さらば同志
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。萬軍八極の極主。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
娄乾…………剣の手練者。妖しの虎憑耳を僕に持つ。曳影の剣を佩びている。萬軍八極の壱。
鄒兌……医の徒の生娘。妖しの月兔を僕に持つ。萬軍八極の弐。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極の参。
韋震…………双短剣の使い手。妖しの雷公を僕に持つ。萬軍八極の肆。
裴巽…………戟の手練者。妖しの飛廉を僕に持つ。萬軍八極の伍。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。萬軍八極の陸。
花艮…………鉞の使い手。妖しの山操を僕に持つ。萬軍八極の漆。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極の捌。
「孝の人、花艮。悌の人、鄒兌。誇り高い高尚な男と、労わりを知るうら若き医の徒は、いつまでも俺の中で生きている。いつか会おう、同志よ」
「はっ。必要とあらば、我ら、いつでも駈け付けまする」
丘坤は、追い付かれそうな背丈の鄒兌を犇しと抱き締めた。
「また会いましょう、鄒兌」
「うん」
ほかの萬軍八極と挨拶を交わした花艮は、肩に鄒兌を乗せると、娄乾の邸を去った。
それから三日後――。
「じゃあな、介象さま、元緒さま」
はにかんだ笑みを見せたのは、旅装をした韋震だった。
その後ろには、旅装を施した丘坤が微笑を浮かべていた。
「介象さま、元緒さま、お世話になりました」
丘坤が頭を垂れると、韋震も慌てたようにそれに倣った。
韋震と丘坤は、丘坤が生まれ育った邑を訪れるらしかった。
「好い好い。儂にとっては、思い入れのある二人じゃが、しっかり丘坤を護らねばならぬぞ、韋震」
「お、応よ……」
照れたような韋震が、頬を赤らめた。
「丘坤や、尻を叩いてやるのも良いが、韋震を立てることも忘れてはならぬぞ。それが、円満の秘訣というやつじゃ」
「……はい」
落ち着き払った丘坤は、綺麗な拱手をしてみせた。
「信の人、韋震。礼の人、丘坤。奮起と秩序が融合し、新たな力となろう。いつか、また会うのが愉しみだな、同志よ」
介象の瞳を見詰めた韋震は、真面目な顔付きだった。精悍な男に見えた。
「困った時は、呼んでくれよ。介象さまと元緒さまの足を引っ張らねえように、役に立つように、しっかり研鑽を積むからよ……」
「次にお会いする時まで、介象さまと元緒さまに恥じることのない生き方をして参ります……」
韋震と丘坤は、残った萬軍八極に挨拶を交わすと、娄乾の邸に別れを告げた。韋震が、優しく丘坤の手を引いていた。




