旅立の八星
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。萬軍八極の極主。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
娄乾…………剣の手練者。妖しの虎憑耳を僕に持つ。曳影の剣を佩びている。萬軍八極の壱。
鄒兌……医の徒の生娘。妖しの月兔を僕に持つ。萬軍八極の弐。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極の参。
韋震…………双短剣の使い手。妖しの雷公を僕に持つ。萬軍八極の肆。
裴巽…………戟の手練者。妖しの飛廉を僕に持つ。萬軍八極の伍。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。萬軍八極の陸。
花艮…………鉞の使い手。妖しの山操を僕に持つ。萬軍八極の漆。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極の捌。
介象と元緒、そして、萬軍八極たちは、娄乾の邸へと還った。
広大な庭で開いた酒宴は、十日ほど続いた。
そして――。
「では、介象さま、元緒さま、お達者で……」
慇懃に頭を垂れたのは、旅装をした長髯の藺離だった。
その脇で、同じように旅装した欧陽坎が、虎髭を逆立て破顔した。
「いつでも呼んでくれよ、介象さま! 元緒さま! 必ず駈け付けるからよ!」
義兄弟の藺離と欧陽坎は、藺離の故郷、斉国の臨淄に帰ることにしたようだった。その後、欧陽坎の古里にも二人で訪れるらしい。
「好い好い。萬軍八極であることを誇りとし、研鑽を積むことを忘れるでないぞよ」
「はい、元緒さま。ああ、故郷に帰る日が来ようとは、思ってもおりませなんだ」
「俺は、兄者の兄弟たちと試合するのが愉しみでしょうがねえ」
感慨に耽る藺離に反し、欧陽坎は落ち着きがなかった。
「義の人、藺離。忠の人、欧陽坎。その義兄弟の名は、いつまでも俺の胸に刻まれている。また会おう、同志よ」
「はっ」
藺離と欧陽坎は、介象に丁寧な拱手をしてみせた。残った萬軍八極と挨拶を交わし、娄乾の邸を後にした。
明くる日――。
「介象さま、元緒さま、我らも参ります」
丁寧に頭を垂れたのは、巨軀に旅装を施した花艮だった。
「またね、介象さま、元緒さま」
同じように旅装した鄒兌が、あどけなさの残る笑みを二人に見せた。
花艮は、身寄りのない鄒兌を引き取り、宛てのない旅に出ることにしていた。
鄒兌は、その提案を快く受け入れた。
「好い好い。鄒兌や、花艮を父と思い、重々孝行せねばならぬぞ」
「合点!」
「花艮よ、云うまでもないが、鄒兌を本当の娘と変わらず、大切に育むよう」
「はっ」
介象と元緒を前に、鄒兌が可愛らしい笑みを見せると、花艮は静かに拱手した。




