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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
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第5話 恐怖!階段の先に待つ死神〜おいでませロッタ城へ〜

読んでいただきありがとうございます。おいでませって方言なのかな…

 やっと外城の門を突破した王女たちは、浅くて長い石造りの階段を、ゾロゾロと登っていた。


「ここから本城までが、結構長いんだよ。」


 まさか反逆の手伝いをしに来ることになるとはと、エルネンは笑った。


 列の先頭は、ステラの傭兵団だ。


 迎え撃つ城の近衛兵は、魔法陣に武器を吸い込まれ、吹き飛ばされ、道の両端に片付けられていく。


「みんな魔女を欲しがるわけだ。」


「しかし、魔女は誰にも従いませんから。」


 ステラが手をかざすと、倒れていた敵兵の一人が立ち上がり、フラフラと歩き出した。


 怯む味方の兵に、斬りかかる——


「あれが、操舵の術です。仲間を斬らせるなんて……。」


 三人は、チラッと横を確認した。


 長槍を振り回す王女は、バッサバッサと自国の兵を倒していた。


「……それにしても、父上が死んで操られていたなんて、びっくりしたよ。」


「びっくりで済みましたか?」 


 魔女たちの後ろにいると、やることがない。三人はのんびりと、前方の戦闘を眺めた。


「二年前か。イリヤが襲ってきたあの日、やはり父は病死してたんだね。」


 エルネンは生き残り、王女アルビラは王位につくにはまだ若く、王妃はその時まで時間を稼ごうとしたのだろう。


「魔女は、誰にも従わないんだろう。」


「……オリビアですか。」


 一体いつから王宮に入り込んで、王妃とは、どんな取引をして手を貸しているのだろう。


「初恋の人なんだろう。気になるなあ。」


「命の恩人なんですよ。単純なやつ。」


「いいだろ別に。ピュアなの俺は。」


 フラフラと列の先頭を歩かされていた敵兵は、とうとう城の入り口にたどり着いた。


 そして、無惨に切り捨てられる。


「……あれって。」


 兄王子と弟王子は、揃って先頭に出た。


 待ち構えていたのは、百人程度か。漆黒の鎧、銀の盾。銀が波打つ黒い旗。


 それが風に逆らうように、強くはためいた。


「吹雪の騎士団を、あちらに取られたのですか?」


「みたいだな。」


 エルネンとテオールは、顔を顰めた。


 トラッド王国のカイン王子率いる、北部最強の騎士団だ。


 カッと、魔法陣が騎士たちを囲み、光を放った。


 ここに来てから奪った何百人分の剣やら槍やらが、刃を向け騎士団に降り注ぐ——


 騎士団は、それを盾で防ぎ、剣で払い、ズンズンとこちらに向かってきた。


「……強そうですね。」


「戦ったことはないが。いつも、味方だったからな。」


 兄弟は、剣を構えた。


「リリー、何か聞こえないか?」


「アリスがそう言う時って、碌なことがない。」


 魔法陣から落ち続ける金属音に紛れて、バッサバッサと風を切る羽音が近づいてきた。


 城の向こうから現れたのは、赤錆色の鱗を纏う、ドラゴンだ。その身を揺らして、こちらに向かってくる——


「勘弁してよ。」


「なんだってこんなところに。」


 魔女たちは、どうしようと、ステラと顔を見合わせている。


 そうこうしているうちに、騎士団は目下に迫る。


 リリアーナは、ちょいちょいとエルネンのマントを引いた。


「今更ですが、オリビアがしたことを謝罪します。国王様のことも、国のことも。」


 私が謝ってどうなることでもありませんがと、瞬きを繰り返した。


「そうだよ。リリーが謝ることじゃない。僕も、カイン王子と戦わせることを謝るべきかな。」


「そんな必要はありません。」


「そうだろう?僕のために、戦ってくれるかい。」


「もちろんです。」


 ドラゴンの咆哮が、その場を揺らした。

 


読んでいただきありがとうございました。おいでませなのか、おいでやすなのか…。おいで…?

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