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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第3章 義星
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当主か破門

登場人物

藺石りんせき…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授りんじゅ…………藺家の長子。苛烈かれつな槍の名手。

藺離りんり…………藺家の次子。槍の手練者てだれ。道徳的な思想を持つ。

藺翼りんよく…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

藺冑りんちゅう…………藺家の四男。鋭敏な槍術の持ち主。


火鼠かそ…………炎を自在にあやかし。

 藺石りんせきの気配が消えていた。

 異変に気付いた使用人たちが騒ぎ出すと、かがりを持って中庭に集まり始めた。

 複数の篝が中庭を照らした。

 すすだらけの藺離りんりが、槍を手に荒い呼吸をしていた。


 高台で腕組みした藺石が、広大な庭の中央で対峙する二人に厳しい視線を向けていた。

 藺離が火鼠かそを得てから五日後のことだった。

 勝った方を当主とする――。

 藺石は、藺家一門に触れを出した。

 対峙する二人を大きく囲むように、門弟たちが集っている。

 その中には、三男の藺翼りんよくと四男の藺冑りんちゅう、下の弟たち四人もいた。兄弟たちの誰人だれもが、年長の兄二人の挙動に注目していた。

 無理もない。藺石が出した触れには続きがあった。

 ――敗れた方は破門とする。

 対峙していたのは勿論もちろん、長子の藺授りんじゅと次子の藺離である。

「こんな日が来てしまったか……」

「ああ。離兄は授兄に一度も勝ったことがない。勝てるとすれば、離兄しかいないのも確かだが……」

「番狂わせを期待するしかないのか……」

 期待と不安が混ざったような面持ちで、藺翼と藺冑が二人の兄に視線を向けている。

 穂先は穂鞘に包まれていた。槍を肩に担いだ藺授は、強張る顔で佇立ちょりつした藺離に不敵な笑みをさらした。

「無駄な試合だ。何故なにゆえ、痛い眼を見る前に藺家から出奔しゅっぽんすることを選ばんのだ?」

「…………」

 藺離は、無言で長兄を見詰め返している。

「――――⁉」

 ふと、藺授は、藺離が手にしている得物が、藺石の愛槍であることに気付いた。藺授の笑みが、残忍なそれに変わった。

「父上に期待されているとでも云いたいのか? まあ、良い。愚弟に引導を渡すのも兄の務めだ」

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