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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第3章 義星
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頼りの長兄

登場人物

藺石りんせき…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授りんじゅ…………藺家の長子。苛烈かれつな槍の名手。

藺離りんり…………藺家の次子。槍の手練者てだれ。道徳的な思想を持つ。

藺翼りんよく…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

藺冑りんちゅう…………藺家の四男。鋭敏な槍術の持ち主。


火鼠かそ…………炎を自在にあやかし。

 穂鞘ほざやを抜き放った藺授りんじゅは、ゆっくりと身構えた。冷たく光る槍の穂先が、藺離りんりを向いている。

 藺離は瞑目めいもくすると、大きく息を吸い込んだ。

 出会ったのは、十五年も前のことだった。

 何も知らず、大きなやしきに預けられていた。もう顔も覚えていない。それっきり、母はいなくなった。

 母を探すように広大な邸を彷徨さまよい歩いた。歩くのに疲れるとなみだが出てきた。幼い藺離を襲ったのは、寂しさと不安だった。

「泣くな」

 突如、肩に手を置かれた。

 そでで涕を拭いながら、幼い藺離は声の主を見遣みやった。まぶしいほどの破顔はがんだった。

「俺は、授。お前は俺よりひとつ年下と聞いた。名は何だ?」

 しゃくり上げながら、幼い藺離は応じた。

「……離」

「良し、離よ、今日から俺たちは兄弟だ。俺が兄でお前が弟。何も悲しむことはない。お前には俺がいる。俺たちは、いつも一緒だ」

 屈託のない笑みを見せてさとす藺授に、幼い藺離は従うしか手段すべがなかった。

 しかし、この日から兄となった藺授は、優しく頼もしかった。一緒にいると、たのしかった。槍に見立てた棒を預けられると、藺授と稽古にいそしんだ。日増しに寂しさと不安はなくなった。

 それから二年もすると、また新たな童子が藺家に迎えられた。童子を連れてきた母のような女がいなくなると、その童子は、すぐさま寂しさと不安に襲われたようだった。からだが大きい分、泣き方も豪快ごうかいだった。

「何も心配することはない。今日から俺たちは兄弟だ」

 破顔した藺授が、童子の肩に手を置いた。

 藺離も笑みを見せながら童子の手を取った。

 その童子は、よくという名だった。

 更に一年後、藺家に迎えられたのは、めそめそと泣く細身さいしんの童子だった。

 藺授は、童子の肩にかいなを回した。

「大丈夫だ。お前には兄が三人もいる」

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