。第六章最終話です。

***


「力が欲しいか。」


 子供の棺桶を前に泣き伏せる王妃のもとに現れたのは、赤い髪が美しい魔女だった。


 不敵な笑みを浮かべる魔女を、王妃は見つめ、頷いた。


 その瞳は、復讐に燃えていた。


***

 

 結局、オリビアが王妃に力を貸した理由は分からなかった。単なる気まぐれだったのかもしれない。


「きっと転生したとしても、迷惑をかけているに違いないな。」


 アリストラは、独り言を呟いた。


 しかし、そのような生き方も羨ましい。


 ロッタ王国の、王女による反逆は成功した。


 城では、王が武装して娘を待ち構えていたらしい。親子の一騎打ちによる勝負で、玉座は王女のものになった。


 戦い好きの、王らしい最期だった。


「私は、ここに残るよ。」


 王子達は、急ぎ、もうここを立った後だった。


 ハイラル王国の王は崩御したとされ、王妃の派閥と王子たちは、やはり戦うことになった。


 第二騎士団の一部が北部に残っているが、リリアーナも一緒に残り、北部を守ると言う。


「テッセン卿のことが、心配なので。」


「どうしてこの間から、私のことを気にかけてくれるのかな。」


「私はあなたを救って、運命を変えたいのです。」


 リリアーナは笑って、城の門を開けた。


 助太刀に行く、魔女たちを見送る。


 空はチラチラと粉雪を落とし、地面はうっすらと雪が積もっていた。


 白いローブの集団はその中に消えようと、妹弟子に、手を振った。


「好きにしたらいいさ。私が縛るものは、もうないわ。」


「いいなあ。ステラ、俺の鎖は。」


「あんたはまだダメ。」


 リリアーナの鎖は、魔法を使ったときに外れてそのままだった。


 ステラは、オリビアの責任を取って力を貸すようだ。それとも、王子たちのことを気に入ったのかもしれなかった。


「……アリス。」


 サクサクと、霜雪の上を歩き出した魔女たち。


 リリアーナは、俺のことを呼び止めた。


 雪は粒をだんだん大きくして、頭の上で溶けた。彼女は、それを気にもしない。


 寒いのが、苦手なのに。


「小説とは、内容が変わってきているんじゃないの。どうなの。」


「それは、分からないな。自信がなくなってきたよ。」


 時が経つにつれて徐々に、前の世界の記憶を思い出せなくなっていた。


 小説の内容も曖昧になるにつれて、イリヤ・エリオールに一目会いたいと言う目標も、曖昧になっていった。


 それが、自分を見失う様で、怖かった。


「私が言いたいのは、ここがアリスの知っている世界なのか、それに迷い込んでしまったのか分からないけど。」


 リリアーナとは、お互いオリビアに拾われてからずっと一緒に過ごしてきた。そういえば、こんなに離れることになるのは、初めてかもしれない。


 不安なときは、いつもそばにいてくれた。


「そろそろ、この世界での人生を真剣に生きてみたらどうってことだよ。ステラの一番弟子、アリストラとしての。」


 今世での、新たな目標が必要なのかもしれない。ステラの傭兵団には、後継者が必要だった。


 向こうでステラたちが、俺のことを呼んでいる。


「リリー、俺がいなくても大丈夫か?」


「大丈夫。エルネン様を頼んだよ。」


 人見知りで臆病な女の子は、もうそこにはいなかった。


 片目を失った銀髪の剣士は、戦友の背中を押して、見送った。

 


読んでいただきありがとうございました。次の章が、最終章になります。ラスト5話、よろしければお願いいたします。

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