第12話 アリストラの決着
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アリストラが前世の記憶を思い出したのは、幼いある日のことだった。
突如戦争に巻き込まれ、一晩で瓦礫と化した町に、呆然と立ちすくんでいた。
石畳に、魔法陣が未だ燻っている。
(……これ、なんの匂いだっけなあ。)
町をめちゃくちゃに荒らした魔女たちが、ここから立ち去るところだった。
一人が、声をかけてきた。
「少年、魔法に興味があるのかい。ステラ、この子連れて行こうよ。」
ここには置いていけないよと、若い魔女が言った。
「男はいらないよ。」
「じゃあ、私の弟子にするから。だったらいいでしょ。」
年嵩の魔女は、やれやれと首を振ると、先へ行ってしまった。
「君、名前はなんで言うの。」
茶色い瞳が暖かくて、赤い髪が美しい人だった。
(……あ、思い出した。これ、ファンヒーターの匂いだ。)
ピーローリーローリ〜ロリ〜
頭の中で音楽が鳴り、冷たいフローリングの感触が、蘇った。
「有栖寅次郎です。」
彼女は笑って、手を差し出した。
「いい名前だね。」
この世界が、かつて読んだ小説の中だと気がついたのは、それからしばらく後のことだった。
***
彼女の足元にころがる、飾り布のついた短剣を見下ろした。
「……オリビア。」
師匠から弟子たちへの、プレゼントだった。
まったく冷たい人だとか、悪人だとか、そういうわけではなかった。ただ、持て余した力を何に使うべきなのか、ずっと探し続けていた。
「アリス、無事かい。」
「はい、エルネン様も無事でよかった。」
駆け寄ってきた王子は、ボロボロだった。
「全く、今日は護衛どころではありませんでしたね。」
エルネンは笑って、焼けて小さくなったマントをヒラヒラと風に流した。
「ステラ、行きましょう。」
魔女たちが集まってきた。残りはまだ、城の中にいる。
最強の魔女は、背中を丸め、項垂れていた。
「……オリビア。私の愛しい娘。」
その匂いを、戦場に探した。
『きっと、いい魔法使いになるよ。私みたいにね。』
まったく、誰がいい魔法使いだよ。ほんと、テキトーなんだから。
思い出して、笑ってしまった。
「……俺たちが、いるではありませんか。」
鼻を啜ると、耳がキンと痛んだ。
雲の切れ間から、光が差し込んでいる。城からは喚声が聞こえ、旗が上がった。
「それにしても、師匠はどうしてここにいたんだろうなあ。」
「王妃が、僕たちをいっぺんに片付けるために寄越したんだろう。」
二人の王子を狙ったのだ。
エルネンは、首を傾げた。
「オリビアは、一体なにが目的で王妃に手を貸していたんだろうね。」
「どうせ、力が欲しいか。とか何とか言って、近づいたのでしょう。こういうことに、首を突っ込むのが好きなのです。」
「ドラゴンみたいな人だな。」
「あ、その瞳。似合っていますよ。」
「そう?」
エルネンは、目を瞬いた。そんなことよりと、キョロキョロとリリアーナを探し始めた時だ。
城から、戦勝の王子や王女が出てきて——
「行くぞ、エルネン。」
「ちょっと、休みたいなあ。」
そのまま王子たちは、とんぼ返りで王都へ戻った。
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