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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
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第11話 リリアーナの決着

 リリアーナは、パチっと目を覚ました。


「……はー。死んだかと思った。」


 曇り空からは、遠くまで打ち上げられていたらしい土やら枝やらが、雪を纏い、ボトボトと落ちてきていた。


 背中には、冷たい階段。半ばまで転げ落ちたらしい。下はまだ騒がしいが、上はなんだか、静かだ。


 決着は、ついたのだろうか。


「いててててて。」


 全身を打ったのだろう。鈍い痛みに耐えながら上体を起こすと、被さっていたカインが、膝の上でゴロンと仰向けに転がった。


 腹には、剣が貫通している。


「どうか、安らかに。」


 ソッと、手を握った。そして、おでこをくっつけた。


 あの時、してもらったように。


「俺の負けか。」


「え。」


 驚いた。顔が近くなければ聞き取れなかったはずだ。


 しかし、うっすら開いた瞳は、もう一つの方も光を失うところだった。


「……怖くはないですか。」


「いいや。君の話を、信じている。」


 転生だ。


 この話をしたのは、二年前。ドラゴンを倒した後のことだった。


***


 二人で倒したそのドラゴンは、左右で瞳の色が違った。二つの魔法を持っていたのだ。


 片方をカインが、もう片方をリリアーナが、剣で突き刺した。


 隊は壊滅状態で、負傷者を森に転がしたまま、一晩助けを待つことになった。


「リリア、目が渦を巻いてるぞ。大丈夫か。」


「……目が回る。」


 リリアーナに宿ったドラゴンの魔法は、すでに体の中にあったステラの魔法と相性が悪いらしい。


 カインは苦しむ彼女を抱き抱え、夜を過ごした。


 騎士たちの呻き声は、日が沈めばあっさりとイビキに変わった。


「まったく、たくましい仲間たちだな。」


 リリアーナは、それを聞いて笑った。


 眠らないように、必死に目を瞬いた。揺れる視界に酔いながら、星の数を数え続けた。


 王子は私の顔を、不安そうに覗き込んだ。


 その美しい瞳を、星に数えた。


「このまま、時が止まればいいのに。」


「そんなに辛いのか。」


「いいえ、殿下と別れるのが惜しくて。」


 ギュッと手を握ると、痛いくらいに握り返された。


***


 あれから何度も、その夜を思い出した。


「だから、大丈夫だ。」


 リリアーナは、小さく笑った。


「では、地獄でまた会いましょうとかも、ないですね。」


 カインは、別の世界へ旅立つ——


「そうだな。これで、さよならだ。」


 空から落ちる土は、だんだんと白く変わる。フワフワと、速度を落とした。


 あの時、本当に時が止まってもよかった。


「さようなら、私の王子様。」


 繋いだ手に、冷たい雪が落ちた。


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