第1話 ドキドキ!?戦場のウソ☆〜仕掛け時計が動き出す〜
読んでいただきありがとうございます。第六章です。
剣の交わる不快な和音が頭を中から揺さぶり、思わず奥歯を噛み締めた。
一行は、戦闘の最中だ。
魔法使いアリストラは、十数本の矢を一度に構え、それを敵の軍勢めがけて放った。
それらはあちこちに現れた魔法陣に吸い込まれ、それぞれが、兵士の首に狙いを定めて飛んでいく。
「わあ、すごいじゃないか。」
エルネンの上げた感嘆の声に胸を張り、もう一度矢をいっぱいに握りしめた。狙いを定め、弓を引く。
リリアーナは、その前方を突っ走っていった。怯んだ兵士達に斬りかかり、とどめを刺していく。
十人斬りだ。
「……あ、しまった。」
別に気を抜いたりしたわけではなくて、リリアーナを助けようとしたのだ。
その矢は、彼女の頬を擦った。
「……危なかった。」
振り向いた顔には、猫のヒゲのように一本の赤い線が通っていた。
♢ ♢ ♢
北の砦だ。
着いてすぐ、城前まで迫ってきていた敵兵たちを押し戻し、やっと一息ついているところだった。
「わざとなわけないだろ。」
「エルネン様が綺麗だと言うから、顔には傷を作らないようにしてたのに。」
「綺麗?リリーになにを……。やっぱり山小屋で何かあったのですね。」
「いや、待って。そんな顔で見ないで。」
三人は、寒くて広すぎる応接室で、この城の主人が現れるのを、呑気に待っていた。
止まっていた大きな仕掛け時計を、あーでもないこーでもないと、いじり始めた時だった。
「……え?」
部屋の扉を開け現れたのは、死んだはずのクレマチスだった。
「なんで、テッセン卿が。……幽霊だ。リリー!」
俺は慌てて、魔法でその幽霊の足を固めた。
「土に帰れ。エルネン様に近寄るな。」
リリアーナは剣を構え、飛びかかる。
「落ち着きなさい。」
その途端、視界は色を失い、ぎゅうっと狭まった。
「「ぐううう……。」」
久々に感じる苦しみ。首が締まり、目が熱くなる。俺たち二人は、床に膝をついた。
ステラの首輪だ。
開かない喉から、掠れた声を絞り出す。
「……ステラ。なんでここに。」
現れたのは我が主人、魔女ステラ。
そして、第一王子テオールだ。爽やかな笑みは、とても正気とは思えない。
リリアーナと二人、ヨロヨロと、エルネンを庇うように立ち上がった。一体、どうなっているんだ。
敵なのか、味方なのか。ここで、戦うのか?
「……兄上。まさか、また嘘をついたのですか。」
驚きと、微かな呆れ。後ろを振り返るとエルネンは、呆然と立ち尽くしていた。
王子テオールは、それを見て豪快に笑った。クレマチスは、やれやれと首を振っている。
「このとおり、死んではおりません。まさか、葬式は上げていませんよね。」
リリアーナと顔を見合わせていると、エルネンは長いため息を吐いた。
「……僕が北部で戦うのは二度目だ。一度目は、兄上が戦場に立てないほどの大怪我を負ったと来てみれば。」
それは嘘だった。その時、二人の王子は協力し、この砦を手に入れたのだ。
「同じ嘘をついたんじゃ、来てくれないかと思って。」
黒髪から覗く青い瞳が、宝石のようにキラリと光った。
悪戯っぽい笑みは、なんだかエルネンに似ていると思った。
「……テッセン卿、ご無事で何よりです。」
俺たちはお互いに体を預け、ズルズルと床に座り込んだ。
「勝負の時は、弟を呼ぶと決めているんだ。北部の戦争を終わらせるぞ、エルネン。」
ポーン、ポーンと、時計の仕掛けが動き出す。
「……いや、どういうことかきちんと説明してください。」
第二王子はまた、深くため息を吐いた。
長くなってきましたが、まだ見てくれてる方いるのでしょうか?続きもよければお願いいたします。




