新たな蠢動
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。萬軍八極の極主。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
娄乾…………剣の手練者。妖しの虎憑耳を僕に持つ。曳影の剣を佩びている。萬軍八極の壱。
鄒兌……医の徒の生娘。妖しの月兔を僕に持つ。萬軍八極の弐。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極の参。
韋震…………双短剣の使い手。妖しの雷公を僕に持つ。萬軍八極の肆。
裴巽…………戟の手練者。妖しの飛廉を僕に持つ。萬軍八極の伍。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。萬軍八極の陸。
花艮…………鉞の使い手。妖しの山操を僕に持つ。萬軍八極の漆。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極の捌。
貔貅…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。
蚩尤…………邪神。
陽虎…………三公に仕える魯国の若き重臣。
智躒…………晋国は卿のひとり。
智申…………智躒の子息。
王子喬…………冥界より派遣された方士。
まるで地震のような揺れだった。
轟音と砂塵を伴い、宮廷が沈む。
その様子を傍観していた萬軍八極たちは、どこかその面貌に清清しさを帯びていた。
萬軍八極たちに告げるべきことを告げた介象も、静かな眼差しで沈み往く宮廷を眺めた。
その頃、晋国のある重臣、その邸では――。
齢は五十に達した頃だった。豪奢な着物を纏い、白髪を緇撮で結い上げ、整えられた白髯は胸元まで伸びている。面影のある二十歳前後の子息を従わせ、応接室から出てきたのは、智躒と智申の親子だった。
「これは、良い拾い物をしたわい! すぐにでも召し抱えい!」
「はっ!」
智躒は、食客を志願する者との面談を終えると、頗る気分を良くして応接室を後にした。
その二人に遅れて応接室から出た者が在った。頭には白い藤蔓の冠を戴いている。その端整な顔立ちの青年は、青い方衣を纏っていた。その青年こそ、王子喬だった。
智躒の邸を後にした王子喬は、街道に沿って歩き出した。人々の往来は引っ切りなしだった。癖のように、いずれの者とも擦れ違う間際に微笑を湛えた。
向かってくるように歩いて来たのは、女児を真ん中に、その両手を父母がそれぞれ握った親子だった。身形は良くも悪くもない。何かの商いで生計を立てている家族に見えた。女児が嬉しそうな笑みを湛え、代わる代わる父母を見上げている。それに両親も柔らかな笑みを返していた。
「一度でも人に崇められたことのある神は、存外、脆いものだなあ……」
独語した王子喬は、親子に道を譲るように身を避けると、再び微笑を湛えてその家族に眼を細めた。
「それにしても、二代介象、思っていたより迅速に治めたもんだ」
王子喬は、満足げな微笑を浮かせながら、清雅な風情で歩いて往った。




