第3話 どすこい☆開戦!?王女の槍は空を裂く
「ここがスタートで、あそこの中にゴールがある。ここで何人やられようが、王女が王様の首を取ったら勝ちだよ。」
アリストラとリリアーナは、エルネンの指差した方をほぅ、と眺めた。
遠くとも近くとも感じる。ロッタ王国の王宮だ。
「聞いていた数より多いような……。」
その前に兵士が数百人ずつだ。緑、黄、赤と違う旗が上がり、行手を阻む。
「北部の人は戦争好きだからね。噂が広まれば、もっと集まってくるよ。」
こちらも、兵力は同じくらいだろうか。ブルルと周りの騎馬たちが、鼻を鳴らし、待ちきれずに土を鳴らす。
前方の歩兵たちは道を開けるため、すでに歩みを進めている。
「……言ってくれれば、俺たちで暗殺しに行った方が早かったんじゃないの。」
「ここを正面から突破して、城に攻め込む方が大変そうだよね。」
「それに、その王女様の側について大丈夫なのか。王様といい、王子様といい、女に裏切られる傾向が……。」
いつものようにリリアーナと二人、コソコソ文句を言い合っていた。
それに気が付かなかったのは、エルネンがそれをケラケラ笑い飛ばしたのが、嬉しかったからだった。
「聞こえているぞ。」
「……あ。」
現れたのは、第一王子テオールだ。銀の甲冑に、金の長剣。サラサラした黒髪と赤いマントが、風に靡いた。
「かまいませんわ。今回は、お願いしますね。」
優しそうな声とは裏腹に、甲冑姿が勇ましい。誰よりも大きな軍馬に長槍を携えるのは、反逆の王女だ。
ローザ王女は諸国で有名な、戦うお姫様だった。
「正々堂々、正面突破が北部式だ。」
テオールは、意気揚々と刃をその先に向けた。
王女はどこまで知っているのだろう。それを見て、静かに聞いた。
「でも、よろしいのですか。王子様が二人とも。」
「……私たち兄弟が、ここでどちらもやられたら?その時は、ハイラル王国は王妃が実権を握り、アルビラが女王になるでしょうね。」
何も考えていないわけではない。その時は、そういう運命だったのだと。それが、この王子の考え方なのだった。
「心配なさらず。この戦いには必ず勝ちます。命をかけて、あなたを守りますから。」
テオール王子は王女に微笑んだ。
まだ挫折を知らない若者の、根拠のない自信。しかし、爽やかな笑顔にそのセリフが、よく似合っていた。
アリストラとリリアーナは、思わずその笑顔に見惚れた。
——これが、この世界の主人公か
「リリー、アリス。ほら、いくよ。」
エルネンは少し不機嫌そうに声をかけると、手綱を引き、走り出した。
金髪と青色のマントが、波のように揺れる。
「待ってくださいよ、エルネン様ー。」
前方の兵達は、道を開けるように敵を左右へ押している。滑り出しはまずまずだ。
リリアーナは、黒毛の軍馬だ。王子の後を追うよう馬を急かす。
「ねえ、アリス。白馬は目立つんじゃない?」
エルネンには、愛馬マドンナを貸した。崖から落ちても無傷なんだというから、なんだか縁起も良さそうだし。
「王子様は、白馬に乗るものなんだよ。」
「そうなの?」
後ろからガヤガヤと、我らがチーム反逆者がついてくる。砂埃が舞い、思わずくしゃみをした。
土に混じる、鉄と、血。戦いの匂いがする——
王女ローザはそれを追い越し、先頭を、風を切って走って行った。
「王子様たちは、強い女が好きなんだなあ。」
しかし、彼女はヒロインではない。
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