↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/302

火炎の試練

登場人物

藺石(りんせき)…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授(りんじゅ)…………藺家の長子。苛烈(かれつ)な槍の名手。

藺離(りんり)…………藺家の次子。槍の手練者(てだれ)。道徳的な思想を持つ。

藺翼(りんよく)…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

藺冑(りんちゅう)…………藺家の四男。鋭敏な槍術の持ち主。


火鼠(かそ)…………炎を自在に操(く)る妖(あやか)し。

「くっ!」

 咄嗟(とっさ)に藺離(りんり)は、父の槍で玉炮(ぎょくしゃく)を斬り上げた。二つに割れた玉炮は、藺離の身を避けるようにその後方まで飛び、地に着くと爆(は)ぜた。

 続け様に火炎の放射が藺離を襲う。それを躱(かわ)しても、また別のところから火炎が藺離の身を焦がした。まるで、火鼠(かそ)が何体もいるようだった。否、火鼠の素早い動きが、藺離には何体もいるように見えていた。

 火鼠は、矢継(やつ)ぎ早(ばや)に口から火炎を放ち、徐々に藺離との距離を詰めた。突如、火鼠が宙に跳ねた。足の間から勢い良く炎の尾で藺離を仰いだ。

 身を焼くほどの熱風が、藺離を後方に弾き飛ばした。間髪入れず、上空から五つの玉炮が、一挙に藺離へ降り注ぐ。

「さあ、どうする……?」

 暗闇で絶え間なく点滅するような炎の明かりに、藺石(りんせき)は独語した。

 藺離は、斬撃を頭上へ五つ走らせた。苦し紛れのそれに見えた。しかし、炎に照らされた藺離の双眸(そうぼう)は冴えていた。

 閃光のような斬撃は玉炮を斬り、割れた玉炮が地に落ちて爆ぜた。

 熱い爆風が、縁側に立つ藺石の頬(ほほ)を打つ。

 勝ち誇ったような火鼠は、二足で立つと爆ぜる炎に視線を注いでいた。

 すたっと、火鼠の後方に何かが着地したようだった。

「――――⁉」

 慌てたような火鼠が振り返った刹那(せつな)だった。

 小さな火鼠の躰(からだ)を穿(うが)ったのは、年季の入った槍だった。

「火を操(く)る妖(あやか)しよ、我が僕(しもべ)となれ――」

 火鼠に冷たい視線を注ぎながら云ったのは、藺離だった。

 藺離は、五つの玉炮を斬ると同時に跳躍した。地に落ちた玉炮、その爆風の威力を借りるようにして、更に天高く跳躍していた。小さな炎が揺れている。暗闇でもそれとわかる火鼠の炎尾だった。宙で火鼠の位置を捉えた藺離は、その背後に着地していた。

 すうっと、火鼠の姿が消えると、辺りは全てが暗闇に覆われた。

「見事」

 藺石の声が聞こえた。

「その槍と火鼠はお前にくれてやる。当主の座に就くかどうかは、お前が決めろ、藺離」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。