第11話 リリアーナの決着
リリアーナは、パチっと目を覚ました。
「……はー。死んだかと思った。」
曇り空からは、遠くまで打ち上げられていたらしい土やら枝やらが、雪を纏い、ボトボトと落ちてきていた。
背中には、冷たい階段。半ばまで転げ落ちたらしい。下はまだ騒がしいが、上はなんだか、静かだ。
決着は、ついたのだろうか。
「いててててて。」
全身を打ったのだろう。鈍い痛みに耐えながら上体を起こすと、被さっていたカインが、膝の上でゴロンと仰向けに転がった。
腹には、剣が貫通している。
「どうか、安らかに。」
ソッと、手を握った。そして、おでこをくっつけた。
あの時、してもらったように。
「俺の負けか。」
「え。」
驚いた。顔が近くなければ聞き取れなかったはずだ。
しかし、うっすら開いた瞳は、もう一つの方も光を失うところだった。
「……怖くはないですか。」
「いいや。君の話を、信じている。」
転生だ。
この話をしたのは、二年前。ドラゴンを倒した後のことだった。
***
二人で倒したそのドラゴンは、左右で瞳の色が違った。二つの魔法を持っていたのだ。
片方をカインが、もう片方をリリアーナが、剣で突き刺した。
隊は壊滅状態で、負傷者を森に転がしたまま、一晩助けを待つことになった。
「リリア、目が渦を巻いてるぞ。大丈夫か。」
「……目が回る。」
リリアーナに宿ったドラゴンの魔法は、すでに体の中にあったステラの魔法と相性が悪いらしい。
カインは苦しむ彼女を抱き抱え、夜を過ごした。
騎士たちの呻き声は、日が沈めばあっさりとイビキに変わった。
「まったく、たくましい仲間たちだな。」
リリアーナは、それを聞いて笑った。
眠らないように、必死に目を瞬いた。揺れる視界に酔いながら、星の数を数え続けた。
王子は私の顔を、不安そうに覗き込んだ。
その美しい瞳を、星に数えた。
「このまま、時が止まればいいのに。」
「そんなに辛いのか。」
「いいえ、殿下と別れるのが惜しくて。」
ギュッと手を握ると、痛いくらいに握り返された。
***
あれから何度も、その夜を思い出した。
「だから、大丈夫だ。」
リリアーナは、小さく笑った。
「では、地獄でまた会いましょうとかも、ないですね。」
カインは、別の世界へ旅立つ——
「そうだな。これで、さよならだ。」
空から落ちる土は、だんだんと白く変わる。フワフワと、速度を落とした。
あの時、本当に時が止まってもよかった。
「さようなら、私の王子様。」
繋いだ手に、冷たい雪が落ちた。




