表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
PR
64/67

第10話 時の魔法

 頭の中は、全て読まれてしまうのだろうか?


 荘厳で美しいドラゴンは、しつこくて、おしゃべりだった。


「ここか?」


 突然、フーッと吹き付けられた暗い炎は、窓から差し込む、沈みかけの夕日に変わった。


 エルネンは、執務室に立っていた。


 二年前の、あの日だ。


 イリヤを抱きかかえ、泣き崩れる自分を見下ろした。


 刺した短剣は、亡き姉から貰ったものだった。手で弄んでいる時に、偶然イリヤが襲ってきたのだった。


 それは、偶然だったのだろうか。


「それとも。」


 床に広がる赤い血は、気がつけば上質なカーペットに変わる。


 派手で、広い寝室。大きなベッドの上で、痩せた女が、息を引き取るところだった。


 母だ。


 飲んだ毒は即効性ではなく、長く苦しんだ。


 さらに幼い自分は、また、涙を流していた。悲しかったかは思い出せない。


 腹違いの兄を殺し、王妃との女の戦いを先に始めたのは、自分の母だった。


「イリヤ・エリオールが、お前を裏切った理由を知りたくはないか?」


「ドラゴンがこんなに俗世的で悪趣味だとは、驚いたよ。」


 次に現れた場面は、見たことがないものだった。


 母の若い頃だ。


 王の寵愛を受けた傲慢なお姫様は、何の無礼を働いたのかわからないが、目の前にいるメイドを騎士に切り捨てさせた。


 背の高い、赤い癖毛のメイド。


 エルネンは、このメイドが、母親か姉か、イリヤの血縁者であることが一目で分かった。


「そして、王妃に手引きされて、復讐のためにお前に近づいたんだ。ここからやり直すか?」


 陳腐な復讐劇だ。しかし、人はそれに人生を捧げる。


「遡り出すとキリがないからな。王が、侵略した国からお前の母親を、無理矢理連れて来るところまで戻るか?」


 首を振った。


「泣くなよ、悪かったって。それよりは、こっちの方が健全だって言いたかったんだ。」


 伏せた目を、ゆっくり持ち上げた。すると、丸くて赤い瞳に、覗き込まれていた。


「泣いてるの?大丈夫?」


 話しかけられた。もしかしてもう、過去に戻ったのだろうか。


 森の中。薄気味悪い城の前だ。


「その人は王子様よ。言葉遣いを正しなさい。」


 赤い瞳の少年は、頭を叩かれた。


 二年前のアリストラは、小柄で、この時は僕と同じくらいの身長だったらしい。


「この子たちは、きっと役に立ちますわ。」


 ステラは、腕を組んで山を見上げた。


 これから一行は、ドラゴンの討伐に山へ入るところだった。


 兄テオールに、北部へ呼び出されたのを無視すれば、エルネンも同行するはずだったのだ。


 後ろには、若い第二騎士団達が並ぶが、クレマチスの姿がない。代わりに、第一王子の元へ向かったのだろう。


「この子たち?」


 隣に立っていたカインが聞いた。変声期特有の、ガラガラした掠れ声だ。


「ほら、あんたも行くんだから。」


 ステラの後ろに隠れていた女の子は、背中を押され、ヒョコッと顔を出した。


 銀髪に、真っ赤な瞳だ。目をパチパチと瞬きさせて、こちらを見ている。子ウサギのようだ。かわいい。


 もし、過去に戻れたのなら、絶対にカインよりも先に挨拶してやろうと思っていた。


「初めまして。ハイラル王国の第二王子、エルネン・ハイラルです。」


 手を差し出すと、人見知りなその子は、恐る恐るその手を取った。


「私は、リリアー……。」


 声が小さくて、その先は聞こえなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ