第5話 恐怖!階段の先に待つ死神〜おいでませロッタ城へ〜
読んでいただきありがとうございます。おいでませって方言なのかな…
やっと外城の門を突破した王女たちは、浅くて長い石造りの階段を、ゾロゾロと登っていた。
「ここから本城までが、結構長いんだよ。」
まさか反逆の手伝いをしに来ることになるとはと、エルネンは笑った。
列の先頭は、ステラの傭兵団だ。
迎え撃つ城の近衛兵は、魔法陣に武器を吸い込まれ、吹き飛ばされ、道の両端に片付けられていく。
「みんな魔女を欲しがるわけだ。」
「しかし、魔女は誰にも従いませんから。」
ステラが手をかざすと、倒れていた敵兵の一人が立ち上がり、フラフラと歩き出した。
怯む味方の兵に、斬りかかる——
「あれが、操舵の術です。仲間を斬らせるなんて……。」
三人は、チラッと横を確認した。
長槍を振り回す王女は、バッサバッサと自国の兵を倒していた。
「……それにしても、父上が死んで操られていたなんて、びっくりしたよ。」
「びっくりで済みましたか?」
魔女たちの後ろにいると、やることがない。三人はのんびりと、前方の戦闘を眺めた。
「二年前か。イリヤが襲ってきたあの日、やはり父は病死してたんだね。」
エルネンは生き残り、王女アルビラは王位につくにはまだ若く、王妃はその時まで時間を稼ごうとしたのだろう。
「魔女は、誰にも従わないんだろう。」
「……オリビアですか。」
一体いつから王宮に入り込んで、王妃とは、どんな取引をして手を貸しているのだろう。
「初恋の人なんだろう。気になるなあ。」
「命の恩人なんですよ。単純なやつ。」
「いいだろ別に。ピュアなの俺は。」
フラフラと列の先頭を歩かされていた敵兵は、とうとう城の入り口にたどり着いた。
そして、無惨に切り捨てられる。
「……あれって。」
兄王子と弟王子は、揃って先頭に出た。
待ち構えていたのは、百人程度か。漆黒の鎧、銀の盾。銀が波打つ黒い旗。
それが風に逆らうように、強くはためいた。
「吹雪の騎士団を、あちらに取られたのですか?」
「みたいだな。」
エルネンとテオールは、顔を顰めた。
トラッド王国のカイン王子率いる、北部最強の騎士団だ。
カッと、魔法陣が騎士たちを囲み、光を放った。
ここに来てから奪った何百人分の剣やら槍やらが、刃を向け騎士団に降り注ぐ——
騎士団は、それを盾で防ぎ、剣で払い、ズンズンとこちらに向かってきた。
「……強そうですね。」
「戦ったことはないが。いつも、味方だったからな。」
兄弟は、剣を構えた。
「リリー、何か聞こえないか?」
「アリスがそう言う時って、碌なことがない。」
魔法陣から落ち続ける金属音に紛れて、バッサバッサと風を切る羽音が近づいてきた。
城の向こうから現れたのは、赤錆色の鱗を纏う、ドラゴンだ。その身を揺らして、こちらに向かってくる——
「勘弁してよ。」
「なんだってこんなところに。」
魔女たちは、どうしようと、ステラと顔を見合わせている。
そうこうしているうちに、騎士団は目下に迫る。
リリアーナは、ちょいちょいとエルネンのマントを引いた。
「今更ですが、オリビアがしたことを謝罪します。国王様のことも、国のことも。」
私が謝ってどうなることでもありませんがと、瞬きを繰り返した。
「そうだよ。リリーが謝ることじゃない。僕も、カイン王子と戦わせることを謝るべきかな。」
「そんな必要はありません。」
「そうだろう?僕のために、戦ってくれるかい。」
「もちろんです。」
ドラゴンの咆哮が、その場を揺らした。
読んでいただきありがとうございました。おいでませなのか、おいでやすなのか…。おいで…?




