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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
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第7話 がんばれ王子!負けるな王女!〜運命の毒杯は血を沸かす〜

「あのドラゴンを、オリビアが操っているということですか。」


「いやだから、カイン王子がドラゴンを操ってて、そのカイン王子を、オリビアが操っているのよ。」


「何を言ってるんですか。」


「あんたが聞いたんでしょ。」


 師弟コンビは、ドラゴンに挑む。


 ステラはドラゴンの炎を魔法陣で防ぎ、その影でアリストラは弓を引いた。


 騎士達は、戦闘を続けていた。


 剣戟に紛れ、テオールの息の息の上がった声が掠れて届いた。


「ステラ、そのドラゴンをなんとかしてくれ。王が逃げ出すぞ。」


 騎士団を、完全に打ち負かす必要はない。城の中に入ってしまえさえすればいいのだ。


 しかし今は、扉の前にドラゴンが鎮座している。


「……そう言われましても、ねえ。」


 アリストラの放った矢は、カカカカっとドラゴンの翼に防がれた。しかし、それはフェイクだ。


——キィィン


 リリアーナの耳元に現れた魔法陣は、カインの額に矢を飛ばす。


 カインは至近距離で現れたその矢を、目の前でガッと掴まえると、それを折り捨て、ドスドスと向かってくる。


「……すごいな。本当に操られてますか?」


 リリアーナは、タジタジと後ずさった。


 次に現れた一つの魔法陣は、ドラゴンの後方に現れ、その矢は赤髪の女の肩を射抜いた。


「アリス。私に矢を放つなんて、酷いじゃない。」


 オリビアはフフッと笑うと、突き立った矢を引き抜いた。乱れた赤髪の間から、吊り上がった口元が覗く。


「……怖いな。あんなのが好きなの?」


「あなたの娘ですよ。」


 炎と剣の間を縫って、エルネンがゴロゴロと、魔法陣の影に転がり込んできた。


 ドラゴンに吹っ飛ばされていた気がしたが、この王子も打たれ強い。火のついたマントを、パンパンと払う。


「ステラがあのドラゴンに、操舵の魔法をかけることはできないのですか。」


「ドラゴンを操れるなんていうのは、操舵のドラゴンを斬った者くらいです。」


 だから、オリビアはカインを操っているのだ。


「……でも、人間なら可能ですよ。」


 その親子は目が合った瞬間、お互いに考えていることがわかったようだった。


「それは、ドラゴンを操っているカインを操っているオリビアをステラが——」


「やかましいわね。」


 ここら一帯の地面に、魔法陣が二つ重なって光を放つ。


 大きい——それは実力の現れだった。ステラの操舵の魔法と、オリビアの禁止の魔法だ。


 強い方の、魔法が勝つ。


——ピキッ、パキィーン


 軽い音がして、一つの魔法陣は、砕け散った。


 オリビアは赤髪をかきあげると、悪戯な笑みを浮かべていた。


 ステラと同じ、オレンジっぽいブラウンの瞳。


「綺麗な人だね。」


「そうでしょう。性格に問題があるだけです。」


 王子とその護衛は、攻撃に備えた。


 勝ったのはオリビアの禁止の魔法だが、同時に魔法を操る能力はないようだ。


 魔法が代わって混乱したのか、ドラゴンが暴れ出す——


「なんなんだ、これは。」


 魔法が解け、動きが鈍った隙を狙って、リリアーナはカインに斬りかかった。


「うわっ。」


 操られていない方が力強い。


 跳ね返された攻撃を受け止めきれず、ザザッと地面を擦って、二人は対峙した。


「ここはどこだ。リリア?どうなっているんだ。」


「また会いたいと思っていたら、願いが叶ったようです。」


「ついこの間、会っただろう。」


 カインは、操られた状態でドラゴンの魔法を使われたらしい。見えない片目を、ゴシゴシと手で擦っていた。


「……そうか。これが、最後ということか。目が覚めて良かったよ。」


 二人は剣を強く握りしめ、フーッと、長く息を吐いた。


読んでいただきありがとうございます。次回もお付き合いいただけましたら、泣いて喜びます。

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