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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
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第12話 アリストラの決着

***


 アリストラが前世の記憶を思い出したのは、幼いある日のことだった。


 突如戦争に巻き込まれ、一晩で瓦礫と化した町に、呆然と立ちすくんでいた。


 石畳に、魔法陣が未だ燻っている。


(……これ、なんの匂いだっけなあ。)


 町をめちゃくちゃに荒らした魔女たちが、ここから立ち去るところだった。


 一人が、声をかけてきた。


「少年、魔法に興味があるのかい。ステラ、この子連れて行こうよ。」


 ここには置いていけないよと、若い魔女が言った。


「男はいらないよ。」


「じゃあ、私の弟子にするから。だったらいいでしょ。」


 年嵩の魔女は、やれやれと首を振ると、先へ行ってしまった。


「君、名前はなんで言うの。」


 茶色い瞳が暖かくて、赤い髪が美しい人だった。


(……あ、思い出した。これ、ファンヒーターの匂いだ。)


 ピーローリーローリ〜ロリ〜


 頭の中で音楽が鳴り、冷たいフローリングの感触が、蘇った。


「有栖寅次郎です。」


 彼女は笑って、手を差し出した。


「いい名前だね。」


 この世界が、かつて読んだ小説の中だと気がついたのは、それからしばらく後のことだった。


***

 

 彼女の足元にころがる、飾り布のついた短剣を見下ろした。


「……オリビア。」


 師匠から弟子たちへの、プレゼントだった。

 

 まったく冷たい人だとか、悪人だとか、そういうわけではなかった。ただ、持て余した力を何に使うべきなのか、ずっと探し続けていた。


「アリス、無事かい。」


「はい、エルネン様も無事でよかった。」


 駆け寄ってきた王子は、ボロボロだった。


「全く、今日は護衛どころではありませんでしたね。」


 エルネンは笑って、焼けて小さくなったマントをヒラヒラと風に流した。


「ステラ、行きましょう。」


 魔女たちが集まってきた。残りはまだ、城の中にいる。

 

 最強の魔女は、背中を丸め、項垂れていた。


「……オリビア。私の愛しい娘。」


 その匂いを、戦場に探した。


『きっと、いい魔法使いになるよ。私みたいにね。』


 まったく、誰がいい魔法使いだよ。ほんと、テキトーなんだから。


 思い出して、笑ってしまった。


「……俺たちが、いるではありませんか。」


 鼻を啜ると、耳がキンと痛んだ。


 雲の切れ間から、光が差し込んでいる。城からは喚声が聞こえ、旗が上がった。

  

「それにしても、師匠はどうしてここにいたんだろうなあ。」


「王妃が、僕たちをいっぺんに片付けるために寄越したんだろう。」


 二人の王子を狙ったのだ。


 エルネンは、首を傾げた。


「オリビアは、一体なにが目的で王妃に手を貸していたんだろうね。」


「どうせ、力が欲しいか。とか何とか言って、近づいたのでしょう。こういうことに、首を突っ込むのが好きなのです。」


「ドラゴンみたいな人だな。」


「あ、その瞳。似合っていますよ。」


「そう?」


 エルネンは、目を瞬いた。そんなことよりと、キョロキョロとリリアーナを探し始めた時だ。


 城から、戦勝の王子や王女が出てきて——


「行くぞ、エルネン。」


「ちょっと、休みたいなあ。」


 そのまま王子たちは、とんぼ返りで王都へ戻った。


読んでいただきありがとうございます。次話、6章最終話です。よろしければ、続きもお願いいたします。

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