表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第六章 魔法とドラゴン
PR
56/68

第2話 魔女は月の下で赤ワインに酔う〜愛を毒林檎が喰らう〜

 やけに月が大きくて、明るい夜だった。


 二人の王子は肩を並べて、だだっ広い荒野の先を、ジッと眺めていた。


 明日はそこが、戦場となる。

 

 エルネンは、兄、テオールから注がれた赤ワインに、眉を顰めた。バルコニーは風が冷たく、まったく酔う気がしなかった。


「そんなものに参戦して、問題ないのですか?」


 この先にあるロッタ王国は、北部を代表する、リーダー格の国の一つだ。北部の意思と言っても過言ではない。


 その国の、ほんの二週間前に失敗した反逆のリベンジに、加勢するという。


「国王につくか、反逆の王女につくか、勢力は半々だ。」


 周りの国も巻き込んで、なかなかの規模になるらしい。


「王女は、温厚な方だ。この長く続く戦争を嘆いている。それは、俺も同じだ。」


「温厚な方は、反逆などしませんよ。父上は、これを許したのですか。」


「まさか。王女とは約束をしていて、これが終われば兵を借りて、国に戻ることになっている。」


「……は?」


「この反逆が成功すれば、今度は俺たちの番だ。」


 ……俺たちの番とは?


「父上を殺して、王座を奪うつもりですか。」


「殺すって、エルネン。この二年間、少しも気が付かなかったのか?」


 エルネンはさっきから、まったく酒の味を感じられなかった。


♢ ♢ ♢


「王様はもうすでに死んでいて、操られているということですか。」


「操舵の魔法は、死人にも使えるのよ。」


 魔女ステラはワイングラス越しに、あんぐりと口を開け固まる弟子二人を眺めた。


 二年か。王子たちすら気づかないのだから、この王国に王など、不要なのかもしれない。


「こんなことができるのは、一人しかいないわ。」


 三人だけになった応接室は静かで、動き出した時計の振り子が、コッチ、コッチ、と部屋に響いた。


「……さすが。」「で、どうするのですか次は。」


 二人はやはり、ピンときていないようだ。


「私じゃないわよ。あの子が、この国で悪さをしているようだから。」


 オリビア。もう何年も、姿を消したままだった。


「師匠の様子を伺うために、俺たちをこの仕事に送り出したのですね。」


 しかしこの二人は王子に夢中で、王宮に潜む影には、たどり着けなかったらしい。


 まさか、王妃に手を貸し、王の亡骸を操っているなどとは、つゆにも思わなかっただろう。


 それは、私もだ。


「第一王子の反逆に、手を貸すわ。」


「……そこで、オリビアを始末するつもりですか。」


 抑えたつもりか、しかし微かに震えた声。アリストラは、助けを求めるように視線を彷徨わせていた。


 この子がオリビアに特別な感情を抱いていることは、わかっていた。


「連れて帰ればいい。そうでしょう、ステラ。」


 リリアーナは、小首を傾げた。


 ことはそう、深刻じゃない。そう言っているわけではなく、その後のことに、気を取られているのだろう。


「あんたたち、ドラゴンを倒しに行くんだって?時を戻して、王子様の愛しの護衛を生き返らせるとか。」


 銀髪に隠れたいつものすまし顔が、一瞬だけ不愉快そうに歪んだ。つい、口元が緩んでしまう。


「嫌なら、止めればいいのに。」


 エルネンの隣は自分だけだと、そう言えばいいのに。しかし、そういうことは出来ない子だ。


 そして時がくれば、身を引くはずだ。自分より人の幸せを優先する、不器用で、優しい子。


「まあ、いいさ。やるだけやってみたらいい。」


 王子から貰った赤ワインは渋くて、その重さはゆっくりと、静かに宙に溶けていった。


「あんたたちは、わかりやすいのにねえ。オリビアが考えていることは、昔からよく分からなくて。」


 どうしていつも、私に突っかかってくるのだろうか。


「今も昔も、あなたと戦いたいのでしょう。」


 やれやれと、二人は顔を見合わせため息を吐いた。


 ふと、オリビアの袖を引く、小さな姿を思い出した。


 いつの間に、こんなに大きくなったのだろう。


「それじゃあ、娘の希望に答えようか。」


 ステラの瞳は、鋭く光った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ