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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第6章 信星
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不測の真実

登場人物

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。あやかしの狻猊さんげいしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

藺離りんり…………槍の手練者てだれ。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

巩岱きょうたい…………細作しのびのもの。介象に仕える。

娄乾ろうかん…………萬軍八極のひとりとおぼしき富豪。


韋震いしん…………賊徒のような身形みなりの若者。

尊盧そんろ…………あやかし。黄色い瞳の武者。蚩尤しゆうに仕える九黎きゅうれいのひとり。

蚩尤しゆう…………邪神。

季平きへい…………国の司徒しと。三公のひとり。三桓氏さんかんしと呼ばれる。

叔孫豹じょそんひょう…………魯国の司馬しば。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

孟献もうけん…………魯国の司空しくう。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

陽虎ようこ…………三公に仕える魯国の若き重臣。

蒼頡そうけつ…………妖し。剣の手練者。蚩尤に仕える九黎のひとり。

風沙ふうさ…………妖し。美貌の持ち主。蚩尤に仕える九黎のひとり。

太皞たいこう…………妖し。老婆の姿。蚩尤に仕える九黎のひとり。

赫胥かくしょ…………妖し。短槍の手練者。蚩尤に仕える九黎のひとり。


夸父こほ…………巨人の妖し。性質たちは狂暴。隻眼せきがんで緑の皮膚。

赫胥かくしょ生娘きむすめの生き血を飲んだら良いじゃない。そんな傷、たちどころに癒えるわ。自分の霊気だけで傷を癒すなんて、ただの労力よ」

 あきれた調子で云った風沙ふうさは、美貌に憐れみの色を浮かせた。

「……介象かいしょうが……代わっている。以前の介象ではない……」

「――――⁉」

 居合わせた九黎きゅうれい蒼頡そうけつ、風沙、太皞たいこうは、顔色を変えた。

「知っている。今は二代。初代も名を変え共にいるはずだ。その介象と鉢合わせたのか、赫胥?」

 態度を変えず、赫胥をにらみ据えたのは、蚩尤しゆうだった。

「剣技も図抜けているが……霊気の底がない……。極め付けは……」

 ただれた顔を蚩尤と九黎に向け、赫胥は告げた。

「霊獣の朱雀すざくる――」

「――――⁉」

「な、何と――⁉ あやかしのたぐいではなく、霊獣の朱雀とな――⁉」

 老婆の太皞がわなわなとふるえていた。

「……初代とは、少し違うようですな、蚩尤さま?」

 蒼頡は、落ち着いた様子で蚩尤に尋ねた。

「ああ。霊獣か。どうやってしもべにしたかわからぬが、これで赫胥の傷もうなずける。お前も見たのか、尊盧そんろ?」

 蚩尤は、鋭い視線を尊盧に遣った。

「え、ええ。赫胥どのは、火鼠かそ短狐たんこを操る萬軍八極まんぐんはっきょくと対峙した末、狻猊さんげいを繰る八極に加え、介象と交戦しておりました。私が連れ帰った女子おなごは、狻猊を僕とする八極……」

「介象がどうだったかを聞いている」

 蚩尤は、尊盧を睥睨へいげいした。

「は、はい。……以前の介象では見られなかった技を繰り出しておりました。初代の姿は……確認しておりませぬ」

 蚩尤に気を飲まれたような尊盧は、及び腰となって答弁した。

「…………」

「少々、厄介ですな」

 玉座の脇に侍る蒼頡が放ったのは、静かな声音こわねだった。

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