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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第18章 雄光
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新たな蠢動

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。萬軍八極ばんぐんはっきょくの極主。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

娄乾ろうかん…………剣の手練者てだれあやかしの虎憑耳こひょうじしもべに持つ。曳影えいえいの剣をびている。萬軍八極の壱。

鄒兌すうだ……医のの生娘。妖しの月兔げっとを僕に持つ。萬軍八極の弐。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極の参。

韋震いしん…………双短剣の使い手。妖しの雷公らいこうを僕に持つ。萬軍八極の肆。

裴巽はいそん…………げきの手練者。妖しの飛廉ひれんを僕に持つ。萬軍八極の伍。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極の陸。

花艮かごん…………まさかりの使い手。妖しの山操さんそうを僕に持つ。萬軍八極の漆。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。妖しの狻猊さんげいを僕に持つ。萬軍八極の捌。

貔貅ひきゅう…………萬軍八極が異界より召喚した戦闘に優れる妖し。萬軍八極の玖。


蚩尤しゆう…………邪神。


陽虎ようこ…………三公に仕える国の若き重臣。


智躒ちれき…………しん国はけいのひとり。

智申ちしん…………智躒の子息。

王子喬おうしきょう…………冥界より派遣された方士。

 まるで地震ないのような揺れだった。

 轟音と砂塵を伴い、宮廷が沈む。

 その様子を傍観していた萬軍八極ばんぐんはっきょくたちは、どこかその面貌めんぼう清清すがすがしさを帯びていた。

 萬軍八極たちに告げるべきことを告げた介象かいしょうも、静かな眼差まなざしで沈み往く宮廷を眺めた。

 その頃、しん国のある重臣、そのやしきでは――。

 よわいは五十に達した頃だった。豪奢な着物をまとい、白髪を緇撮しさつで結い上げ、整えられた白髯はくぜんは胸元まで伸びている。面影のある二十歳前後の子息を従わせ、応接室から出てきたのは、智躒ちれき智申ちしんの親子だった。

「これは、良い拾い物をしたわい! すぐにでも召し抱えい!」

「はっ!」

 智躒は、食客を志願する者との面談を終えると、すこぶる気分を良くして応接室を後にした。

 その二人に遅れて応接室から出た者が在った。頭には白い藤蔓ふじつるかんを戴いている。その端整な顔立ちの青年は、青い方衣をまとっていた。その青年こそ、王子喬おうしきょうだった。

 智躒の邸を後にした王子喬は、街道に沿って歩き出した。人々の往来は引っ切りなしだった。癖のように、いずれの者とも擦れ違う間際に微笑を湛えた。

 向かってくるように歩いて来たのは、女児を真ん中に、その両手を父母がそれぞれ握った親子だった。身形みなりは良くも悪くもない。何かの商いで生計を立てている家族に見えた。女児が嬉しそうな笑みを湛え、代わる代わる父母を見上げている。それに両親も柔らかな笑みを返していた。

「一度でも人に崇められたことのある神は、存外、もろいものだなあ……」

 独語した王子喬は、親子に道を譲るように身を避けると、再び微笑を湛えてその家族に眼を細めた。

「それにしても、二代介象、思っていたより迅速に治めたもんだ」

 王子喬は、満足げな微笑を浮かせながら、清雅な風情で歩いて往った。

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